「”魔力砲”！」

轟音と大きな揺れにより、俺は目を覚ました。

頭がグワングワン回るのを堪え、すぐに起き上がって”グレートオーガの短剣”の柄に手をばす。

「バンディットが押し寄せてきたため、対処しました」

トゥスカの落ち著いた聲のおかげで、冷靜に意識が覚醒していく。

「俺は……どれくらい寢てた？」

「見張りを代してから三時間ですね」

道理で、眠気が取れないわけだ。

水筒を実化。一口飲んだ後、眠気を飛ばすために顔を濡らす。

メシュは、部屋の隅っこでをこまらせていた。

「新手のバンディットが迫ってきました」

「三分、頼む」

「お任せを」

グレイウルフのと、パンをよく噛んで軽い朝食を済ませる。

「代だ、トゥスカ」

「ありがとうございます」

トゥスカの代わりに、通路に出た。

途切れることなく迫ってくるな。

指から大地の盾を出現させ、通路を塞ぐ。

それだけで突破出來なくなるバンディット達。

「ふああ～～～あ」

大きな欠が出た。

「はい、早く食べちゃおうね」

「うん！」

トゥスカとメシュが、二人だけで食事を始める。

「父は辛いよ……誰が父だ」

どうやら、まだ寢ぼけて居るらしい。

「トゥスカの”盾使い”、借りるぞ」

「どうぞ」

トゥスカのサブ職業である”盾使い”を、俺の”針使い”を外して裝著する。

「シールドバッシュ」

盾に攻撃していたバンディットを吹き飛ばすと、背後のバンディット達を巻き込んで転倒した。

「インフェルノカノン」

紫炎の魔弾により、バンディット達を焼卻。

だが、新手のバンディットが次々と通路に流れ込んで來る。

「いったいなんなんだ？」

◇◇◇

まずい！　まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい！

私が便宜を図れるのは、擔當している第二ステージと第三ステージの街だけ。

一応、他のステージも幾つか擔當しているけれど、新參の私がもっとも介しやすいのが第二ステージ。

「こうなったら、バンディットをぶつけて足止めし、ジュリー達とボス部屋前で接させる」

問題は、アルバートのお気にりであるコセという男が、完・全・な・形・で・特・殊・イ・ベ・ン・ト・を・達・・出・來・る・の・か・だ・。

『……計畫が功したとしても……本當の目的を達出來る可能はとても低いけれど』

●●●

「準備出來ました」

「出來た！」

二人が軽い食事を終え、戦闘準備を整えた。

メシュは、ガッツポーズしているだけだけれど。

「トゥスカ、魔力砲を頼む」

突発クエストで手にれた、トゥスカの新しいスキル。

「魔力砲！」

一つ目が使用していたピンク味の赤い閃が、通路にり込んでいたバンディットをまとめて葬り去る。

「ＭＰの殘りは？」

「ソーマを飲んだので、三分の一まで回復しています」

魔力砲は、総ＭＰの半分を消費して放つ強力なスキル。

第二ステージにってすぐに、何度か試していた。

「行くぞ！」

俺が先頭で、通路を駆ける！

通路の終わりが近づくと、またバンディットがり込んできた。

コイツら倒しても、大して旨味がねーんだよなー。

數が多いせいでＭＰ・ＴＰを消費しっぱなしだから、正直油斷出來ない。

「シールドバッシュ！」

バンディットを吹き飛ばし、広い場所に出る。

ここはんな場所に通じているため、出り口が十七カ所存在する。

まだ探索していないのは四カ所。

バンディットに囲まれる前に、そのうちの一つに向かう。

「魔炎！」

紫炎の蛇をり、近づいてきたバンディットを弾き飛ばす。

”魔炎”と”拒絶領域”は、一日三度までしか使用出來ない。

ＴＰ・ＭＰを消費せずに使用出來る分、回數制限が設けられているのだろう。

”瞬足”や”壁歩き”なんかには、そう言った制限は無いんだけれどな。

○盜賊の力で罠を知しました。

「罠解除」

通路にるなり、罠を発見。

數メートル先で、炎が上下左右から十秒にもわたって吹き上がった。

「ご主人様！　奴等、まだ追ってきます！」

狹い通路に、またバンディットがり込んできた。

「本當になんなんだ!?」

昨日までは、ほとんど遭遇しなかったくらいなのに！

「こっちはデカいのが來た」

前から、バンディットとは異なる巨漢の男が金屬の塊を手に歩いてくる。

「インフェルノカノン！」

紫炎の弾を放つ！

「なに!?」

棒の先が裂け、紫炎の弾を呑み込んだ!?

「魔法が通じないのか？」

「裂腳！」

背後から、トゥスカの応戦している気配。

「時間は掛けられない！　ハイパワーフリック!!」

グレートソードの剣先を水平に向け、突撃しての突き技！

「ああああああああああ!!」

呆気なく倒される巨漢の男。

「進むぞ、トゥスカ！」

「はい！」

何度か罠を解除すると、行き止まりに出てしまった。

行き止まりには寶箱。

「罠は無いな」

盜賊の能力に反応が無い。

「トゥスカ、代だ！」

「ハアハア、助かります！」

まだ、バンディットが流れ込んで來ている。

本當に、いったいどうなってるんだ？

一人だったら、力盡きて間違いなく死んでたな。

昨日の探索中に発見した寶箱の中は、“水魔法のスキルカード”に“鉄の斧”、“低級の換チケット”×12や、”炎のメイス”とイマイチなだけだった。

右を選んだ方が良かったか？

「ご主人様、“鋼鉄のタワーシールド”が手にりました」

俺とトゥスカのバトルスタイルには、微妙に合わないな。

「ご主人様、”盾のスキルカード”を使用してもよろしいでしょうか？」

盾使いのサブ職業は一つしか無いが、スキルカードならば突発クエスト時に買ったが腐るほど殘っている。

「ああ、構わない」

これで、気兼ねなく盾使いのサブ職業を俺が使っていられる。

「シールドバッシュ！」

バンディットを弾き飛ばす。

會話をしながら、バンディットを倒し続けていく。

これじゃあ、いつかはＴＰとＭＰ、力も盡きてしまう！

「メシュ、まだけるか？」

「だ、大丈夫です！」

「よし、行くぞ！」

休んでいる暇が無い以上、進むしかない！

◇◇◇

どうする！　どうするどうするどうするどうするどうするどうする!!

バンディットをぶつけるの、最初は良いアイディアだと思ったけれど、むしろ危機を煽って攻略のスピードを上げてしまっているじゃない！

それに、これだと完全な形での特殊イベントのクリアの可能が無くなっちゃうかもしれない！

『クソ～ーーーーー!!　なんで上手くいかないんだーーーーー!!』

迷いながらも、バンディットの出現數など各種設定を本來の狀態に戻していく。

●●●

広間まで戻る頃には、バンディットの出現が無くなっていた。

「結局、なんだったんでしょうか？」

「一定以上の時間留まると、決まった數のバンディットを倒さないといけなくなる……とかかな？」

トゥスカの疑問に、俺も自信のある答えは見いだせない。

「でも助かった」

メシュを守りながらだから、神経のすり減りが本當に激しかった。

ＴＰ・ＭＰと力の回復を待ち、俺達は探索を再開する。