《Primary Wizard ~ゼロから學ぶ基礎魔理論》
「それにしても・・・。
まったく人がいない。
想像してた闘技場のイメージと全然違うし」
數分の脳葛藤の末、誓約書にサインをした私は、闘技場の部、戦闘を行うステージへと通された。
想像していた通り、闘技場の中央に戦闘ステージがあり、その周りを観客席が囲んでいた。
ただ想定外であったのは、その観客席にほぼ人がいないこと。
というか、1人しかいない。
私の先生であるノムだけである。
「まあノムがどこにいるかよくわかるからいいけど」
と、一人つぶやいていると、ノムが大きめのボードに何か文章を書いている。
そしてそれを私に向けて掲げた。
どうやら私に何かを伝えたいらしい。
戦闘の指示かな?
私はそのボードを注視した。
えーっと、
『トイレに行ってくる』
「我慢しろ!!!」
私がぶのが聞こえなかったのか、無視したのか、ノムはすぐに消えてしまった。
たぶん無視したな、アレ。
前もって行っとけよ。
と、私がそんなことを考えていると、
『第一試合を始めます』
場アナウンスが流れた。
私は戦闘ステージに向けて歩き出す。
と同時に脳で、『ぐはは!ここがお前の墓場となるのだ』という宣告をける。
さようなら皆様。
私が死んでも、皆様が私のことを忘れないように、ここで自己紹介をしたいと思います。
私はエレナといいます。
とある街で暮らしていましたが、ノムに魔の才能を見出され、魔師として最近冒険者生活をスタートさせました。
容姿は、緑の瞳に緑の髪。
髪は後ろで結ゆってポニーテールにしています。
服裝は軽裝、タイトな薄めの生地の軽い服を著ることで、私の特徴である高い敏捷を損なわないようにしています。
しかし、新しく買ったこの槍が重いので、その敏捷も下がった狀態です。
得意な武は剣。
ですが、先生の指示で今は持っていません。
魔法は練習中ですが、まだ実用レベルではありません。
どうすんのこれ。
ダメじゃん。
自己紹介からネガティブな思考に回帰したところで、気づくと私は闘技場のステージに上がっていた。
この闘技場のステージを中心として私が場してきた南の場門の他に、東と西にも場門がある。
一方、北にも場門があるのだが、ここだけ頑強そうな柵が閉じた狀態になっている。
と、その柵の奧に何かが見えたと思うと同時に、柵がせり上がり、場門が開放された。
ここから相手が出てくるのだろう。
相手は・・・
《うーーーーーーーー》
「魔?!
人じゃないのか?」
低い聲を上げて場してきたのは、モンスター。
場門から、ステージに向けて近づいてくる。
否、私に向かってきているのか?
『戦闘、はじめっ!!』
「って、戦闘はじまった!?」
モンスターがステージに上がった瞬間。
唐突に試合開始のアナウンスが流れる。
やるしかない。
私は、生まれて初めて扱う槍を敵に向けて構える。
私の闘技場デビュー戦が始まった。
>
*****
「はぁはぁ・・・。
敵は弱いけど、慣れない武がキツい」
モンスターとの2連戦を制した私は、荒い呼吸をしながらつぶやいた。
今回私が倒したモンスター。
それは、おそらくこの世界で最も弱いとされる『ウニ』と呼ばれるゼリー狀のモンスター。
雑魚中の雑魚でした。
どこにでも生息していて、きが遅く、攻撃力も非常に低い。
そんな相手に私が疲弊しきっているのは、武の槍のせいである。
重くて、いまいち扱い方がわからない。
あと、ウニは『突き』攻撃より、『斬撃』攻撃のほうがダメージが通る。
槍じゃなくて斧にしておけばよかった。
「今、2戦終わったから・・・。
次が3戦目で最後か」
私が出場しているランクでは、3試合行われるらしい。
疲れはあるけど、まあ次も同じモンスターならいけそうかな。
『第三試合をはじめます』
私がフラグになりそうなことを考えていると、第三試合開始のアナウンスが流れた。
否応にも北の場門を注視する。
>
「なんか、でかいの來たし!!」
現れたのは、私のよりも大きい巖、もしくは金屬の塊。
これに足と手が付き人型をしている。
しかし、首から上がない。
私は記憶を辿たどる。
これ・・・もしかして。
「『ゴーレム』ってヤツ?」
過去読んだ、何かの書籍に書いてあった。
魔でかす、人造兵。
その本が、『創作』だったか『歴史書』だったかさえ思い出せない。
しかし、いつだって、目の前にあるのが現実だ。
私は、再度、観察を開始する。
ボディー、すごくそう・・・、いや、間違いなくい。
この槍で倒せるのか?
>
ゴーレムはまるでこちらに見せつけるようにパンチを繰り出す。
準備運かな?
あれに當たったら、1発KO間違いない。
こちらの攻撃は効かず、相手の攻撃は一撃必殺。
勝てる要素がない。
・・・。
帰るか。
「エレナ!!」
観客席、東の場門の方向から、心折れた私を呼ぶ聲がする。
「おお、ノム帰ってきてるし!」
ノムが観客席まで帰ってきていた。
でも帰ってくるの遅くないですか?
だ・・・。
「その相手は魔法で倒す。
この前教えた魔法を試してみて」
「この前、って・・・。
あの『火のやつ』だよね!」
ノムに向けてんだが、反応がない。
よく見るとノムは弁當を食べ始めていた。
もういっそのこと帰れよ!!
『第三試合、はじめっ!!』
ゴーレム対策が脳でまとまらないうちに、戦闘開始がアナウンスされた。
やるしか、なさそうです。
*****
>
ステージ上のゴーレムは、何もないところでパンチを繰り返していた。
挑発されてるのかしら。
ただこちらとしてはありがたい。
今のうちに、VSゴーレムの対策を練ねることにしよう。
まず、ゴーレムの外見から判斷して、きは遅いはず。
その點、敏捷に自信のある私には有利だ。
とにかく逃げる。
どんな強力な一撃でも、當たらなければ問題ない。
問題は、こちらの攻撃方法。
これはノム大先生を信じるしかない。
旅の途中、私はノムから魔法を教えてもらった。
最も単純で、最も習得が容易であるとされる、炎の基本魔法だ。
とはいっても、何回もチャレンジし、いまだ1回しか功していない。
ぶっつけ本番。
そんな、うまくいくかね。
しかし、今はこれを功させる以外に勝算はない。
相手は鈍足。
逃げては魔法にチャレンジ、逃げては魔法にチャレンジ。
これを繰り返せば、いつかは、魔法が発するはず。
これで勝て・・・
そう考えた瞬間、私の思考が止まる。
眼前、視覚報から反応!
反的に槍を両手で持ち防の姿勢を取る。
同時に、その槍に向け、何かが突進してきた。
ゴーレムだ!
き速くない!?
しかし、防作は間に合っている。
とにかく耐えて、勢を立て直して・・・
それから・・・
《ガギャン!!!!》
剎那、私は真後ろに吹き飛ばされた。
槍を起點として、中に衝撃が広がる。
私の腕力、防力ではこの巨の突進に耐えれえるはずが無い。
そりゃそうですね!
ステージ南方に吹き飛ばされた、私。
やばい!
速く勢を立て直さないと次撃が襲ってくる。
やばい!
戦慄せんりつの思考で、ガクガクするを無理やり起こし、前を向く。
・・・
見つめた先。
ゴーレムはうつ伏せに倒れていた。
ゴーレムの背中に刻まれた魔法陣の模様を、今なら細部まで確認できる。
張が解けていく。
なんで?
おそらく、ゴーレムは『突進』、したのではなく『飛び掛った』。
攻撃後のディレイを覚悟した『捨てタックル』。
そんな予測。
ただ、これは。
チャンス到來!
今のうちに魔法の発準備を・・・
とか思考を巡らしている間に、ゴーレムは巨漢にしては機敏な作で起き上がった。
もうし寢ててよ。
々がっかりしながら、私は策の再構を開始する。
このゴーレムは瞬間的にならば高速でける、らしい。
魔法発の素振りを見せれば、それを見て、それをトリガとして、先ほど同様に飛びかかられるだろう。
魔法発のための時間。
それを、どうやって稼かせぐか。
!!!
>
ゴーレム。
巨巖の如き軀。
それが、私目掛けて跳躍。
持ち前の敏捷を持って、これを回避する私。
前回よりも脳に余裕あり。
すぐさま対象を目で追いかけ、その背中の魔法陣を視認する。
倒れたゴーレム。
が、徐々に、徐々に持ち上がる。
先程見たのと同じ景。
それをけ、私の戦略は完した。
先の生との2戦で疲労がたまっており、ゴーレムの突進攻撃を、あと何回避けることが可能かわからない。
守る案と攻める案。
それらが、完全に同スコアで脳に存在しているならば。
諦観が冷靜を産み。
冷靜が戦略を産み。
戦略が集中力を産み。
集中力が恐怖を殺す。
ふと、ノムが、『私は戦闘になるとし人が変わる』と言っていたのを思い出した。
自然と、今は。
死の恐怖が、和やわらいでいるような。
・・・。
思い出せ。
ノムから教わった魔法の発方法を。
私は魔法を発すべく、槍を左手に持ち替え、右手を前へ突き出す。
魔力を手のひらから外に押し出す覚で放出し、丸い塊になるようにイメージしながら収束させる。
本來ならば。
私は魔力を収束させない。
収束させる『ふり』を続ける。
この作は『囮』だ。
ここでゴーレムがピクリとく。
「來る」
次の瞬間、ゴーレムが飛び掛る。
見計らった、そのタイミング。
槍を捨て、回避。
私の橫を、ゴーレムがすり抜けていく。
その姿を。
視覚報として確実に取得する。
背中の魔法陣。
ゴーレム、転倒を確認。
と同時に、手のひらをゴーレムに向け突き出し、魔力収束を開始。
炎。
炎。
炎。
炎!
お願いします。
來てください!
が、殘念。
手のひらの先には視覚的な変化がない。
これ魔力集まってるの!?
変化が微塵みじんもないんですけど!
ばした手の先で、ゴーレムが起き上がりの作にる姿が確認できた。
その視野に、赤い。
私の手のひらの先に。
淡い赤のが、急速にその輝度を向上させる様。
その景は、私に。
興をもたらした。
ゴーレムはすでに立ち上がっている。
そして、私を視界に捉えると、一時、作停止。
すぐに再び飛び掛ってくる。
それがわかっていても。
私は。
顔面の存在しない。
その相手を凝視して。
いやらしく笑った。
ゴーレムがピクリとく。
同時に、私は、ノムの言葉を思い出す。
『この魔法は、炎の純『バースト』。
別稱『プライマリバースト』、『バーストブレッド』。
どれも同じなので、好きな名前で呼んでいい』
>
ゴーレムが加速、跳躍。
それと同時に私はんだ。
「バーストブレッド!!!」
収束が完了したのかどうかわからない。
未な魔力球が、ゴーレムに向けて放たれる。
そして・・・
>
激しい炸裂音と衝撃に、私は目を細めて怯ひるむ。
巻き上る砂塵により、視覚報の信頼度が下がる。
の筋は張させ、『私の魔力程度では、ゴーレムの突進を防げない』というワーストケースに、最低限備える。
しかし。
恐れていた、覚悟していた、その痛みは。
いつまでも、やってこなかった。
・・・。
々の時間経過の後。
聴覚は何も拾い上げない。
私は目をしっかりと開き、『結果』を見る。
ゴーレムはステージの外、場外まで吹き飛び、腹を見せる格好で倒れていた。
・・・
お願いだから立ち上がらないでください。
そんなことを願ったとき、
『勝負有り』
場アナウンスが、試合終了を告げた。
*****
「あー、なんとか生きて帰れたー 」
「おつかれ」
私が今無事に生きていることを実してしみじみしていると、ノムが素直にねぎらいの言葉をかけてくれた。
そんな彼に1つ、聞いておきたいことがある。
「ってかさあ、最後の相手。
あれは何なの?」
「エーテルゴーレム。
魔法でく人形、みたいなもの」
やはり、ゴーレムでした。
「人形っていうより、巖みたいなじだったかも」
「だから理攻撃は効きにくい、魔法が効果的」
「そういうの、事前に教えてもらっていいかな」
おそらくノムは今日対戦する相手の報を知っていたのだろう。
そんな気がする。
ならば、先に敵の報を教えてくれててもいいはずだ。
あと、人が死にそうなときに、トイレに行ったり弁當食べたりしないでしいです。
「ちなみに、闘技場には魔法しか効かない魔もいる。
理攻撃に耐を持ち、かつ炎系魔法にも耐を持つ魔もいる」
「私、魔法は炎しか使えないけど」
すでに詰んでるじゃないですか。
「だから私が今から教えていく。
今日は弱い相手しかいないってわかってたから、あえて何も言わなかった。
ゴーレムはきが遅いから、逃げるのは簡単だし」
「・・・言いたいことはたくさんあるけど、
とにかく今日は宿に帰って休みたいです」
今はあのいベットでさえおしい。
私が、疲れてますオーラを最大限に発揮しながら伝えると、
「だめ、今から魔法を教えるから」
と一蹴された。
疲れてますオーラ、ちゃんと出てなかったかな。
魔よりも何よりも、ノムが一番怖いかもしれない。
そんなことを考えながら。
私の闘技場生活が始まったのでした。
【書籍版発売中!】ヒャッハーな幼馴染達と始めるVRMMO
【書籍化いたしました!】 TOブックス様より 1、2巻が発売中! 3巻が2022年6月10日に発売いたします 予約は2022年3月25日より開始しております 【あらすじ】 鷹嶺 護は幼馴染達に誕生日プレゼントとして、《Endless Battle Online》通稱《EBO》と呼ばれる最近話題のVRMMOを貰い、一緒にやろうと誘われる 幼馴染達に押し切られ、本能で生きるヒャッハーな幼馴染達のブレーキ役として、護/トーカの《EBO》をライフが今幕を開ける! ……のだが、彼の手に入れる稱號は《外道》や《撲殺神官》などのぶっ飛んだものばかり 周りは口を揃えて言うだろう「アイツの方がヤバイ」と これは、本能で生きるヒャッハーな幼馴染達のおもり役という名のヒャッハーがMMORPGを始める物語 作者にすら縛られないヒャッハー達の明日はどっちだ!? ※當作品のヒャッハーは自由人だとかその場のノリで生きているという意味です。 決して世紀末のヒャッハー共の事では無いのでご注意ください ※當作品では読者様からいただいたアイディアを使用する場合があります
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