《ワルフラーン ~廃れし神話》日は迫る
「いらっしゃい。よく來たわね」
玄関の辺りが、発のせいでやたら荒れているが、は別段気にしていないようだ。変わらず豪華絢爛、裝飾華な椅子に腰を掛け、王であるかのように、こう言ってはなんだが偉そうである。フィージェントも彼に苦手意識を持っているようで、対面している時のその顔は、凄く複雑である。
「貴方が、ツェータの馴染ですか?」
「ツェータ? ああ、ツェートの事ね、そうよ。私はレンリー・エンモルト。王の次にしいと有名で、才兼備で八方人の馴染。ああ、ツェートはなんて幸せなんでしょうね。こんな人の私と馴染になれるなんてね」
この高飛車な発言が、この麗しいの口から紡がれているモノとはとても思えない。いや、思いたくない。恐らくはそれが、他の文化に染まったものの言葉だろう。
それは他の文化で育ってきたモノからすれば酷く異端なその景、否定したくなる気持ちも分からなくはないが、アジェンタの子は九割方このような格であるので、被嗜好を持っているというので無ければ、ここでの花嫁探しはやめた方が良い。
アルドもまた、この格を好きになれるような格では無かった。……他人の嗜好は極力否定しない方向だが、ツェートがどうして彼の事が好きなのかが分からない。
「それで、私に何か用?」
「しだけ貴方の人格を図らせてもらおうと思いまして」
アルドはニッコリと笑った(つもりだ)が、彼は嫌悪をその顔に表してきた。
「何それ、笑顔なの? ……気持ち悪いわよ」
中途半端に引き攣りながら笑っているので、その反応は當然である。
「先生、笑うの下手になったな」
「放っておけ」
弟子との會話は一旦切、アルドはレンリーを見據えた。「何よ?」
確かに人だ。スタイルも良いし、品は無いが、あるように見える。……だが何かが足りない。アジェンタの『王』にあって彼に無く、ナイツ陣にあって、彼に無いモノ。
正確にそれを捉えるべく、アルドは顎に手を當て、ゆっくりと口を開いた。
「そういえば、貴方は本來ならばエタンの方と契りをわすのでしたよね。で、その時にツェートが割り込んできた」
「そうよ。それがどうかしたのかしら?」
「……これは飽くまで貴方の真意を図るモノです。正直に答えて頂けるとありがたいという事を、あらかじめ言っておきます」
一度釘を刺してから、アルドはし思考した。
彼の格を考えると、噓はつかないだろうが、それでも何か狙いがあって、噓を吐く可能がある。しかし予め言っておくことで、意図的な噓に張を持たせ、ボロを出させる。アルドはこれを狙って、態々忠告した。
彼の表に一切変化が無い事を確認した後、真剣な面持ちでアルドが言った。
「貴方はこの契りを邪魔されたく無かった、それとも―――言い方が悪いですね。貴方はネセシド・エタンとツェート・ロッタ。どちらの事が好きですか?」
ツェートには申し訳ないが、もしもこれで前者の事が好きだった場合、アルドは直ちに訓練を中止する。いや、訓練そのものは続けたとしても、絶対にツェートを向かわせはしない。これは抗えぬ力に対しての違法的略奪では無い。あくまで個人の意思を尊重した上での出來事なのだ。だからシドとツェートは立ち合いをする事になっているのだが、肝心の人の心境を忘れている。そう、取り合いの原因となっている馴染、レンリー・エンモルトだ。
そもそもこの取り合い、どこか始まりがおかしい。聞いた人がツェータのせいとしか思えないが、アルドの知る限りでは、まるでレンリーの意思を無視した上で二人が爭っているようなのだ。だから當初は、二人に口が出せない位穏やかな、とても珍しい格だと考えていたが、今會った限りそんな事はありえないと確信した。
ならばどうなっているのか。推測を重ねてもたどり著けそうな簡単な疑問だが、やはり一番簡単にたどり著ける方法は、本人に直接聞く事だろう。
レンリーはその言葉を聞いた後、し悩んでいるように顔を俯かせた。何に悩んでいるかは分からないが、考える程の事だろうか。この格から考えるに、悩むような格とは思えないが、一。
レンリーはにっこりと微笑みながら、顔を上げた。
「どっちも好きじゃないわ」
「え?」
意外な答えだった為、思わず聞き返してしまう。隣に居るフィージェントは、分かり切ったような、それでいて呆れたような表を浮かべていた。
「どういう事でしょう?」
「どういう事も何も、私は強い人が好きなの。今は立ち合いって事で、二人の強さは、『今』は対等なんでしょ? だったらどっちも好きじゃないわ。強いて言うとしたら、フィージェントね」
「俺は児に興味は無い。『アイツ』とか先生の妹さんとかの型の方が好きだ」
フィージェントは理というモノが無いのか。次々とアルドの辺がばらされているような気がする。それも見ず知らずの他人に。
これは酷い。どうやら自分の強さを忘れているようだ。立ち合いの時、もう一度上下関係を分からせる必要がありそうだ。
他のの存在を聞いたからか、レンリーは骨に機嫌が悪かった。
「私よりしいなんて一人しか居ないわ」
「お前の世界が狹いという事を、自分で証明してしまったな。俺はお前と夜の営みを行うぐらいなら先生と行った方がまし―――」
全力で放たれた裏拳は、不意を突いたこともあって、見事にフィージェントの鼻先に命中した。フィージェントは後方に五メートル程吹き飛び、無様に倒れ込んだ。
「……私の生涯の恥の話はやめろ。さっきの恩を忘れたのか?」
「……………………忘れてねえって。そう怒るなよ先生」
フィージェントは素早く立ち上がって、アルドの隣まで小走りで寄ってきた。
「全く。ああレンリーさん。気にしないでください。こちらの話ですから―――それで、そうですか。貴方はどっちも好きではないのですね?」
「ええ。でも二人にはよ。二人には思わせぶりな態度を取って、その気にさせてあげているだけだから。本當に男ってに弱いわよね。その気にさせてあげているだけで、互いに奪い合いだって始めるんだから」
「程。貴方の心を止め続けるには、地上最強になるしかないと」
「そういう事ね。まあ、あの落ちこぼれのツェートには、最強はおろか、ネセシドに勝つことすら無理でしょうけれど」
聞けば聞くほど、格の悪さが滲み出ているような気がする。隨分と正直者なのは評価するが、それ以外は褒める所がない。
ツェートにこれを教えた所でまあ無駄だろう。恐らくそんな態度を取っている事と、子供故の純真さも相まって、きっと信じようとはしないし、こちらの信用を落とすだけになってしまうのは目に見えている。
悔しいが、レンリーの言う通りにするしかなさそうだ。言った所で意味がない。ならば最初から言わなければいい。
大の出來事でアルドは最善を導くべく、行するが、時には介しない方が良い事だってある。ツェータの思い……それがレンリーに向いたままならば、それで良し。いずれ捨てられた時には悲しむだろうが、それでもあの格だ。また強くなろうとするだろうから、それはいい。
問題は、レンリーに執著するあまり、とんでもない事をしでかしてしまうかもという可能が存在する事である。恐らくこの結末を迎えれば、ツェータは彼の手足となるだろう。そう、先程の戦士のように。そうなったとき、例えば彼が、『あの國、政治方針が好かない』などと言った場合どうなるかは想像に難くない。そしてこれはまだ良い方だ。
起こってはならない事。それはレンリーが自分達の存在を知って『殺してほしい』と言った時、これが最悪だ。ツェートは彼に振り向いてもらう為、無限に鍛錬を積む。いずれは強くなり、ナイツを超えるかもしれない―――
後はもう言わずとも分かるだろう。そう、クリヌス並みに厄介な存在が、一人生まれてしまうのだ。
その為、レンリーと結ばれる本來の結末だけは避けなければならない。しかしそれは、アルドが介してどうにかなる事ではない。今ツェートが思いを揺らがせている人がるべきだ。
「有難うございました。それでは、私はこれで」
「あ、もう帰るのか。じゃあな、先生。玄関は俺が直しておくからそのまま帰っていいぞ」
フィージェントもそう言うのだし、それでは帰らせてもらおうか。
「ちょっとッ、私の許可なしに帰らないでよ!」
しかし、家主に止められたので、帰る訳には行かなくなった。
「何でしょう?」
「こっちからも一つ質問があるわ。貴方……私の事、好きでしょ?」
「業腹ですが、私の好みはフィージェントと一致しているので……ああ、だからって妹にはしませんが……貴方には興味がございません。悪しからず。フィージェント、いい加減私は帰るから、レンリーさんはお前が抑えておけ」
背後からレンリーが怒り狂う聲が聞こえるが、これ以上聞いていたら、一生帰れなくなってしまう。師匠である事に託けて、弟子に後処理を丸投げするという戦法は、我ながら酷い方法だと思う。
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