「そういえばテルさん、どうしてそのような格好をされているのですか？」

「ん？何か変か？」

「えと…いや、似合っています。そうではなくて、なぜあれだけの魔法を使えるのに黒のローブを著ていらっしゃるのですか？」

「？ごめん、俺し常識に疎くて教えてしいんだけど、黒のローブだと何かあるの？」

「そうなんですか？わかりました。私たちの國【メーアス王國】と同盟関係にある隣國の【リアリス王國】【ライリア皇國】【レーヴァン騎士王國】の４つの國で魔法師の実力を示す基準としてローブのを決めました。上から白＞青＞赤＞紫＞黃＞灰＞黒の順になっており、白は主に宮廷魔導師、青や赤は貴族の方が多いです。中には、他國から來た方や気にったを著る方もいますが滅多にお見かけしません。ですから、テルさんの著ている黒は………」

「最下級魔法師と呼ばれ、この國では一番低い階級のだと」

「そうなります。実力を示すものなのですが、階級を表すステータスになっているのも事実です」

テルの今の格好は、迷宮の時の裝備だと過剰だとナビに言われたので、創造により魔法師風の格好になっている。と言ってもローブの下は軽裝備で普通に近接戦闘を行えるようにきやすくなっている。［無限収納］も目立つだろうと考え、背負い袋を背負っている。

（ナビ、ローブののこと教えてほしかったよ）

〈あまり気にしないと思われたので、説明を省きました〉

（そうだけど…）

なんとなく納得がいかないが、合っていることなので言い返すことができない。

「そうだったのか。まぁ、あまり気にしないからこのままでいいかな。説明ありがとう」

「いえ、ただそののローブを著ていますと、変に絡まれたりするので気をつけて下さいね」

絡まれるのか……。変にちょっかいをかけられるのは避けたいなぁ。

「前言撤回。大人しく著替えるよ」

気にしないと言ったにも関わらず、著替えることにし恥ずかしさを覚えつつも、いだローブを畳んで背負い袋にしまう。そして、暗い灰みの緑をしたローブを取り出す。

「その方がいいですよ。他にもわからないことがありましたら、々聞いてもらって構いませんよ」

「ありがとう。じゃあ…」

アリスから聞いたことをまとめると、

・この國の王都の名前【エスターテ】

・貨幣の種類と価値

        鉄貨100=銅貨1

        銅貨100=銀貨1

        銀貨100=金貨1

        金貨100=白金貨1

        白金貨100=黒金貨1

・貨幣単位はセリス

        1セリス=鉄貨1枚

・この國は大陸有數の大國で、海と森に面した特産の多い貿易が盛んな國であること

・【常闇の樹海】が近く、そこから時々出てくる強力な魔と戦うために騎士や魔法師、冒険者が多く、特に冒険者が多いことから“冒険者の國”とも呼ばれている

・なぜ【常闇の樹海】からこんなにも近い場所に王都を置いたのかは、分からない

など、いろいろなことを聞いた。

「ありがとう、助かったよ」

そう言って笑いかけると、

「テルさんは命の恩人ですし、このくらいはいつでも聞いでください！」

と、嬉しそうに満面の笑みで言われた。

その時、［探索者］に反応があった。

「2人とも魔がくるから準備して」

「わかりました」

「了解です」

返事をした後、ミッシェルが剣を抜き構え、アリスはし下がる。

しばらくすると、一匹の魔が姿を現した。

四腕大熊 LV．169

HP  13058／13058

MP    1690／1690

スキル

［怪力LV.19］［鋭爪LV.21］［噛みつきLV.10］

「ッ！テルさん！逃げましょう！あれはSランクの魔です。私たちでは勝てません」

「私が囮になるのでテルさん、お嬢様を連れて逃げてください！」

あれでSランクか。最初が深淵の迷宮だったせいか、覚が麻痺してるな。

それよりも…

「その必要はないよ」 

ヒュッ！ズバッ！

「…は？」

狀況に理解が追いつかない。目の前の魔は自分よりはるかに強い魔だ。ミッシェルが1人で対峙したら、何もできず殺されてしまうだろう。なのに、気づけばその魔は首とが離れ、息絶えていた。

「何をしたのですか！テルさん！」

「ん？エアカッターで首を切っただけだが？」

「そ…んな、中級魔法でSランクを、しかも無詠唱。…これ程とは」

普通の人が通常、中級のエアカッターを発すると、し深めの切り傷を負わせるくらいだ。間違ってもSランクの首を落とすほどの威力はない。それも無詠唱となれば、威力も落ちているはずだ。

だからこれは、テルのLVが相當高いのだということを知った瞬間だった。

「テルさん、失禮ですがLVはいったい…？」

「……聞かないでくれ」

「…わかりました」

気まずそうに目をそらすテルに、ミッシェルの頭にはまさかの考えが浮かぶ。

（勇者と同等、もしくはそれより強い？）