《ダンジョン・ザ・チョイス》10.魔神・四本腕

「ボスの名前はね、魔神・四本腕って言うの。二本の腕で剣を振り、二本の腕で魔法を放ってくるんだよ」

お金を払ったら、妖が説明してくれる。

○より詳しい報を聞けます。一人一回、どれか一つしか聞くことが出來ません。

★弱點屬 ★危険攻撃 ★有効武

眼鏡が聞いたのが弱點屬だから、有効武は……持ってる武の種類は多く無いし、グレートソードの攻撃能力は鉄系武よりも數段高いから聞かなくても良いか。

危険攻撃を選択する。

「ボスの危険攻撃は、剣を差してから放つクロススラッシャー。広範囲に飛ぶ斬撃を放ってくるから、理攻撃で早めに腕を破壊する事をお薦めするよ。破壊に有効な武は、有効武から知る事が出來るよ」

ここに三人居れば、全ての報を聞けたんだ。

「あんまし役に立たない報だったわね。どう、私とパーティー組んだ方が得でしょ?」

「君は槍の男から逃げたいだけだろう?」

プライドと願の狹間で、偉そうにパーティーを組もうとしている眼鏡

「ウッサいわね」

「ハァー……パーティーは組んでも良いけど、自分のは自分で守れよ」

「私が火魔法で攻撃して、貴方が私を守るのよ! 分かるでしょ、それくらい!」

母親と同じ匂いがする。嫌いだはー。

「火屬で攻撃する手段なら俺にもある。Lv5で偉そうにするな」

「そういうアンタはLvなんなのよ!」

「8」

「8くらいで偉そうに! ……へ、8?」

Lv8特典……最初のボスが火に弱いなら、次は別の屬が弱點になるのか?

敢えて取らないで置くのも手か。

「あ、アンタの裝備……よく見ると凄そうね」

「そういう君の武は……初期裝備か?」

「……そうよ」

手にしていたが明らかに鉄製の杖だったため、見抜くことが出來た。

紫のマントをに付けては居るけれど。

「パーティーは組むよ。ただし、ボス戦が終わるまでな」

「私も、その方が助かるわ」

「じゃあ、これを使って」

チョイスプレートから取り出した、”炎のステッキ”を差し出す。

「……良いの?」

「どうせ俺には使えないし、勝率は上がった方が良いだろう?」

死なれるのも嫌だし、Lv8特典をまだ使いたくない。

「あ、ありがとう……」

さっさと裝備するユ……ユ…………名前忘れた。

「なら、パーティーを組みましょう」

チョイスプレートを作し、俺の方に流してくる眼鏡

○ユリカ様がパーティーを申し込んで來ました。パーティーを組みますか?

「これ、俺から切ることは出來るのか?」

「出來るわよ。手にったは基本的にパーティーリーダーが所有することになるけれど、今回は貴方がリーダーで良いわ。ステッキも貰っているし」

意外と気前は良いらしい。

「パーティーリーダーの権力、強いな」

「所持金は分割されずに手にるみたいだから、パーティーを組むメリットもあるわ」

ゴブリンを三人パーティーの狀態で倒した場合、全員に1Gずつ手にるって事か。

「パーティーリーダーは、自分ではパーティーメンバーを追い出せないっていうデメリットもあるけれど」

「おい」

「自分からパーティーを抜けるのは問題無いわよ。どうせ、私達は二人だけなんだし」

パーティーリーダーの狀態でパーティーに居座ろうとしなければ良いわけか。

○パーティーが立しました。パーティーリーダーを選んでください。

俺と彼の名前が表示されたため、俺は自分の名前を選ぶ。

同じ表示が向こうにも出たようで、俺の名前を選択してくれた。

誰かに異議があれば、リーダーにはなれない仕組みか。

○パーティーリーダーになりました。

「関係無いけれど、パーティーは三人までしか組めないからね」

「ああ……ありがとう」

ありがとうって言うの、なんか嫌だな。

「早く行きましょう」

眼鏡が巨大な扉にれると、扉が開いていく。

――で、すぐに止まった。

「ちょっとしか開かないんだ」

「まあ、私達が通るには充分過ぎるくらいよ」

確かに、全ではちょっとでも、橫幅五メートルくらいはあるしな。

扉の向こうは暗くて、よく見えない。

眼鏡はさっさと扉の中にる。

「なにしているの、早く」

「はいはい」

槍の男から逃げるので頭がいっぱいか。

俺がボス部屋り、扉が閉まり始めた時だった。

「見付けたぜ、巨~!」

背後から男の聲。

髪を後方で一纏めにした男が、狂気の笑みを浮かべていた!!

マントに槍……アイツが人殺しの槍使いか。

「あははははははははははは!! どこ行く気だよ、~~ーーーー!!」

「――――いやーーーーーーーーーッ!!!」

眼鏡が悲鳴を上げる。

――槍男が突撃してきた! しかも速い!!

扉が閉まるよりも早く、男が到達してしまう!?

「くそ、通れねー!!」

見えない壁に阻まれ、男が慌てていた。

「ボス部屋に他のパーティーが居るときは、挑戦出來ないよー」

「うるせー!!」

ボスの案の頭が槍によって貫かれ、が弾けて……元に戻っていく。

やっぱり、NPCのような存在だったか。

「クソッタレが。おい、そこの兄ちゃん。そのの巨もケツも、アッチのも俺のもんだ。手~出すんじゃねぇぞ」

「興味ない」

下卑た男だ。

「よく見たら、良い裝備してんじゃん! 決めた。アンタは殺して、裝備とスキルと経験値も戴く! その後はテメーのでたっぷり楽しませてもらうからな、巨!! 待ってろよ、すぐに追い付くからな~!」

扉が完全に閉まるその瞬間まで、男は下卑た言葉を連呼し続けていた。

だが、一つ収獲があったな。

人を殺せば、経験値、スキル、裝備を奪うことが可能らしい。

「一人を選んで良かった。ん?」

扉が閉じると完全な暗闇になってしまったが、すぐに燈りが點いた。

薄暗くてよく見えないが――

「居る」

グレートオーガと同等か、それ以上に巨大な人型の敵。

「アレが、魔神・四本腕」

ではなく、リビングアーマーのようなく鎧のように見える。

青黒く複雑な意匠の鎧が、組んでいた四本の腕を広げ、下段の両手が、出現した巨大な灣刀を摑む。

から下は無く、宙に二、三メートルくらいの高さで浮いていた。

『ボォォォォォーーー』

部から淡い青のを発し、こちらに接近してくる。

「先制攻撃を仕掛けてくれ!!」

「……へ?」

眼鏡は、すっかり怯えて座り込んでいた。

ボスにじゃない……あの男に怯えてしまっているんだ。

「良いか、お前は自分のを守れ。俺がアイツを倒すまで、自分を守り続けるんだ。出來るな?」

肩を摑んで、しっかりと言い聞かせる。

「わ、わがっだ……」

震えたまま、彼は立ち上がった。

「全力で終わらせる!」

”グレートソード”を手に、四本腕に向かって駆ける!

上段の二本の腕が輝き、青い炎弾を撃ってきた!

腳に瞬間的に力を込め、炎の弾を避ける!

「冷たい?」

躱した瞬間、ヒヤッとした。

――炎が著弾した場所が凍り付いている!?

氷だから炎に弱いって事か。

近付くと、剣による攻撃を放ってきた。

“壁歩き”を一瞬だけ発し、腳の裏が地面に吸い付いたのを利用して、地面を蹴る力を上げる!

灣刀の攻撃は外れ、その隙に一直線に接近!

「ハイパワースラッシュ!!」

が浮いている四本腕の真下から、大剣による斬撃を放つ!

『ボオオオオオォォォォォ!!』

「あれ?」

部分がほとんど壊れた!?

剣を差するように構え、俺を狙う四本腕。

――危険攻撃、もう放ってくるの!?

回避している余裕は無い!

『ボオオオオォォォ!!』

「ハイパワーブレイク!」

クロススラッシャーに対して、大剣で応じる!

バツ字の斬撃を衝撃で吹き飛ばし、そのまま四本腕が上空に押された。

――が、さっきの衝撃でビリビリ震えている。

「フレイムバレット!!」

眼鏡の魔法の散弾が、四本腕に次々と直撃していく。

何度も放たれる激しい魔法の數々。

「MPが足りない! なんとかして!!」

“壁歩き”で四本腕よりも高く壁を登り――跳んだ!

「ハイパワーブレイド!!」

タグが眼鏡に向いたのか、気付かれずに頭上から攻撃出來た。

――四本腕の、より上が吹き飛んだ。

『ボオオオオオオオッッ!!!』

狂ったように暴れ出した!?

「これで終われ! 火魔法、フレイムカノン!!」

四本腕のに炎弾が直撃し、魔神が沈黙。になって消えていく。

○おめでとうございます。魔神・四本腕の討伐に功しました。

「あれ? 本當に終わったのか?」

最初のボスだとしても、弱すぎるんじゃ……。

取り敢えず、呼吸を荒げている眼鏡に駆け寄る。

「大丈夫か?」

「そっちこそ、死んだかと思ったわよ」

それで援護してくれたのか?

さっきまでと違い、大分余裕を取り戻したらしい。

「あ、Lvが上がった。サブ職業の裝備可能數が三つ? 意味無いじゃない」

俺と違って、彼はサブ職業を二つしか持って無いのか。

俺の場合は、一人で苦しむを選んだ時に一つ手にれていたからな。

「あの……助かった、ありがとう」

「こっちこそ、ありがとう!」

をニィーっとさせて笑う…………名前が出てこない。

○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。

★四本腕の大灣刀 ★氷炎魔法のスキルカード

★二刀流使いのスキルカード ★四本腕の石鎧

選ぶなら、大灣刀か二刀流のスキルカードか。

「なに、まだ選んでんの?」

眼鏡はさっさと選んだらしい。

まあ、この容だと、彼には一つしか選択肢が無いようなものだからな。

やっぱり、このとは絶対に合わない!

予備武にデカいのじゃ困るし、二刀流使いを選んで置くか。

○これより、第ニステージの始まりの村に転移します。

「ん?」

そんな文章が表示された數秒後……に包まれ、視界を覆った。

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