「「戴きます！」」

盜賊のアジトで、二人が夕食を食べている。

「味しい！」

トゥスカが用意したご飯を、バクバク食べる……メシュ。

不便だったので、つい名前を覚えてしまった！

「NPCなのに、ご飯食べるんだな」

トゥスカが以前、NPCは飯も食わなければ眠りもしないと言っていたはずだが。

メシュは、本當に特殊なNPCなのかもしれない。

漠然とNPCと呼んでいたけれど、メシュがデータのような存在なら、俺やトゥスカはなんなのだろう？

実はトゥスカもNPCで、俺は死んでも元の世界に戻るだけ……だったりするのだろうか？

そもそも、俺が本の巨勢こせ　雄大ゆうだいだという保証も無い。

ここが本當は仮想空間で、俺は本當はただのデータでしかなかったとしたら？

――世界の全てが、とても空虛なに変わっていってしまう!!

大きななにかに――――呑み込まれそうになる!!!

「お兄ちゃんは、一緒にご飯食べないの？」

「…………二人が……食べ終わったらな」

……メシュの言葉に、意識が引き戻された。

俺は今、見張り役をしていたんだったな。

二十一時を過ぎても安全エリアが見付からなかったため、アジトにあった狹い部屋で一晩を過ごす事にしたのだ。

ここは一番奧の部屋で、通じている通路も狹い。

迷路になっている盜賊のアジトで遭遇した敵は、人間のような見た目のバンディットだけ。

この場所なら、俺とトゥスカのどちらかだけでも敵に対処出來る。

「ご主人様、どちらが先に眠りますか？」

「トゥスカ達から寢てくれ」

眠くならないよう、いつもよりも食事を軽めに済ませた。

「一緒に寢よ、メシュちゃん」

トゥスカはNPCが嫌いだったはずなのに、メシュのことは気にったらしい。

扉の無い部屋でり口付近に座りながら、耳に意識を集中して目を瞑る。

部屋の奧で、トゥスカとメシュが同じ布の中で眠りについた。

●●●

誰がなんのために、トライアングルシステムに介したのかは分からない。

これまでとは違うパターン。

だが、今回の接対象は面白い。

先程、かの年は繋・が・り・か・け・た・。

だが、自己を失っては元も子も無い。

この世界は、考えようによっては彼を育てるのに適しているかもしれない。

観測者達に気取られぬよう、見定めねばならないが。

だけれど、この十數年で彼が一番可能があるのは確か。

●●●

四時間くらい経ったか？

部屋の奧から音。

「お兄ちゃん」

布の中から、メシュが出てきた。

座っていた俺の前まで、テトテト歩いてくる。

「眠れないのか？」

「寢たけど……起きちゃった」

「そうか」

……この子からじる違和、NPCだからってだけじゃないな。

「なにか用か？」

「……お兄ちゃんは、神様の存在を信じる？」

「神の定義による」

妙な質問をしてきたな。

「……どんな定義？」

「神は……人に過度な幸福を與えたりしない。主に見守っているだけだ。そして……一度として神の存在を疑わない者を、神はさない。つまり、祈れば救ってくれるなどという都合の良い神は存在しない」

こんな子供に、俺はなにを言っているんだ？

「他には？」

「神は……長しようとしない人間をさない。それは知識や能力の事ではなく、萬の本質を見抜く……」

家族どころか、誰にも言えなかった事を口にしている。

それも、こんな子供に。

「お兄ちゃんは、人間が嫌いなの？」

「……嫌いだよ」

異とかそんなもの全部関係なく、俺が唯一、本當にしているのは……トゥスカだけだ。

「もういいだろ、この話は」

神について、俺なりの見解を述べたに過ぎないが……口にしてはならない事を口にした。そんな気がする。

「へ？」

メシュの両手が俺の頬にれ、おでこをくっ付けてきた。

「私は、お兄ちゃんを尊敬するよ」

そういって、メシュはトゥスカの方へ戻っていった。

◇◇◇

『始まりの村の激闘も、好評ですねー！』

特に、宿の中のア・レ・が・大盛り上がり！

コセ様には、是非ハーレムを作ってもらいたい所です。

まあ、さすがに本番シーンはカットしましたけれど！

『やり過ぎかとも思いましたが、ガルガンチュアにあ・の・・を・投・・し・て・良・か・っ・た・！』

パラサイトコアにの殘滓を刻んだ特別。

おかげで、良い味を出してくれた!!

……九十パーセント、クエストは失敗すると思っていたんですけれどね～。

アレには、有象無象を振るいに掛ける意味合いもあった。

『それにしてもオルフェめ、自分の擔當ステージで不合を発生させるとは』

コセ様が盜賊のアジトにった辺りから、映像も音聲もってこない！

『そう言えば、あのジュリーとかいう小娘はオルフェが參加させているでしたね』

私が擔當じゃないから、彼を直接視る事は出來ない。

だが、突発クエストの時の小娘の言はあまりにも不可解。

まるで、以前にもパラサイトコアモンスターと戦った事があるかのような口振り。

『オルフェ……まさか本當に、教義に背くつもりではありませんよね～』

まあ良い。もうし様子を見させて貰いましょうか。

告発なんて面倒ですしね～。

●●●

○この子を奴隷商に売り払って100000Ｇを手にれますか？

私はNOを選択。

○この子を仲間に加えますか？

私は、もう一度NOを選択する。

○この子を見捨てますか？

「へ？」

おかしい！　オルフェの報では、三つ目の選択で○この子を攫われた場所に送りますか？と出るはず！

「……くっ！」

まさか、既にコセ達が！

私はもう一度NOを選択。

○この子を奴隷商に売り払って100000Ｇを手にれますか？

ループした！

この子は本來、これと言った役目のないただのモブキャラ。

「ジュリー？」

「ジュリー様、顔が悪いですよ？」

ユリカとタマが心配そうに私を見ている。

「……大丈夫よ」

あの選択を選べるのは、最初の一人だけ。

間違いなく、コセ達に先を越された!!

……あの二人の事だ。おそらく他のプレーヤーとは接しない方を選んだだろう。

「だとすると、あの二人に會うにはボス部屋前で待ち伏せするしかない」

私はYESを選択し、メシュを奴隷に売り払った。

「酷い！　酷いよ！」

空間にが開き、下卑た男がに手をばす。

「まいど」

「いやあああああああああ!!　助けて！　助けてよーーっ!!」

メシュはの中に引っ張られて消えた。

「ちょ、ジュリー！」

「彼はNPCよ」

騒ぎ出すユリカを諫める。

「だからって……」

仲間に加えるを選択した場合、盜賊の頭領戦で裏切られるイベントが起きる。

見捨てるの場合、頭領戦の時にして來るイベントが。

つまり最初の、奴隷商に売り払うのが損の無い唯一の選択なのだ。

あくまで、オルフェに聞いた限りの話しだけれど。

見られている現狀では、この事を二人に伝えるわけにはいかない。

「急いで攻略を進めるよ」

こうなったら、コセ達の完・全・な・形・で・の・特・殊・イ・ベ・ン・ト・ク・リ・ア・を・期・待・す・る・し・か・な・い・。

その後は……。