《ダンジョン・ザ・チョイス》25.貓獣人のタマ
「インフェルノバレット!!」
リザードマンを、まとめて葬ってやった。
「ゼー、ゼー、ゼー……キツい」
「姐さん、ぶっ通しで戦いっぱなしじゃないっすか! 後退しましょう!」
「そうっすよ、もう充分ですよ!」
リザードマンがどんどん迫ってくる。
「アンタ達だけで撤退しなさい。私は殘るわ!」
じゃないと、アイツが認めてくれない気がする。
「パワーコントロールブーメラン!!」
る巨大なブーメランが何度も往復し、リザードマンを瞬く間に減らしていく。
「ふう……貴方、MPが盡き掛けていますね。この後どんなモンスターが出て來るのか分からないのに。私のご主人様がMP、TPを半分以下にしないようにしろと言った意味が分かっていないようですね」
アイツの隣に居たが、私の前に歩いてくる。
「そんなんじゃ、いつまで経ってもご主人様は振り向いてくださいませんよ」
――耳元でそう囁かれた。
「どういう……」
「彼を連れて撤退してください。ここは引きけます」
「ちょ、勝手に決めないでよ!」
「すみません、姐さん!」
私の奴隷の一人に擔がれる。
「後、お願いしやす!」
「お願いします!」
「か、勝手な事をするなーーッ!!」
あのトゥスカって獣人、どっかアイツに似てる!
『リザードマン百三十っ、ゴーレム六十五っ、投がっ、終わりましたっ!』
ゴブリン五百にグレイウルフが三百だから、殘り五!!
『最後に登場するのはっ、この方々でっす!』
大きな振が複數回響いた。
『グレートオーガさん二っ! リッチさん二っ、そしてっ、大本命のガルガンチュアさんでっす!』
ガルガンチュアって名前、いかにも強そうなんですけれど!!?
●●●
「まだ第一ステージなのに、グレートオーガにリッチ、しかもガルガンチュアだなんて」
遠くでが立ちのぼり、巖の巨人が形作られていく。
「最初から、勝ち目を與えないつもりだったというのか?」
神像前の防衛ラインが見えてきた。
「來るぞ、構えろ!」
「「「シールドバッシュ!!」」」
神像を囲う盾持ちの獣人達が、盾でグレイウルフ達を弾き飛ばす。
「グレイウルフは盾持ちに任せろ! 戦士はリザードマンを優先して狙え! 魔法使い、MPは半分以下にするなよ!」
リョウが皆に指示を出していた。
「サンダラスレイン!」
私の魔法で、グレイウルフとリザードマンの數を減らす。
「ジュリーさん!」
リョウが私に気付いた。
「皆をまとめてくれて助かりました」
「いえ、自分は皆さんほど強くありませんから」
Lv差の問題だと思うけれど。
戦士職の多くは、ゴブリンが使っていた屬武に持ち替えている。
「火屬魔法の使い手はMPを溫存! リッチには火屬が有効だ! グレートオーガは理防が高いから、魔法で攻撃するように!」
まだリッチもグレートオーガも見えていない。でも、早めに指示を出しておいた方が良い。
「なんだよ……あれ?」
グレイウルフとリザードマンの襲撃が沈靜化してきた時、誰かの震える聲が戦場に響いた。
決して大きくなかった聲が、戦っていた多くの者のきを止めてしまう。
立ちのぼるが消え、完した姿が人々の目に曬された。
巖の巨兵、ガルガンチュア。
高い防能力と、巨故に限られる有効攻撃のなさ。
幸いなのは、アイツはただ毆ったり、踏み潰すくらいしか攻撃手段がないと言うこと。
上位のガルガンチュアならその限りではないけれど、どちらにしろ、こんな序盤に登場させるには早過ぎるモンスターだ。
しかも、防衛地點が決まっているクエスト中に登場させるなんて!
パ・パ・と・マ・マ・の・ゲ・ー・ム・を悪用して居るだけじゃなく、アイツらはゲームバランスまで崩壊させている!!
オルフェの言っていた事は本當だった!
「リッチやグレートオーガだけでも厄介なのに……」
「手を止めるな! 死にたいのか!!」
リョウが剣を振るい、リザードマンの首を刎ねる。
「あんな巨人、ギルマスがなんとかしてくれる! 僕達はそれまで、神像を死守するんだ!」
「リョウさんがそう言うなら、そうに違いねー! やるぞ、お前らーーッ!!」
「「「おうーーーーーーッ!!」」」
リョウ、誰よりもリーダーの資質がありそう。
……本當に、彼ならばなんとかしてくれるのだろうか?
●●●
ガルガンチュアと呼ばれた巨人は、北側から進軍を始めている。
全長十五メートルって所か。
グレートオーガやリッチの戦闘能力は、正直分からない。
これまで出現したモンスター同様、なにかしらの裝備で能力を底上げしているのだろう。
出現したグレートオーガ、俺が戦ったグレートオーガよりも弱ければ良いが。
「本當にデカい……」
近付くほどに、巨故の威圧が増していく。
○戦士.Lv15になりました。武・魔法の威力をアップ出來ます。どちらを選択しますか?
あれだけモンスターを殺したのだから、もしかしたらと思ったが、本當にLvが上がっていた。
迷わず武の威力アップを選択。
「まずは挨拶だ。インフェルノカノン!」
右腳に向かって煉獄魔法をぶつける。
腳の一部の巖を弾き飛されながらも、きがまったく止まらない。
「まずは止めないと。パワーニードル!」
腳が振り下ろされた瞬間を狙い、インフェルノカノンをぶつけた場所にグレートソードを突き込む!
やはり、抵抗なく刺さった。
「ハイパワーブレイク!!」
大剣を、グレートソードが刺さった狀態で発。
俺の六畳の部屋よりも太い腳に、大きなが開く。
「よし! …………やばい!!」
勢が崩れたガルガンチュアが、俺に向かって倒れてきた!
●●●
「グアアアアアアッ!!」
グレートオーガの右拳が迫る!!
「あああああっ!!?」
避けたけれど、拳圧で吹き飛ばされてしまいます!
「ガハッ!!」
なにかの建に、背中から激突してしまう!!
ここはもう、デルタ様の神像が近い。
「私が……なんとかしないと!」
”水の槍”を構えて、右腕に銀の甲手を裝著しているオーガを見據える。
紙一重で躱そうとしちゃダメだ。
それに、時間を掛ければ私の方が不利になってしまう。
「グオオオオオッッ!」
消えたと思った瞬間、グレートオーガが私のすぐ右に!
「グオ?」
瞬足で拳の打ち下ろしを回避!
「ダークネイル!」
”水の槍”で魔爪を発し、グレートオーガの右腕を傷付けた。
「グゥアアアアアアアアア!!」
大して効いていない。ただ怒らせてしまっただけみたい。
――またグレートオーガが消える!?
瞬足じゃない。本當に気配が丸ごと消えている!!
気配は――突然真上に現れた!!
「パワーフリック!」
咄嗟に槍を掲げて、槍を発!
「ハアハア、ハアハア」
灰の大きな手が……眼前で止まっていた。
私を押し潰そうとしたのか、捕まえようとしたのかは分かたないけれど、グレートオーガの左手の平に深々と水の槍が刺さっていた。
垂直に掲げていたおかげで、槍の柄が支えになってくれたよう。
「グゥアアアアアアアアアあああああああああ!!!」
オーガが絶を上げ、また消える。
私から離れた所に現れて、”水の槍”を引き抜いて遠くへと捨て去った。
「武はまだあるけど……」
ゴブリンから手にれた武が幾つかあるけれど、チョイスプレートを作して裝備し直している暇は無い。
しでも他のことに気を回したら、一瞬で殺されてしまう。
終わったかな。
デルタ様の神像、ちゃんとお守りしたかった。
「サンダラススプランター!!」
強大な黃白の雷が、グレートオーガに撃ち降ろされた!!
「この雷……ジュリー様の?」
「タマ、あの槍を!!」
ジュリー様の聲!
「”咎槍とがやり”!!」
黒鬼との報酬で私が選んだのは、“魔爪のスキルカード”と“咎槍のスキルカード”
つまりこの咎槍は、裝備ではなくスキル。
一日二回しか使えないという兇悪な黒き槍。
ジュリー様に勧められ、使い方や発回數もジュリー様から教えて貰った。
私のご主人様はなんでも知っている!
ジュリー様が空から、私のすぐ橫に降り立つ。
「タマ、決めちゃって!」
「はい――パワージャベリン!!」
――――投槍を使って、咎槍を投げ放つ!!
「グアアアアアアアアアアアアああああああああああ!!?」
「ハアハア、ハアハア。私が……こんな凄い力を」
グレートオーガの上半が、完全に吹き飛んでいた。
「やったね、タマ」
「はい!」
ジュリー様が、神のように綺麗な私のご主人様が、私に微笑んでくれた。
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