《たった一つの願いを葉えるために》事件の調査

今回王殿下が狙われたのは、その禍ツ神の封印を解くためか。……ん?

「でもそれだとおかしくありませんか?今回王殿下にかけられた呪いは明らかに王殿下の命を奪うものでした。もし封印を解くためならば鍵を持つ王殿下を殺してしまうのは変だと思うのですが」

普通は王殿下を生贄にし、何らかの儀式を行って封印を解く、と考えられるが違うのだろうか。

「私たちもそこがわからんのだ。鍵を持つフィーリアを生け贄として攫うのではなく、殺す意味がわからない。だとしたら今回の事件は、封印を解くためではなかったんじゃないだろうか、とな」

となると、あの呪いをかけることができる人、または道があるということか?

〈いえ、それは違いますよ。マスター〉

突然の驚くが幸い周りには気づかれなかった。

(どういうこと、ナビ?)

〈王様にかけられた呪いは、悪魔によるものです〉

(どうして斷言できるんだ?)

〈人と悪魔では呪いは概念が違います。人の呪いは魔力を伴った祈りによる“呪(まじな)い”です。悪魔は瘴気から生まれる超自然的存在です。ですから、悪魔の呪いは“祟り”という意味合いになります〉

超自然的存在というのは自然界の法則を超えた、理論的に説明がつかない存在のことで悪魔がそれに該當するとのこと。

〈ただ“祟り”という意味合いではありますが、この世界ではその超自然的存在が実在しています。何らかの主による呪う行為によって立するという呪いの定義に當てはまる。つまり呪いと同じなのです〉

(うーん。人と悪魔とでは存在自違うというのはわかったけど、そうすると誰によるものかなんて判斷できないんじゃないの?)

〈判斷の仕方は簡単に言えば、人によるものは、“〇〇の呪い”。悪魔によるものは、“〇〇呪”という認識で大丈夫です〉

(え?そんなに簡単なの?)

思ったより見分け方が簡単で拍子抜けした。

〈はい。恐らく人と悪魔のあり方の違いによるものだと推察されます〉

(そんなに簡単なら誰かが気づくと思うんだが?)

〈そもそも悪魔に関する資料がありませんから気づきようがありませんよ〉

図書館で調べをしていた時悪魔に関する容はほとんどなかったな。それは悪魔に対する知識が、圧倒的に不足しているということだ。

(なるほど。ナビはどうして知っていたんだ?)

〈おバカなマスターはお忘れでしょうが、私は[叡智神]ですよ?〉

フンス!というドヤ顔をするような雰囲気が伝わってくる。

そうだった。忘れがちだが、ナビは[叡智神]なんだよな。その割には報をくれなかったりするから本気で忘れてしまう。[完全記憶]とはいったい…。

「………、……!…る!テル!」

「っ、はい」

「どうした?何度か呼びかけたが反応なかったぞ?」

どうやらだいぶナビによる考察に沒頭していたようだ。

「すいません。考え事をしていて気づきませんでした」

「それなら良い。ならば話を戻すが、他國の仕業と考えるべきだろうか」

「あれほど強力な呪いをかけることができる力を他國が持っていると考えたくはないのう」

「可能としてはかなり低いでしょうが調べないわけにはいきませんね」

「他國の仕業だとしてもやはり機がわからんな」

他國の仕業の可能もあると見ているが、機がわからないと。

今回の事件は確実に悪魔が関わっている。だけど、なぜ王様を殺そうとしたのか機がわからない。

「そういえば王様が呪いにかかったのは、いつ頃なんでしょうか?」

「ああ、言っておらんかったな。確か半年くらい前の時じゃ。その日は特に公務もなくアリスとミッシェルたちとお茶會をしておったはずだ。その時にいきなり倒れたと聞いた」

お茶會か…。特に公務もなかったとしたらいつ呪いをかけられたんだ?それに王様にどうやって呪いをかけたのかもわからない。

「そういえばフィーリア嬢が倒れた前の日、夜會をしていたな」

ヴィルナーク公がそんなことを口にする。

「夜會、ですか?」

「ああ。フィーリアの誕生日でな。貴族を呼んで夜會を開いたのだ」

呪いをかけられたとしたらその時か。

「誕生日ということは、何か贈りをされませんでしたか?」

「いくつも貰ったぞ。私たちもそこを怪しんで鑑定を頼んだが、どれも普通の贈りだった」

鑑定して何もなかったということは何もないのか?いや、隠蔽されている可能もあるか。

「すみません、その贈りを実際に見ることはできますか?」

「ああ、持って來させよう。バナック、夜會でもらった贈りを一通り持ってきてくれ」

「かしこまりました」

さて、夜會の時に呪いをかけられたとしたら、この國の貴族が関わっていることになる。人と悪魔が手を組むなんてありえるのか?

「陛下、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「何だ?」

「悪魔と共謀または崇拝している組織に心當たりはありませんか?」

その質問を聞き陛下たちの顔が険しくなる。

「………ある。禍ツ神を崇拝する組織だ。その組織は種族、別問わずかなりの規模の組織なのだ。民の殺や儀式による悪魔の召喚など犯罪行為を行っては周囲に甚大な被害をもたらす。何度か騎士団を派遣したが、ある程度の統率と個人の実力の高さ、喚び出された悪魔の力により騎士団の損害も大きい、なかなかに厄介な組織だ。どの國も、その組織には手を焼かされている」

図書館で調べていた時に出てきた悪魔側に加擔したという組織と同じと考えて良さそうだな。だが悪魔はこちらの応答に一切答えないとあったが、召喚時に契約でもしたのだろうか?

「テルはその組織が悪魔と共謀して今回の事件を起こしたと考えているのか?」

「はい。これは推測ですが、王様を殺して封印を解こうとしたのではないかと」

「しかし、そんな方法聞いたことがないぞ?」

憶測でを言うのは危険だが、時間がなさ過ぎる。

「例えばですが、子供を攫って生贄にするとか」

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