《たった一つの願いを葉えるために》見つからない手がかり

悪魔が消えたその場にされた、アミュレットを手に取る。

銀のプレートがついたそのアミュレットには、二つの名前が書かれていた。

「団長、無事だったんですか!?」

悪魔に深い傷を負わせて、結果的にガレットのアシストをした形になった騎士の二人は、悪魔が倒されたことにし呆然とするも、すぐにハッとしてガレットに駆け寄る。

「悪魔にやられたと思ったんですが…」

「ああ、咄嗟に化スキルを使ってダメージを軽減したのだ」

あの瞬間、ガレットは反的に化スキル《金剛不壊》を発した。そのおかげで、なんとか致命的な傷は避けるも、肋骨を2、3本もってかれ、一時的に気絶してしまった。

「そんなことより、錯したものたちを正気に戻すぞ」

「「了解!」」

◆ ◆ ◆ ◆

屋敷での戦闘が終了した。負傷者が多數出たが、幸い死者は1名のみであった。

負傷者の応急手當て、

テルたちは証拠品の運び出しを行なっていた。

「団長、証拠品の運び出し終わりました」

「その聲は……。そちらでも戦闘があったのですか?」

報告しにきたのが、騎士の格好して顔を隠したテルだと気づいた。テルの裝備の傷から戦闘の気配をじ、名前を言わず確認する。

「ええ、まあ。ただ、証拠品は無事ですので特に問題はありません」

どこで誰が聞いてるとも限らないためとはいえ、公爵家に賓客として招かれている方が自分の部下のように違和なく振る舞う姿に、ガレットは戸いを覚える。

「そ、そうですか。今、伝令を出していますので、後ほど公爵様とともに王城へと証拠品の運搬、侯爵の柄引き渡しをします」

「了解しました」

その後、グランたちが到著し、侯爵と証拠品を伴って王城へと向かっていった。

グラン達を見送った後、一臺の馬車と十數名の護衛を乗せた荷車が、かなりのスピード出してこちらに向かってるくるのを見つける。

「あれは……」

どこかの貴族からの橫槍かと、警戒を強めるがガレットの様子からして違うようだが、テルもガレット他數名の騎士も警戒は解かない。

それからスピードをほとんど落とすことなく、侯爵家の屋敷に馬車のままろうとしたために、正門前で停める。

「お待ちを!!この先は只今封鎖しておりますので、お通しするわけにはいきません!!トグナー子爵とお見けするがどのようなご用件でこの場に?」

ガレットが停車した馬車に聲をかけ、馬車に乗る人がどう出るか見極めようとする。

その直後ーー。

バンッ!!

馬車の扉が勢いよく開かれる。

中から二十代後半から三十代くらいのが飛び出してくる。

「奧様!?」

の制止も聞かず、降りてきた奧様と呼ばれたはガレットに摑みかからんばかりに詰め寄る。

「息子は!?息子はどこ!?ここにいるかもしれないの!だから通して頂戴!!」

どうやら息子が拐にあった貴族の1人のようだ。

そのをよく見ると、多化粧で隠されてはいるが目の下の隈、荒れ、足元もふらついており、明らかに寢不足の癥狀が出ている。

息子を拐されたことで、かなり憔悴していることが見てとれる。

「申し訳ありません。ここをお通しすることは出來ません」

「どうして!?息子がいるかもしれないのよ!?」

「事件の調査中ですので、どなたもお通しする事は出來ません」

「退いて!」

「出來ません」

「退きなさい!!」

「出來ません」

ガレットをトグナー夫人が睨む。

「ベティ」

馬車を降りて來た男が聲をかける。

「貴方からもここを通すよう言って下さい!」

し落ち著きなさい。に障る」

「ですが…!」

「ベティ」

「……分かりました」

が肩に両手を乗せて諭すような聲音で再び呼ぶと、不満はあれど夫人は引き下がり男の左に額を當てるように抱きつく。

「妻が失禮した。まだ5歳の息子が突然いなくなってしまったのだ、許してくれ」

「いえ、こちらこそ失禮な言い、平にご容赦下さい」

「ただ、先ほどこの場からレイルリット公爵様が王城へ向かわれたと聞いたが、まさかヨークス侯爵が犯人なのかね?」

「私には、お答え出來ません」

「子爵家當主(わたし)の命令であってもかね?」

「私は、レイルリット公爵家にお仕えするですので、その命令には従えません」

「……そうか。騒がせたね」

子爵はそう言うと、夫人の肩を抱き支えるように馬車へと戻っていった。

馬車に乗り込んでしして、の泣き聲がれ聞こえた。

◆ ◆ ◆ ◆

事件があった日から一日が経った。

王城の一室に國王ルシウス、ゼナット、ランディーク、カーラ、グラン、バナックが集まっていた。

「ゼナット、報告を聞こう」

「ああ」

ルシウスがゼナットに促す。

「儂が擔當したクダラット子爵は、拐事件の犯人の容疑者の1人ではあったが、例の組織とは関係はないであろう」

「ふむ。なぜそう思ったんだ?」

「悲慘……という言葉では足りんな。あのような所業、斷じて許すことなどできない!!」

ゼナットが抑えきれずに怒気を顕にする。

「クダラット子爵の屋敷で何を見たのですか?」

ゼナットの様子に、ランディークが何かを察しながらも問いかける。

「攫った子供を自の限りに陵辱しておったのだ!!」

ゼナットの一言で、部屋全が噴火寸前の火山のようなに包まれる。

「……舐めやがって」

「ディック、口調が戻ってるぞ」

「……失禮」

カーラとバナックは、一歳年下だが學園の初等部からの付き合いであるため、口調が學園時代に戻る時がある。

「ゼナット、悪魔または侯爵との繋がりはあったか?」

「いいや、悪魔との関連するものは何も出てこんかった。侯爵との繋がりも件の執事を通して、侯爵本人とやり取りしていたと思い込んでいただけのようだ」

「私の方も似たようなもので、特に収穫はありませんでした」

ゼナットの言葉に追隨するようにランディークも報告する。

その言葉に部屋にいる者たちのにやはりかという思いが、焦燥とともに生まれる。

「2人とも空振りか。となると、グランのところの証拠品に期待するしかないようだな」

「私の方もあまり期待できるものでもない。おそらく犯人が罪を被せるために用意されたものだろうからな」

「それでも今ある數ない手がかりだ。よろしく頼む。カーラもな」

「分かっておる。魔法、魔道の類は私の擔當だしな」

大変だとでも言いたそうだが、ワクワクしていると目が語っている。

「件の侯爵はどうしている?」

カーラが陛下に問う。

「西の離宮の一室に、監視を3人つけてしている。何度か事聴取しているが、のらりくらりと質問をかわすだけだな」

「侯爵家に仕える執事の犯行だ。當主本人が全く知らないと言うのはあり得ないだろう」

「だが、ヨークス本人の関與を示すものは未だ見つかっていない。今のままでは、せいぜい爵位の剝奪だけだろうよ」

遣る瀬無さと歯さだけが、六人に絡みつく。

「とりあえず、そちらは今後も捜査を続けるしかあるまい。次に、ヨークスの屋敷を捜査中に突然襲撃してきたものたちについてだ」

「確か、地下通路が侵経路だったか?」

「ああ、現在も調査中だが十中八九な」

襲撃をしてきた者たちは、どうやら地下水路を通って王都に侵していたようだ。

詳しく調べるための調査隊が組まれることになった。

この王都には、地下に王都と変わらないくらい広い地下水路が広がっている。

王都から出る生活排水はこの地下水路を通って外に排出される。

ただ、そのまま排出するのではなく、王都の外に出た汚水を外で貯める。溜めたところである程度、きれいにするための処理をして排出する。

処理方法は、貯める施設にスライムを多數放っている。ただそれだけだ。

スライムは、丸い形にぷよぷよのをしており、攻撃能力が低い。そのになんでも取り込み溶かして吸収するが、酸は低いため徐々にしか溶けない。通常のスライムの場合、サッカーボールくらいの大きさで完全に溶かすには20分以上かかる。

その代わり、スライムの酸はどんなものでも溶かす。有機、無機関係なく溶かすことができるため、スライムの上位種は非常に恐れられている。

「定期的な巡回は行なっているが、そのルートから外れた場所での使用の形跡があったため、おそらくそこから侵されたのだろう」

「警備のものが、たまたまルートを外れて見回りした跡だったりはしないのですか?」

陛下の言葉に、ランディークが問う。

「毎回同じルートのみの巡回では警備の意味をなさないからな。巡回ルートから外れて警備することはあるが、そういった場合はその日の業務終了後の報告書に記載する決まりだ」

「地下水路の警備擔當の兵士に通者がいる可能は無いのかの?あとは単純に報告れとかは?」

ランディークの問いに対する陛下の言葉を聞いて、カーラがさらに疑問を呈する。

「それを確かめるがない。しかし、以前グランからの報告で、騎士団に通者がいる可能は極力減らしたはずだ。報告れは……この際考えないものとする」

陛下が椅子の肘掛けに片方の肘を立て、こめかみを押さえながら答える。

グランの娘、アリステラが學園からの帰省の際に襲われた経緯は聞いていた。

その際、グランからの忠告で騎士団部に通者がいないか探らせたところ、何人かの通者と不正を働いていたものたちがいたことが発覚した。

直ちにその者たちを捕え、処罰した。

その通者の行の中に、侵者の手引きはなかった筈なのだ。

だから、未だ発見できていない通者による偽裝工作なのか、それとも本當にそこが進経路なのか、判斷に迷いが生じてしまう。

「儘ならないのう」

この場の者たちの心境を表すように、ゼナットが溜息と共にらす。

「仕方ありませんよ。後手に回った狀態なのですから」

「わかっている、わかってはいるが……」

「そういえばーー」

話を変えるよう、そう切り出したカーラに皆の意識が集中する。

「あやつは今何をしておるのだ?」

「あやつというのはテルのことか?」

「ああ、この場にいないのなら何をしておるのだ?」

「テルなら今はーー」

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