《たった一つの願いを葉えるために》

王城から屋敷に戻った後、遅い夕食をとり浴を済ませ自分の部屋に戻って來た。

部屋にりそのままベッドにダイブする。

しの間沈黙していたがためらいがちに問いかけた。

「………ナビ、俺は間違ってたかな?」

〈私にはわかりません。……ただ、マスターが前に進むためには必要だったとは思います〉

「前に進む、か。俺にはもう何も殘っていない。何も守ることが出來なかった」

大切な人を今度こそ守るという自分への誓いも、ずっと一緒にいるという彼との約束も。

こんな自分が許せなくて。こんな辛い思いばかりするのなら、あの時死んでおけばよかったと何度も思った。

いや、今もそれは変わらず自分が憎い。

〈だけど命を懸けてマスターが先の未來へ進むことを願った人たちがいます。マスターの幸せをんだ人がいます〉

ああ、彼は生きてしいと言われた。

神様に力を與えられた。

「まだ蟠りはある。英雄になりたいわけでもない。それでも俺の周りにいる人たちに大切な人を失う苦しみを味わってしくない。だから、俺の手で救えるのなら救おう」

〈はい……〉

◆ ◇ ◇ ◆

二日後、俺は王城に呼ばれた。

その間、自分の店でのんびりしていた。

客は1組だけ來た。冒険者なりたての新人4人組のパーティーで、たまたま店を見つけ立ち寄ったようだ。

冒険者登録を済ませたその日にクエストを注し、その準備の為に商業地區に立ち寄って店を見て回ったが、裝備品の値段が高くて買えなかったそうだ。諦めてそのままクエストに行こうとした時にこの店が目にとまりった、と聞いた。というか聞かされた。

確かに見たじ、そのままクエストに行くには々不安があるというのはじた。

というのも、そのパーティーは剣士1人、槍士1人、魔法師1人、治癒師(ヒーラー)1人パーティーなのだが、剣は刀がボロボロ、槍も手れがされておらず柄も古くなってる。魔法師とヒーラーからじられる魔力はあまり多いとは言えない。

基本的に料金設定はしてないが、あまりにも安く売るとそれはそれで問題が起きる。

どうしようか悩んだが、分割払いで武や防を売ることにした。

冒険者というのは簡単に命を落としてしまう仕事だ。通常なら分割払いなんて絶対しない。

それでも分割にしたのは、クエストに向けてしっかりと準備をする姿勢を買ったからだ。

ついでに1人一本ずつポーション、魔法師とヒーラーにはMPポーションを一本ずつサービスした。

そのパーティーが去った後は、王城に呼ばれる日まで特に何もなかった。

変わったことといえば、街中の警備が厳しくなったのと兵たちの雰囲気がかなりピリピリしてきていた。

連続行方不明事件が全く手がかりがつかめず、住民たちから不安の聲が高まってきていて焦っていると、グランさんから聞いた。

そして現在、陛下に會う為に応接室に案されているところだ。

かなり広めの応接室に案された後、しばらくすると扉が開き部屋に陛下、グランさん、カーラさん、そして王様の呪いを解いた時に部屋にいた見知らぬ男三人と數人の護衛がってきた。

「お前たちは下がって良い」

陛下はテルのテーブルを挾んだ向かいに座ると、護衛たちにそう告げた。

「しかし…」

「ならロッドを殘してあとの者は下がれ」

護衛の人たちは渋ったが、陛下が重ねて告げた言葉に従って退室した。

よく見れば、ロッドと呼ばれた護衛は研究所にカーラさんを呼びにきた騎士だった。

「さて、貴族たちへの説明やら後処理やらで禮をするのが遅くなって悪かったな」

「いえ、お気になさらず」

「ここでは私たちしかいないのでな、気楽にしていい。まずは自己紹介といこうか。もう知っておるだろうが、私はこのメーア王國の國王ルシウスだ。そしてこっちが……」

國王がさしたのは見知らぬ男の1人で、焦げた茶の短髪に口髭を蓄えた、ガタイの良い男が名乗った。

「儂はヴィルナーク公爵家當主のゼナットだ。しかし、お主のような若者があの様な魔法を使ったなど未だに信じられないな」

ゼナットはそう言ってこちらを見つめる。ただその言葉は見下しているわけではなく、純粋に驚いているというじだ。

だがその言葉に、呆れを含んだニュアンスで答えた人がいた。

「はぁ、自分の目で見たでしょうが。まぁ私も夢ではないかと思いますが。ああ、申し遅れた。私はクロイチェフ公爵家當主、ランディークだ。よろしく」

ランディークと名乗った人は、青髪に金の瞳でゼナットに比べると格で劣るが、え太っているという貴族というイメージとはかけ離れていた。

「初めまして、宰相の役を仰せつかっております、バナック・ソルダートと申します。以後、お見知り置きを」

バナックと名乗った人は、宰相というより執事のイメージがする所作で丁寧に挨拶をした。

「初めまして。テル・ウィスタリアと言います」

「うむ。後の二人については既に知っているようなのでな、話をするとしよう。改めて娘を救ってくれて謝する」

謝の言葉とともに陛下は頭を下げた。

「頭をあげて下さい。あの場でも言いましたが気にしないでください」

「いや、私は大事な娘を失うところだったのだ。謝してもしきれないくらいだ」

「私たちからも禮を言わせてもらおう。あの場でただ見ていることしかできなかった我々の代わりにフィーリア様を救ってくれて謝する」

グランの言葉に他の方々も頭を下げた。

〈傍から見たら國のトップに頭を下げさせている危ない奴ですね〉

ナビ、うるさい

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