また誰かを助けないといけないのか？大切な人を助けられなかったのに？

ふざけるなとびたくなるような怒りが溢れてくる。

アリスとミッシェルを助けたのは、この世界で生きる上での報が足りなかったからだ。

だが、今はそうではない。

俺が今まで戦って來たのは、今度こそ大切な人を守るという誓いがあったからだ。

その誓いを果たせなかった俺にはもう、誰かを救うことはできない。いや、したくない。

どうしようもないを必死に抑えていると、ミッシェルが決意をした表でこちらに近づいてきた。

「厚かましいお願いだということは重々承知です！ですが！どうか、どうか！フィーリア様を救っていただけないでしょうか！」

彼は、土下座をしながら必死に懇願をした。

その言葉に嫌だと言おうとした。

しかし、その言葉が口から出ることはなかった。

彼の必死な姿に、以前の景が思い出される。

彼の想いを聞き、その願いを手助けしたいとじたのを思い出したからだ。

そしてその時の景に、今までの思考が揺らぐ。

呆然としてるテルに、ミッシェルは続ける。

「テル様との約束を破ることになってしまいます。その罰は後でいくらでもけます。だからどうか！あの方を、フィーリア様を救っていただけないでしょうか！！」

ミッシェルの突然の行に周囲の反応は２つに分かれた。

テルを知らない人達は、なぜそいつに頼んでいるのかという困。

一方のテルを知っている人達は、まさかという驚きと期待。

だがテルは、何も反応を示さない。

いや、反応することができないでいた。

これ以上、誰かを助けることを拒否する自分と目の前で生きたいと願うを救うべきだという自分との間で揺れていた。

「私からもお願いします！どうかフィーを助けてください！！」

そこへアリスもミッシェルの橫に來て懇願して來た。

…………王を助けよう。

彼たちの願いを無下にはできない。

俺は、彼たちを立ち上がらせて告げた。

「………ああ、任せろ」

それだけ告げると、王が橫たわるベッドに近づいていく。

（ナビ、王様を鑑定してくれ）

〈よろしいのですね？〉

（…ああ）

〈こちらです〉

［神の瞳］による鑑定結果は、

鑑定結果

〔霊呪〕：霊級

遅効の呪い。呪いにかかったものを徐々に蝕んでいく。一定の頻度で全に激痛をもたらし、死に近づくほど痛みは増し、頻度も高くなる。

恐ろしい呪いだ。

頻度がどれくらいかわからないが、痛みの増大が死の実を強くさせ、より恐怖を煽る。

それに呪いのランクも霊級と、人では解呪の可能は限りなくゼロであろう。

この呪いを解呪させるには、霊級以上の魔法が必要になる。

その魔法をこの場で使えば、その後のことは想像に難くない。

アリスとミッシェルが頼んだとあってか、王に近づくことを咎められなかった。

王のベッドの側まで行き、口を開く。

「申し訳ありませんが、しベッドから離れてもらってもよろしいでしょうか？」

「あ、ああ」

特に反対もされず、皆が離れていく。全員が離れたことを確認する。

「あなたは…」

陛下たちとれ代わる様にベッドの側に立つと掠れた聲で王様が聞いてきた。

「テルと言います。今からあなたの呪いを解きますので、目を閉じてください」

「……お願い、します」

それだけ言い、王様は目を閉じた。

さて、始めるか。

魔力を高めていく。膨大の魔力が部屋を包んでいく。

「し、信じられん」

あまりの魔力に誰かが呟く。

どんどん高めていく魔力を［魔力支配］でしっかりとコントロールする。

イメージとしてはやっぱり屬の浄化だな。

「“霊の福音”」

わざと魔法名を口にし、発する。

王殿下を中心に部屋を暖かなが包んでいく。どこかから澄んだ鐘の音が聞こえてくる。

現実とは思えないしい景に誰もが言葉を失う。

時間にして數分だが數時間にもじられた。

徐々にが収まっていき、消える。

「これで大丈夫です。痛みはまだありますか？」

王様は目を開け、確認するように手をかす。

「……ありません！先ほどまであった痛みが噓みたいに消えました！」

「本當か！フィーリア！」

王様が駆け寄りながら聞いてくる。

「はい、どこも痛くありません！」

「フィーリア！よかった！！」

王妃様もそれを聞き、勢いよく王様に抱きつく。

白を著た老人が王様に近寄り診察する。おそらく鑑定スキルも持っているのだろう。

「失禮致します。………呪いが綺麗に消えている。奇跡だ、こんな事が……」

老人は涙を流しながら安心した表をしていた。

「確かテルといったな。娘を救ってくれて本當に謝する」

「いえ、お気になさらないで下さい」

「いや、後日改めて禮をさせてくれ」

「わかりました。ただ、このことはにしてください」

「……わかった。そなたのことは他言しないよう厳命しておく」

その後も部屋にいたほとんどの人に禮を言われた。

呪いが消えたとはいえ王様の力を考え、ほとんどが屋敷に帰ることになった。

アリスとミッシェル、ディレーネさんは殘るそうだ。

帰り際、カーラさんに「今度その魔法について々聞かせてくれ！」と言われたが、丁重に斷っておいた。

グランさんと馬車に乗って帰ったが、馬車の中や屋敷に戻っても魔法について聞かれることはなかった。