《ダンジョン・ザ・チョイス》31.第二ステージ

「インフェルノ!」

煉獄魔法によって生み出された紫炎が、蝙蝠軍団を焼き払う。

以前ここまで來たときは、結構手こずった相手だったんだけれどな。

やっぱり、魔法の制圧力は凄い。

始まりの村からダンジョンにり、例の黒い門まで休まずに進んできた。

「ここまで安全エリアが無いの……忘れてた」

もう二十二時を過ぎている。

「この門の下、狹いですけれど安全エリアになっているようですね」

「助かった」

で照らされた場所に、トゥスカと二人で座り込む。

安全エリア、眠るには明るいんだよな。

だから、いつも布を頭に被って眠っていた。

「ご主人様、Lv14、15の特典はTPの方を選択しました」

「妥當だと思うよ」

Lv14の特典はTP・MP回復速度アップ選択。

Lv15の特典は武・魔法威力アップ選択。

トゥスカは戦士職であり、魔法による強力な攻撃手段は無い。

そのため、TPを優先した選択は當然だった。

「そう言えば、Lv16の屬付與スキル選択……どうするか」

あの一つ目を倒した事で、またLvが上がっていた。

Lv8でも同じ選択肢が出たけれど、未だに選択していないんだよな。

八の倍數で同じ選択肢が出るなら、24の時にもまた選べるか?

「二つ選べるなら、取り敢えず一つだけでも選ぶか」

○武への屬付與スキルを一つ修得出來ます。

★火屬付與 ★氷屬付與 ★雷屬付與

★水屬付與 ★風屬付與

気分で“雷屬付與”を選択した。

「どうぞ、ご主人様」

トゥスカが作り置きしておいた料理が並べられる。

味しそうだ!」

さすが料理スキル持ち。

「「戴きます!」」

俺は箸で、トゥスカはスプーンで食べる。

「どうした?」

「い、いえ……わ、私も箸……使ってみようかなと……」

「もしかして、遠慮してたのか?」

村には食類も売っていたが、箸はなかった。

俺のこの箸は、低級アイテムの換チケットで手にれただ。

その事はトゥスカも知っている。

チケットを使用し、俺のとは違いの箸を選び、手渡す。

「はい」

「あ、ありがとうございます♡」

箸でここまで喜ばれるとは。

「ん……む、難しい」

俺の箸の持ち方を何度も確認しては、一口サイズに切られたネイルグリズリーの炒めを摑もうとして失敗するトゥスカ。

なんか…………可い!

「んくっ! 本當に摑めない……ご主人様は天才なの?」

大袈裟にも程がある。

「ちょっと失禮」

トゥスカの背後に回って、箸を持つ右手にれる。

ただの他人だったらセクハラかな?

「持ち方は合ってるな。後は指の筋かし方か。慣れないと上手くかせないよな」

手を重ね、覚を伝える。

トゥスカなら、わざわざしつこく教える必要は無いだろう。

挾んで閉じてを何度か繰り返し、一度だけおを摑ませ、手を離す。

「ブフッ!」

「ご、ご主人様、笑わないでください!」

力加減が分からないのか、俺が手を離した瞬間プルプル震え出したのだ!

「早く食べないと、落としちゃうんじゃないか?」

「ふっ!」

プルプル震える箸先に、自分から口を近付けて食べるトゥスカ。

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」

「わ、笑わないでって言ってるじゃないですか!」

「だって、トゥスカがあまりに可くて」

一瞬で、顔を真っ赤にするトゥスカ。

俺も、し頬が熱くなってきた。

「はい、あーん」

「ふえ!? ……あ、あーん♡」

トゥスカの口に、リザードマンとグレイウルフの団子を食べさせてあげる。

「モグモグ……あ、ありがとうございます♡」

なんか、の子の口に何かをれるのって…………エロい。

べ、別に、自分の奧さんにご飯を食べさせただけだし!

自分の奧さんの口になにをれようと、夫の勝手じゃん!

そんなわけないですね。さすがになにれても良いわけではないですね! はい!

それからは無言で、変な気分の食事を終える。

生活魔法のクリアトゥースで歯を二秒で磨き、寢ようとしたところで……二人で眠るには々安全エリアが狹いことに気付いた。

「どうする?」

「こうしましょう♡」

トゥスカと一つの布にくるまり、敷いた別の布の上に座る。

「座ったまま寢るのか?」

「この方が安全ですよ」

確かに、気付いたら片腳だけ安全エリアから出てたなんて事になりかねない。

今はモンスターはまったく見當たらないけれど、どこかに潛んでいるかもしれないし。

「“近接探知”のスキルカード……使っておくか」

槍男が、背後に一瞬で移したトゥスカを見向きもせずに迎撃できたのは、このスキルのおだろう。

トゥスカが持つ索敵スキルの下位互換かもしれないと思うと、今は無くても良いかなと思っていたんだけれど。

トゥスカも知らないスキルらしいから、下位互換とは限らないが。

“近接探知のスキルカード”を使用する。

俺とトゥスカは、手を合わせて命に謝をし、眠りについた。

目を覚ました俺達は、軽い食事を済ませて門の先へと腳を踏みれた。

○強制選択。奴隷を一人生け贄に捧げると、次の選択場所までに出現するモンスターの數を十分の一に減らせます。

「なんだこりゃ?」

○生け贄を捧げますか?

考えるまでも無くNOを選択。

○後悔しませんように。

「するわけないだろう」

トゥスカを失うくらいなら、一緒に死んだ方がマシだ。

「よろしかったのですか?」

「良いに決まってる」

そんな事を聞くんじゃない。

「行くぞ」

「はい!」

「「「グオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!」」」

獣の雄びが何重にも響き渡る。

「ネイルグリズリーのです」

赤黒いが幾つも降り立ち、奧から次々とネイルグリズリーを生み出していく。

「さっさと進もうか!」

グレートソードを構え、踏み出す!

「はあああっ!」

スキル無しで、ネイルグリズリーの巨を切り裂いた。

裂腳!」

トゥスカの蹴りにより、ネイルグリズリーの一が蹴り飛ばされ、他二をまとめて散させる。

蹴ってから、裂するまでのワンクッションを利用して巻き込んだのか。

「インフェルノバレット!」

紫炎の散弾を放ち、多くのネイルグリズリーの手腳を吹き飛ばす。

數を相手にするなら都合が良いが、絶命させるにはちょっと威力が足りない。

「ご主人様、お先に!」

「おい!」

”跳躍”スキルを生かし、さっさと進んでしまうトゥスカ。

本人の希もあって、トゥスカに優先的に敏捷アップの裝備を渡してたからなー。

「って、狙いが俺に集中するじゃないか」

いや、先に進んだトゥスカの方が危ないのでは?

「クソ! トゥスカめ!」

「グオオオオオオォォォォォ!!」

ネイルグリズリーの背後からの腕の振り降ろしを、紙一重で避ける。

昨日までよりも、覚が鋭くなっている?

「“近接探知”のおかげか」

思っていたよりも、俺に合ったスキルかもしれない。

別のネイルグリズリーの突進を、を捻りながらの跳びあがりで避け、同時にグレートソードを振るう。

綺麗に、ネイルグリズリーのが真っ二つに裂けた。

「凄ー、アニメみたいなきが出來た……今更か?」

これまでも、壁を駆け上がったりしてたな。

余計なことに意識を割けるくらい、一人の時よりも気持ちに余裕があるって事か。

無駄なきは極力避け、回避と同時にネイルグリズリーを一撃で斬り倒し続ける!

「全部を相手にしてられるか!」

今度はダンジョンの奧へと続く道を駆けながら、最短ルートを見定め、斬り進む!

「大丈夫ですか? パワーブーメラン!」

「ゼエゼエ、ゼエゼエ、ちょっとキツい」

ある程度進むと、トゥスカがネイルグリズリーの數を減らしながら待ってくれていた。

戦になって互いを見失う方が怖いと思ったんですけれど、ご主人様に負擔が行っちゃいましたね」

「俺に、トゥスカくらいの軽さがあれば良いんだろうけれどな」

裝備だけの差じゃない。

トゥスカの、獣人としての超人的なバネのおかげもあるだろう。

「でも、“壁歩き”を使わなかったのはなんでですか? てっきり、天井に張り付いて魔法による殲滅を行うだとばかり」

「…………その手があったか」

言ってしかった。言う暇無かったろうけれど。

グレートソードを背負う。

「キャ!?」

戻ってきたブーメランをトゥスカが摑み取った瞬間、俺はトゥスカをお姫様抱っこした!

……ちょっと恥ずかしい。

「ご、ご主人様!?」

「て、天井を歩けば良いんだろう!」

また赤黒いが発生し、ネイルグリズリーが生み出されていく。

「ちゃんと摑まってろ!」

「はい♡」

ブーメランをチョイスプレートにしまい、首に腕をしっかりと回すトゥスカ。

奧さんを落とさないよう気を遣いながら、天井を歩いて第二ステージの奧へと向かう。

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