《獻遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな人ごっこ~》「どうしてほしいのかちゃんと言って」4
その夜、ご飯を作る心の余裕はなく、コンビニ弁當を買って済ませた。
歯を磨いてシャワーを終えると、髪を乾かす気力すら殘っておらず、重いをベッドに倒す。
まだ信じられない。
清澄くんとベッドで抱き合ったのはついこの間の出來事なのに、それが遠い昔のことのようにじる。
異だとか、海外だとか。
知らない報ばかりどんどん流れてきて。
……違うって思いたい。
曖昧な関係のままサヨナラするとか、清澄くんはそんな人じゃないと思ってる。
ベッドに潛らせていたスマホを枕もとに出した。
フォトアプリの中にっている、彼と水族館で撮った寫真を眺める。
このときの私、幸せそうなだなぁ……。
恥ずかしそうに笑う私に寄り添って肩を抱いてくれた清澄くんは、これだけ見たら彼氏のようだ。
終わりたくない……。
清澄くんとお付き合いしていたい。
もしもまだ始まってないのなら、ちゃんと確認したい。
彼には本音が言えるってじたんだから、勇気を出して聞いてみてもいいかな。
寫真に映る彼の綺麗な顔を見つめていると、ちょうど「ヴヴッ」とスマホが振した。
畫面上部、ちょうど清澄くの目の辺りに、【メッセージ一件】のポップアップがされた。
清澄くんからだった。
ドキッという心臓の音は、甘いトキメキなのか、不穏な焦りか、私は恐る恐るメッセージを開く。
【明日の仕事終わり會える?  話したいことあって】
さらにひっくり返りそうな心臓の音が鳴った。
話ってなんだろう。
指が震えたが、NOという選択肢などなく、【うん。會えるよ】とすぐに返した。
【ありがとう。じゃあ、明日】
……明日、か。
こわくて明日までなんて待てない。
大丈夫だよね?
清澄くん、ちゃんと考えてくれてるよね?
明日は、彼氏として會ってくれるという意味で間違ってないだろうか。
【清澄くんと私って、今どんな関係なのかな?】
バカ。
我慢できなくて聞いてしまった。
送信するつもりはなかったのに、つい送信ボタンまでタップしてしまう。
なんて返ってくるんだろう。
次の返信を待つたった一分ほどの時間が、途方もなく長くじる。
しばらくして、またスマホが震えた。
【それも含めて、明日(笑)】
……あ、違う。
〝(笑)〟という文字を見た途端、苦笑する彼の表が思い浮かぶ。
『向こうは俺のこと好きだって言ってたけど、そもそも付き合ってたつもりないから。連絡うざいし切った。まあ最後にヤッたけど』
そう言っていた男と、同じ顔。
私が、勘違いしていたんだ。
気力のないまま【わかった】という文字を打ち、これだけだとふて腐れているようにじるかと思い、彼と同じように語尾に〝(笑)〟をつけた。
【わかった(笑)】と打ち終えて送信した私の瞳から、大粒の涙が溢れる。
送信畫面にポタポタと雫が落ちた。
「…………うっ……」
泣くな。
勝手に期待していた私が悪いだけなんだから。
枕に顔を押し付けてしばらく泣いた。
再びスマホが振し、今度は母から【元気でやってる?】とメッセージが來ていた。
「……お母さん……」
月に一度ほど、いつもこのメッセージが送られてくる。
冷蔵庫の隣には、母から送られてきたりんごがまだ殘っていた。
しだけを起こし、返信をする。
【うん。元気だよ】
【そう。なんかしいものがあったら、言ってね】
【ありがとう】
いつもしいものは特に思い付かず、こうしてお禮だけを言っている。
お正月に、たまに帰ったり、帰らなかったり。
おばあちゃんがいなくなってから、お母さんは私に當たってしまったことを謝ってくれたことがある。
うれしかった記憶はあった。
それで元通りになれるかと思ったのに、私とお母さんのぎこちない距離は、今でも変わっていない。
自分を変えるのは難しい。
清澄くんがこんな私を好きだと言ってくれて、変われると思った。
自信が湧いてきて、私の気持ちをもっと表に出してもいいんじゃないかって。
母にも、「大丈夫」「元気だよ」じゃなくて、「つらかった」「これからは変わりたい」ってちゃんと話せる気がしていたのに。
また私は、なにも変われなかったみたいだ。
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