《ダンジョン・ザ・チョイス》33.メシュの特殊イベント

「罠解除」

巨大な剣が左右から飛び出し、上から下へと斬り伏せ、となって消える。

「また罠か」

「け、結構えげつないのですね」

この程度で?

「お、広い所に出たな」

罠を解除しながら狹い道をしばらく進み、段差がやたら多い場所に出た。

る石が壁に取り付けられており、かなり遠くまで見渡せる。

「人の手によるもの……なのか?」

これまでと違い、人工的に取り付けられたじがする。

「ご主人様、潛んでます」

”ビッグブーメラン”を、大きな音を立てるように置いたトゥスカが耳打ちしてきた。

俺も習い、グレートソードで石の地面を何度も叩く。

「數は?」

「十以上」

「俺は右」

「私は左で」

同時に左右へ。

石の段差の影に回り込むと、顔を隠した盜賊風の男が居た。

NPCなのか、プレーヤーなのか。

最初の挙は――防や回避ではなく首を狙った短剣による攻撃。

NPCにせよプレーヤーにせよ、コイツらが殺されても文句を言えない輩だと判斷できる。

首を捻って、”グレートオーガの短剣”でを切り裂く。

まず一人。

目の前から一人、上からも一人!

前から、巨大な針を持った敵が迫る!

「”拒絶領域”」

飛び降りてきた盜賊含め、まとめて吹き飛ばす。

突発クエスト・モンスタースタンピードの報酬で得た、あの一つ目も使っていた能力。

「見た目が同じ?」

襲ってきた奴等の背の高さや筋の付き方が、あまりにも似すぎている。というより同じに見える。

「てことはNPCか――インフェルノカノン!」

上から飛び降りてきた方を燃やす。

再び前から駆けてくる盜賊。

痛がっている様子が無いな。

「”魔炎”」

紫炎の蛇を呼び出し、盜賊を迎撃させる。

”グレートソード”でを突き刺し、最期の一人もに変えた。

「ベクトルコントロール」

から広い方に戻ると、”ビッグブーメラン”が三人の盜賊を打ち據え、に変えた。

その盜賊達も、まったく同じ容姿。

トゥスカが無防備な姿勢になったため、敵はもう居ないと判斷できる。

”グレートソード”を背負い、トゥスカの傍へ。

「トゥスカ、コイツらは?」

「私にも分かりません」

獲得アイテムを確認すれば、なにか分かるか?

○“バンディットのスキルカード”を手しました。

「人間みたいな見た目だが、モンスターらしい」

バンディットって事は、手にるのは盜かな?

サブ職業に余裕が無くなったら、スキルカードを使用して盜を修得するのもありか。

そうすれば、サブ職業の盜賊を外せる。

ただ、今はスキル數が多い。

Lv12になったとき二十もスキルを保有できるのかと思ったけれど、現在、あまりスキル數に余裕が無い。

でも、盜スキルは常に使えるようにしておいた方が良さそうだし、このスキルカードが手にったのはありがたいかもしれない。

「奧に進んでみるか」

暫く歩くと段々狹くなってきた上、り組んできた。

「ん?」

石壁の天井を持つ、高さが低い檻が見えてきた。

「だ、誰ですか!?」

檻の中には、可らしい

「NPCだな」

作り特有の無機質というか、違和

「この先には盜賊の頭領が居ます! 危ないですよ!」

忠告してくれる青髪の

「ここから出たいか?」

「”鍵開け”が使えないと、ここからは出られません」

“盜”があるから出すことは出來るけれど、この子を檻から出した場合どうなるのだろう?

「トゥスカ。一応、離れて警戒しておいてくれ」

「分かりました」

実は盜賊の一味だったって事もあり得るからな。

「鍵開け」

ガチャリと音が鳴り、檻の扉が開く。

「あ、ありがとうございます!」

らしいが、涙を溜めながらお禮を言う。

○この子を奴隷商に売り払って、100000Gを手にれますか?

なんだ……この選択は。

俺はNOを選択。

○この子を仲間に加えますか?

「NPCを仲間に?」

だが、俺はNOを選択する。

○この子を攫われた場所に送りますか?

「隨分しつこいな」

そもそも、どこまで送れば良いんだ?

「……はあー」

YESを選択する。

○特殊イベント発生。NPCのメシュちゃんがパーティーに強制加しました。

「は?」

なんで?

○盜賊の頭領を倒すまで、メシュちゃんはパーティーに殘ります。

○特殊クエスト:メシュちゃんをお家に帰そうの功條件は、メシュちゃんを殺させないように盜賊の頭領を倒すことです。

「第二ステージが終わるまでじゃないだけマシか」

「この子もNPCという奴ですよね?」

「そうだな」

取り敢えず、実は盜賊でしたってオチは無さそうだ。

「……えー」

チョイスプレートで確認すると、メシュは魔法使い.Lv1。

スキルはゼロで、裝備変更不可。

というかなにも裝備していない。

服裝は、トゥスカが最初に著ていた奴隷服に似ている。

「取り敢えず……進むか」

五歳くらいのの子を連れて、三人で歩き出……ん?

「お兄ちゃん」

右手にれてくる……名前を忘れてしまった。

「なに?」

「お手々繋ごう?」

「……ごめん、無理」

可哀想な気もするが……。

「じゃあ、お姉ちゃんと手を繋ぐ!」

「えーと……じゃあ」

トゥスカが手をばそうとする。

「ダメだ」

聲が低くなってしまった。

「……う、うわあああああああああああああああああああああああああああんん!!」

號泣してしまったよ。

ちょっと……が痛い。

「ご、ご主人様、手を繋ぐくらい――」

「初が遅れれば、その子を守るどころか俺達が死ぬぞ」

に流されてはいけない。

それに、この子はただのNPCだ。

俺は、俺とトゥスカの命を優先する!

「うわあああああああああああああああっあっあっあっあっあっ!」

「はあー」

NPCのくせに、なんでリアルな泣き方?

「生きて帰りたいなら、ちゃんと言うことを聞け。絶対に無下に扱ったりしないから」

の子の目線に合わせて、噓をえずに話す。

NPCにこんな説得、果たして意味があるのかな?

――今一瞬、この子の目が虛ろになった気が……。

「分かった! 我が儘言ってごめんなさい」

が、さっきまでよりも自然になった気がする?

「……俺が前で、トゥスカが後ろ。えっと……君が真ん中だ」

「分かりました!」

ちゃんと言うことを聞いてくれるんだな。

これまで出會ったNPCの中では、とても多様な反応をする子だ。

こうして、三人でのダンジョン攻略が始まった。

●●●

「ハアハア。ネイルグリズリー、多過ぎでしょ!」

ユリカが文句を垂れる。

晝までに準備を整え、奴隷を生贄に捧げない方を選択してここまで來た。

まさか、コセ達が昨夜のうちにダンジョンに潛っていたなんて!

「分かれ道だ。私は盜賊のアジトを選択する」

右に行くと、現段階では倒すのが厄介なモンスター達と十連戦することになる。

強力なスキルは手にるけれど、黒鬼や突発クエストの報酬ほど優れたではない。

「ま、待ちなさいよ! MPがもう……」

「それに、もう二十一時を過ぎます。安全エリアですし、今日はここで休みましょう、ジュリー様」

ユリカとタマに反対されてしまう。

確かに、前の安全エリアでもソーマを汲んですぐにこっちに來たため、丸一日きっぱなしだった。

「分かった。早めに休む分、明日は早めに出発しよう」

確立二分の一以下。

奴隷を犠牲にしないルートを通った場合に、最初の一組だけがけられるようにしてあるというオルフェの仕掛け。

お願いだから、メシュの特殊イベントには手を出さないでよ……コセ。

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