《たった一つの願いを葉えるために》商業ギルド2
「では、商業ギルドについて説明させていただきます」
リィナさんは、一枚の小さな薄いプレートを取り出した。
「これは商業ギルドカードといって、商業ギルドの一員として証明するもので、先ほど記していただいた名前などの必要事項がこのギルドカードに刻まれます。このギルドカードは見本ですが、後ほどテル様のギルドカードをお渡しいたします。このギルドカードのお渡しとともに、登録料として2萬セリスいただきます」
「2萬って結構高いですね」
「登録にともなって口座を開設するための手數料が含まれているので、高くなってしまうんです」
「口座の開設は必ずなんですか?」
「はい。例えば、テル様が商品をギルドに卸していただいた場合、その商品で出た利益の7割をテル様の口座に振り込むためです」
それもそうか。わざわざギルドに來てお金をけ取るなんて、めんどくさいもんな。
 
「この口座の通帳にもなりますので、け取ったギルドカードは絶対に失くさないでください。もし失くしてしまうと、50萬セリスの罰金が課せられてしまうので注意してください」
危機管理意識を強くするためとはいえ、高いな。
「ギルドカードが通帳になるんでしたら盜まれてしまったとき、勝手にお金を引き出されてしまうんじゃないですか?」
「その防止のため、ギルドカードは渡すときに本人登録をして、その所有者本人しか使えないように作られているんです」
「本人登録って魔力を流すとかですか?」
「昔はそのような方法を取っていたみたいですが、中には魔力を持たない方もいらっしゃるので一滴だけを垂らしていただき、登録するのです」
魔力って誰でも持っているものじゃないんだな。
〈はい。種族によって異なりますが、人族は魔力を持っていない方も多くいらっしゃいます〉
(そうか。魔法師という職業があるくらいだから魔力がない人もいて當たり前か。と言うか、で本人登録ってすごくないか?)
〈今は亡き文明の産、もとい魔道のおかげです〉
(そういうことか)
「では、次に商業ギルドの形態についてです。商業ギルドは、商業に関係するものすべてで構されています。例えば、漁業、鍛治、錬金、畜産業、建築など、このほかにも商売に関係する全てを商業ギルドが組織しています」
「商売にあまり関係なさそうなのもあるのですが…」
その言葉にリィナさんは苦笑いのような表を浮かべた。
「はい。鍛治は武や防などの販売、錬金はポーションなど薬品の販売といった商売に関係しているからという建前で、実際は昔、鍛治ギルド、錬金ギルド、魔師ギルドといった様々な分野に特化したギルドがたくさんありました。しかし、あるギルドが暴走しましてギルド間の対立、あまつさえ住民を巻き込んだ抗爭にまで発展しまして、ギルド本來の役目を果たすことができなくなってしまったのです。そういった経緯からいっそのこと全部まとめてしまった方がギルド間の対立は無くなると考えたのです」
「そういうことですか」
「では次に、商業區についてです。ここ王都は、大きく分けると商業區と居住區に分かれます。基本的に商業區であれば、どこに店を出していただいても構いません。ただ例外もありまして、居住區も商業區も貴族街と平民街に分かれており、王城周辺が貴族街となっております。貴族街の商業區での出店の場合は、どなたかの紹介狀が必要となります。紹介狀を持っていますでしょうか?」
「ああ、持っています」
グランさんからもらった紹介狀があったことを思い出し、ローブの中で見えないように[無限収納]から紹介狀のった封書を取り出し、渡す。
「開封させてもらいます。…ッ!あ、あの失禮ですが、テル様は貴族様なのでしょうか?」
「え?いや、違いますが」
「公爵家、それもレイルリット家の紹介狀なんて……テル様は一………いえ、商人としてこれ以上の詮索はですね」
公爵家からの紹介なんて普通はありえないよなぁ。
「普通の商人見習いですよ」
「公爵家との繋がりがある人を普通とは呼びませんよ。紹介狀は確認できました。テル様には公爵様より、ギルドが可能な限り便宜を計らせていただきます。しお待ち下さい」
リィナさんはそう言って部屋を出て行き、資料のようなものを持って戻ってきた。
「今テル様に紹介できる立地は、こちらでございます」
差し出された資料を見て、思わず苦笑いを浮かべる。
「貰いすぎって言ったんだけどな……どうしてここを?」
「公爵様からの希です」
やっぱりか。斷ってもダメなんだろうな。
「それと公爵様から“これぐらいのことはさせてくれ”とのことです」
どうやら思考を先回りされていたらしい。
資料に書かれていた立地は、平民街にある商業地區の中央付近から離れた、居住區に近く他の店がない地區だった。
確かに儲けるつもりなんてこれっぽっちもないけど、格把握しすぎじゃね。ちょっと怖っ!
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