《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》これぞ英國流―ファイブ。フォー。スリー。トゥー。ワン!

2022/12/17 ターミガン描寫追加しました。

R001要塞エリアでは著々と、牽引されるブリタニオンからコウたちを救出する計畫が練られていた。

アシア主導のもと、特急で構築されたアベルの宇宙船は三機、製造を完了していた。

「アベル。待っていたわ」

ハルモニアからR001要塞エリアを管轄するアシアが、自らアベルを出迎えた。

「パイロットは私。そしてヴォイさんとたー君の三人です」

「俺が縦しなきゃ誰が縦するってんだよ」

「兵衛とは長い付き合いです。私も他者になど任せられません。

ヴォイとたー君が名乗り上げたのだ。コウと兵衛の結びつきを加味すると、この二人以外適任者はいない。

「わかった。頼んだよ二人とも。――スピリットリンクの使用は厳。それが條件よ」

「えー! いざって時は発しちまうだろ!」

「なんですと!」

アシアの言葉に不満の聲をあげる二人。いざというときはコウたち生還のため、保険のために取っておきたい。

「ダメったらダメ。新型機には制限をかけておいたわ。これぐらいなら私もできるし」

「わかったよ。俺が死んでアシアやアベルが恨まれたらたまったもんじゃないしな」

ヴォイが渋々承諾した。もとよりコウの救出を誰かに任せる気など一切ない。

「英國流の出番ですな。完した新型機。大量の超薄クラスター型回転デトネーションエンジン搭載の宇宙機ですぞ。必ずやコウ君たちを救出してみせましょう」

宇宙用ロケットでは歴史が古く、複數のロケットを同時に発させ推力を得る方式だ。

超薄クラスター型回転デトネーションは二十一世紀中に開発された宇宙船用途の推進機構の一つで回転デトネーションエンジンから発生した轟ノズルを整列(アレイ)化させている構造だ。

「素晴らしい宇宙船だわ。これぞ英國流ね」

心なしか英國の理解が穏やかになっているアシア。

軌道エレベーター直下の施設に三機の宇宙船が姿を見せた。一機が大きい。全長40メートルの大型宇宙船だ。

「なんだありゃ!」

「どういう構造ですか。いえ。ひとめでわかるのですが……」

絶句するヴォイとたー君。

異様な宇宙船が姿を見せたのだ。

「ふふ。不思議な形狀をしているでしょう。一見翼融合型のスペースプレーンを同型(、、)の宇宙船を三つ重ねたクラスターロケットのマルチユニット式スペースプレーン。【ターミガン】よ」

ターミガンは雷鳥の意。イギリスはスコットランドのハイランド高原に住む雷鳥から命名したものだ。

一目みて宇宙船と判斷できるその形狀。かつて地球に存在した宇宙往來船スペースシャトルを一回り大きくしたかのようなシルエット搭載可能スペースプレーンである。

と主翼が一化した流線型のブレンデッドウィングボディは、スペースシャトルに影響を與えたリフティングボディとは形狀こそ似るものの用途やコンセプトは異なり、前者は燃料効率や積載能力向上を意図し、前者は浮揚力を得るための設計だ。

は上からみると二等辺三角形で、大気圏再突も考慮している。

「ロケットと宇宙船をそれぞれ作るには非効率。この【ターミガン】はラニウスC型と共通する回転デトネーションエンジンをそれぞれ22基、三機合わせて66基備えている宇宙往復機。圧倒的な推力と加速でもって目標宙域に到著します」

「ラニウスと同型ってーと、いざとなったら?」

「アナライズ・アーマーシステムを採用しています。分離可能ですよ。我々が航行不能になろうとも、彼らだけは星アシアに帰還させます」

「さすがだぜアベル!」

この構築技士は想定外を想定し、彼らが萬が一撃破なり座礁した場合でも、コウたちが近くにいれば力になることを考えていた。

「宇宙での制は私が制するから安心して。迷子なんてさせないから」

「わかった。アシア」

アシアの管制制ならヴォイも安心できる。

「ハルモニアに搭載されていた部品も拝領し、こちらで仕上げを行った。アナザーレベル・シルエット相手にはそれなりに対策も必要よね」

「頼んだぜ。アルゲースがオーバーロード寸前までいって仕上げた品だ。過去の作例があってもきつかった」

ヴォイはアルゲースや工作機械たちの闘を知っている。

使わないかもしれない。しかし使うかもしれない。想定外を想定し、萬全を盡くしたのだ。

星アシア創時代からあるこの軌道エレベーターはソピアーの産のようなもの。本來垂直型ベルトコンベア方式で運用している。主な役割は資源星からの採掘資源を回収する無人運用だからね。開拓時代にシルエットが搭乗して、人間が宇宙に上がって作業する機械も増えたから、當時の私が改良を重ねていた」

「ソピアーの産……」

アベルはその言葉に途轍もない歳月の重みをじた。三人は軌道エレベーターを見上げる。天を衝く、超弩級の建築だ。

「今回はその機能の一つを解放するわ。ターミガンを軌道エレベーターの昇降機をレールガン方式のマスドライバーとして運用します。昇降機をカタパルトランチャーにして、あなたたちは宇宙に飛び立った地點で第二宇宙速度を優に超える速度になります。能限界ギリでいくからよろしくね」

軌道エレベーターは重り方式の運用が主だ。ベルトコンベア式は往復業務のみに使われる機能だが、マスドライバーは人間や資を宇宙に打ち上げ、三星間を移するなどに用いられる。

「承知いたしました」

「マスドライバー運用は私と當時のアシア人が考案したもの。仕様の想定だからね」

「開拓時代の機能が解放されるということですか……」

「そうだよ。そんなものまで引っ張りだすんだから、よろしくね」

放心を隠そうともしないアベルに微笑みで返すアシア。

「ますます失敗するわけにはいきませんな。コウ君の宇宙救出大作戦を敢行するとしますか」

アベルが宇宙服を著込み、カウントダウンを開始する。

「準備はいいですかな。コウ君たちの救出作戦を開始します。それではカウントダウン開始。ファイブ。フォー。スリー。トゥー。ワン!」

三機で一機のスペースプレーンは、軌道エレベーターを走路代わりに利用し、星アシアから宇宙へ打ち上がった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「アベルさん。コウをお願いします」

エメはアストライア艦で、軌道エレベーターを高速で登っていく【ターミガン】を祈るような気持ちで眺めていた。

「コウの救出部隊は発進しました。ブリタニオン周辺宙域に【悪魔】の影響はもうないでしょう。次の段階に移ります。アストライア」

エメの隣にいるアシアがアストライアに語りかける。

『軌道エレベーターの頂點である10萬キロ地點でターミガンを出するのですね』

「ええ。障害は何もないわ」

『そこで【塔】を使ったのですね』

「幸い【アルゴス】がいる宙域は何もありません。アルゴスには意志ある機械しか搭乗していないようです。全力で行くから」

星の力でもって放たれる【塔】。神の怒りに等しい一撃――』

當然アストライアも【塔】の全容も威力も知っている。

「敵はアナザーレベル・シルエット一機です。機械のなら単機で星エウロパに帰還することも容易いでしょう」

アシアは苦悶の表を浮かべる。どうあっても対処し難い敵であり兵なのだ。

「バルバロイはストーンズの半神半人に匹敵する非道な手段で人化しています。ただしMCSの能力はまったく生かしきれていない。宇宙要塞アルゴスも同様でしょう。付けいる隙はそこにあります」

『ただひたすらにく、強固な要塞とシルエット。それだけでも十分に脅威です』

「アナザーレベル・シルエット相手に時間稼ぎ中。そう大して持たない。あとはヘスティアの策が功を奏し、アベルたちが救出に功してくれることを祈るしかない」

『【アルゴス】といいアナザーレベル・シルエットといいどこから持ち出したのでしょうか?』

「さあ? 最もされし星エウロパなら、なんでもありじゃないのかな。星間戦爭でも姿を見せなかった兵や施設が今頃になって現れた理由はわかるよ。あの戦爭はある種星エウロパに住む人類の覇権爭いだった。星開拓時代のはエウロパが持ち出しを許さなかったでしょう」

アストライアもアシアが皮じりになることは仕方がないと思う。

重工業星エウロパは、ただその生産力だけで他二星を制圧できるほどの軍事力を持っている。その構図はオリンポス十二神が存在しないと思われた星間戦爭でも不変だった。

『今はバルバロイのみ。エウロパの意志が反映されていると?』

「貍寢りの可能はあるわ。ヘルメス以外の超AIが絡んでいる可能だってある。エウロパは自分の都合がいいようにレギュレーションをどんどん変えるタイプだったし、ゼウスはその気まぐれを認めたからね。――こんな愚癡、コウには聞かせられないね」

くすっと笑うアシアだが、やはり目は笑っていない。

四番目のアシアを吸収したことで、潛在的な怒りが発しやすくなっているのではないかとエメは思うのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

アベルさん出番です! カウントダウンはおそらくあの聲で……

というわけで同じ形狀の飛行機を三段重ねするイギリス型宇宙船を基に構築されたターミガンです。

かつてイギリスで計畫された「BACマスタード」というもので、宇宙関連にまだ興味をもっていた時代のイギリスが発案して完寸前で中止になりました。

お金がなかったのです! スタッフはその後米國に移りスペースシャトル計畫に貢獻したそうです。

なお同じ形狀ですが役割は違うため、三機の宇宙船は微妙の仕様が違ったそうです。F35みたいなもの?

いや、宇宙版ブラックバーン作戦かもしれません。一機を打ち上げるために二機がそれぞれ地球に再突する仕様のようですね。

米國GD社も同様の宇宙船トリアムを計畫しましたが、運命も同様に終わりました。

とある幻想兵「俺の名前じゃないからな!」

サンダーバードはリュビアにいます! 実際には軌道エレベーターのベルトコンベア式は困難らしい! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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