「NPCじゃない……彼達は本當に…………生きている」

俺は……本の人間を買おうとしていたのか!!

「當たり前でしょう」

――誰かのその言葉が、周りの喧騒を押しのけて、よく聞こえた。

他の獣人には聞こえていないかのように、皆俺に自分を売り込んだり、助けを求めてくるばかり。

――落ち著け。人のを汲み取り過ぎれば、俺が潰れる!!

俺の目的は、このゲームを出すること。

そのためには、奴隷を購しなければならない。

誰にする？

選ぶ條件……俺が求める人材。

明確な基準が思い浮かばない。

喧騒の中を、もう一度見渡す。

庇護を掻き立てるような可らしい子。

をそそるようなっぽい子。

びへつらう事を恥とも思わない子。

泣きながら救いを求める子。

見窄らしい服を著た、んな獣人のの子達。

「…………あの子だ」

多くの獣人が牢の格子に縋り付いて自分を売り込んでくるなか、一人だけ奧で明後日の方向を見ているの子がいた。

誰よりも全土だらけで、小汚くしている長い黒髪のの子。

さっきの諦観の込められた聲と結びつく人間が、彼以外に居なかった。

「おばあさん、彼をくれ」

自分の言葉に気持ち悪さをじながらも、この出會いに運命をじてしまっている俺がいる。

「わ、私にしなよ！　ねー、お願いよ!!」

彼達のこの必死さ。さっき男の獣人が言っていた言葉を加味するに、売れ殘りは定期的に処・分・さ・れ・る・のだろう。

彼達を全員解放出來るだけの金はなく、このゲームのようなルールに縛られた世界では、俺の反逆など意味をさないと想像出來る。

奴隷から解放したところで、面倒など見られない。

「本當にその子で良いのかい？」

「……ああ」

○奴隷、トゥスカを購するために、10000Ｇ払いますか？

チョイスプレートの文章に、罪悪を叩き付けられる！

表示された寫真の中の土だらけの顔を確認し、俺は震える手でYESを押した。

「まいど」

――牢屋の中が輝き、彼が消えた!?

「綺麗にして隣の服屋に連れて行くから、服を選んでやりな」

「そ、そうか」

心臓が止まるかと思った。

「死ね！　クソやろー！」

「人殺し!!」

「わ、私も買って！　お願い!!」

吐き気をじながら、俺は奴隷商館を後にする。

彼達の罵聲が、むしろ救いだった。

★

隣の服屋を訪れ、正面奧にあるカウンターへ向かう。

「コセ様ですね。奧で奴隷を小綺麗にさせておりますので、々お待ちを」

太っちょのおばさんが、そう言ってきた。

「はい、宜しくお願いします」

今のうちに服を見て回る。

下著とか、ローブも売ってるんだ。

裝備出來そうなから裝備扱いにならなそうなまで、々置いてある。

まさしく、ファンタジー世界の服屋だな。

「お待たせしました、コセ様」

さっきのおばさんが、聲を掛けてきた。

カウンターに近付くと……牢の中に居た子と同一人とは思えないくらい綺麗な子が佇んでい……た。

○初めての奴隷購ですので、詳しく説明がされます。よく覚えておいてください。

「では、説明させて戴きますね。奴隷は主と一心同。主が死ねば奴隷も死にます。ただ、奴隷が死んでも主が死ぬわけではありません」

おばさんの説明は続く。

「彼達は我々NPCと違い、食べなければ生きていけませんし、病気になることもありますので、健康管理には気をつけてください」

やっぱり、生きている人間なんだ。

「彼達は売り戻す事も可能です。その場合、買い値の五割が払い戻されます。ただし、売る場合は奴隷商館に直接連れて行ってください」

本當に、扱いなんだな。

「奴隷とは強制的にパーティーを組んだ狀態となり、パーティーリーダーは貴方様となります。獲得資金も主である貴方様のとなりますが、奴隷に持たせることも可能です」

獲得資金が二倍に増えるっていうメリットがあるのか。

つまり、ゴブリン一で１Ｇだったのが、２Ｇになるんだな。

普通のパーティーと違うのは、奴隷分のお金も俺のになるって所か。

「奴隷は奴隷から解放することも可能ですが、第二ステージをクリアするには奴隷が必要ですので、第三ステージにるまでは解放しない方が良いでしょう」

妙に奴隷を使わせようとしてくるな。

「奴隷は一定以上離れると、離れてから十二時間後に主の元に強制転送されます。ダンジョンでは、それが起きないケースも存在しますが」

奴隷の逃亡阻止か。ダンジョンって言うのは、ボス部屋のと外に居る場合の事かな？

「最後に、奴隷は主がどう扱おうと自由ですので、お忘れなく」

最後の最後でお腹が痛くなった。

腸へのストレスが半端ない！

「では、奴隷の服をお選びください。一割引きにいたしますので」

「ああ、はい……」

これで、人を買う手続きが全て終わったのか。

「へと……俺はコセだ」

あれ？　いつの間に一人稱が、僕から俺になっていたんだろう？

「……トゥスカです、ご主人様」

トゥスカが冷淡な目で俺を見ていた。

聲が凄く綺麗で、長くしなやかな手腳。

容姿とかよく見えてなかったけれど、こうして見ると凄い人だ。

元には紫の紋様がある。とげの生えた首を模しているようだ。

奴隷の印なんだろうな。

「……服、好きなを選んでくれ」

値段はその都度相談しよう。

「主が選ぶべきでは？」

「なんで？」

「奴隷の用途に合わせて、主が選ぶかと」

「用途…………」

――ちょっと、いけないことを想像してしまった！

奴隷を買ったという事への罪悪と邪よこしまなが混ざり、変な気分に。

「あーー、ここがダンジョンだって言うのは知ってる？」

「はい、そう聞いています」

聞いているって事は、ダンジョンの外からここに連れて來られたって事かな？

「俺は、ダンジョンを出することを目的に行している。だから、モンスターと戦うのを前提に服を選んでくれ……値段によっては、他にしい服があったら一緒に買うから」

「……分かりました」

俺……産まれて初めての子に何かを買ってあげようとしているのか？

「……この店で、一番高くてきやすい服をください。機敏重視で」

數秒後、トゥスカがおばさんにそう言った。

一番高いのを選ぶんだ。でも、的確な判斷だ。

奴隷であることに怖じせず、冷靜な考えで行出來る人間らしい。

「條件に當てはまるのはこちらでしょうか」

おばさんがチョイスプレートを出現させ、服のリストを見せてきた。

「どれがよろしいでしょうか？」

トゥスカが俺に尋ねてくる。

リストに乗っていたのは、どれも防力など無さそうな出多めの服だった。

一番高いのは、赤を基調としたミニスカートタイプの“獣人のワンピース”。

他に、緑を基調としたハーフパンツでヘソ出しの“獣人の戦裝束”や、ほとんどのライダースーツみたいな“獣人の勝負服”があった。

三つとも、そこまで値段は変わらないな。

「……“獣人の戦裝束”で」

勝負服は論外。ワンピースは……あんまりトゥスカのイメージに合わないし、戦裝束の方が戦闘に適していそうだ。

細かい數値とか、特殊な効果が付與されているとかが分かれば、また意見も変わってくるんだけれど。

○25000Ｇ払いますか？

たけー！　１Ｇ一円と考えたら、二萬五千円だぞ！

「ほ、他には良いのか？」

「……予備の下著はしいですね」

「他の服は？」

「必要ありません」

可らしい服とかあるけれど、本當に良いのかな？

「他に必要そうなのがあったら、遠慮なく言ってくれ」

「分かりました」

トゥスカの考えが、全然読めない。

★

合計32500Ｇの支払いを済ませ、服屋を出た。

「疲れてないか？」

「別に」

素っ気ない。

でも、トゥスカが俺を観察しているのは分かる。

を選ぶときも、相談するていで俺から報を引き出そうとしていた。

どこか、試されているようにもじたな。

一度、落ち著いて話をした方が良さそうだな。

「お兄さん、奴隷を購したんだね！」

軽薄そうな男が聲を掛けてきた。

「主と奴隷の間で使用することが出來る専用スキル、“連攜裝備”と“代わり”。どちらか一つを5000Ｇで譲っちゃうよ！」

この男はNPCらしい。

「スキルの詳細は？」

○“連攜裝備”は、奴隷とその主の間でだけ、裝備を手渡しで変更できます。主専用スキルです。

「俺の武を手渡すだけで、トゥスカの裝備扱いに出來るって事か」

○“代わり”は、自分の怪我を奴隷に移すことが出來ます。主専用スキルです。

――糞悪い。

”連攜裝備”を5000Ｇで買う。

「まいどー！」

男は、笑顔でになって消えた。