《Primary Wizard ~ゼロから學ぶ基礎魔理論》

ノムが魔法を教えてくれるというので、荒野のような場所にでも連行される、のかと思ったら、宿に帰ってきました。

やったね。

「これ」

ノムは青の書籍を、私に向けて突き出してきた。

訝いぶかしみ、深い。

本を凝視。

表紙には『魔導學概論』と書かれている。

『概論』というのがよくわからないが。

魔法というものを詳細に説明する容に違いない。

この書籍を読、読し、魔法に関する理解、興味、関心を深めておけ、ということなのだろう。

本を差し出したまま完全停止したノム先生。

私がアクションを取らなければ、イベントは進まない。

両手を使って、至極丁寧に頂戴した。

青の本。

綻ほころびはなく、丁重な扱いをけてきたことが垣間見れる。

実質量以上に重たくじる、気がする。

魔法に関する書籍。

そういったのものに、今まで、あまり深く親しんだ覚えはない。

興味なくペラペラとページをめくったことがある程度。

さて。

ノムがお勧めするほどの書籍。

ここには、いったい、どのレベルの事柄が記述されているのであろうか。

多大な期待を込め、私は表紙をめくった。

すると・・・。

真っ白なページが目に飛び込んできた。

・・・

もう1ページめくってみるが、1ページ前とまったく同じ白。

パラパラ〜っと送ってみるが、オブジェクトは1つも見當たらない。

あれれ〜、おかしいぞ〜。

「はい!

ノム大先生。

この本、何も書かれていません。

全ページ白紙です」

私は左手を挙げて報告する。

「大丈夫、エレナが書く」

「やったー。

らくがき帳ほしかったんだー。

とりあえずノムの似顔絵から描こうかなー」

「私が教えたことをそのまま書いていけば、最終的に『魔導書』が出來上がる。

こうでもしないとエレナは、『後で本読めばいいかー』とか考えて、人の話を聞かないだろうから」 

私のボケはしくスルーされた。

私、信頼されてないのね。

まあ、あまり反論はできませんがね。

訂正。

『大事に大事に扱われた』、ではなく、『新品』でした。

なるほど。

「でもさ。

ノムの考えてることと、私の書いた容が違ってきちゃうかも、だよ?」

『魔導學概論』と銘打っておきながら、私がノムの言葉を誤解釈して記述すれば、著者(私)の信用がた落ちである。

「違ってもいい、エレナが理解できるように書けば」

「さようですか」

まあ確かに。

どうせこの本、私しか読まないですしね。

その辺り、あまり気にしないようにしよう。

文字が汚くても、表現適當でも、私がわかればお咎とがめなし。

落書きし放題である。

青の本に続き、ノムがペンとインクを渡してくれる。

のペンはノムの私

『ペンとインクは、後日、雑貨屋で自分で買っておくように』という言葉が添えられた。

「それじゃ。

始める」

「はーい」

本格的な魔の講義が始まった。

「魔の狹義の定義は、に蓄積された魔力を、エネルギーとして外に放出する攻撃防衛手段、といえる。

この外に放出されたエネルギーをエーテルという」

『狹義』?

えっ、なんだって?

『狹義』で思考が詰まって、その後の言葉を私の脳が拾おうとしなかったんですけど。

「先生、速すぎてメモが間に合いません」

『とにかく一旦待ってくれ』、『もう一度言ってくれ』、『もうしゆっくり言ってくれ』という複數の希を一言に詰め込んだ。

たぶん伝わらないと思われるが。

「別に、私が喋った容、全部を書かなくていいから。

エレナがわかるところだけを、エレナがわかりやすいように書けばいい」

私はノートに『狹義』と書き込んだ。

後でもう一回聞こう。

『上司の発言を途中で遮さえぎってはいけない』。

社會人の基本だ。

「で、続き。

このとき、の『魔力』が『プレエーテル』という中間狀態になり、その後『エーテル』となる」

『魔力 → プレエーテル → エーテル』っと。

とにもかくにも。

キーとなる単語だけは聞きらすまい。

これらの単語を後で調べれば良い。

・・・。

ただ、これらの単語をどうやって調べるか。

その方法も、後で調べよう。

「『プレエーテル』の狀態ではエネルギーではあるけど攻撃可能なエネルギーではない。

もちろん、にある狀態の『魔力』もエネルギーだけど攻撃可能なエネルギーではない。

エーテルに変換することで、初めて攻撃魔法となる」

「んじゃ、さっきのゴーレム戦で私が使った火の魔法もエーテルなの?」

『攻撃可能』の辺りはよくわからないが、先ほどの死闘で私が発した火の魔法のことが気になった。

「それは違う。

火の魔法はプレエーテル変換法が違うの。

エーテルはそのまま変換するイメージ。

一方で火の魔法は、まずある程度プレエーテルを外に蓄積した後に、『四元素変換』という別の変換作を行うことで実現される」

『四元素変換』?

新キーワード。

とりあえずメモだ。

私はノートに『四元素変換』と書き込んだ。

ここでノムが、この『四元素変換』の説明をしてくれる。

「この世界の魔法は、6つの屬に分類される。

まず『エーテル(魔導)』、それと相反する『アンチエーテル(封魔)』の『二翼魔』。

『バースト(炎)』、『レイ()』、『ウインド(風)』、『スパーク(雷)』の四元素魔

合わせて6つ。

『プレエーテル』をその4つの屬に変換するから『四元素変換』」

「さっきの戦いで火の魔法を発したときは、そんな変換やってないけど」

に覚えなし。

死に狂いで、『炎』をイメージしてやってみただけだ。

『四元素変換!』という詠唱は、脳ですらやっていない。

「変換方法の詳細は、現在の科學では解明されていない。

私も現狀、うまく説明できない。

その屬の魔法の発をイメージする、そのことだけで、変換は功する」 

詳細はノムでもわからないらしい。

ノムでもわからないことがあるのか。

何か新鮮な気持ちになった。

「とにかく覚えておいてもらいたいこと。

それは、『6つの屬のうち、『エーテル』の屬が基本になっている』、ということ。

だから、今から『エーテル』の魔法を教える。

バーストの魔法を発する際に、『四元素変換』をやらないでおく、っていうだけだから。

できる人には簡単にできる。

できない人は一生できない。

人によって得意な屬、不得意な屬というものがある」

私は現狀、火の魔法しか使えないので、自がどの屬の魔法が得意なのかはわからない。

では、ノム先生は何屬が得意なのか。

「ノムはどの屬が得意なの?」

「全部」

『そりゃあどの魔法も最兇レベルだけど、その中で何が得意なのかって聞いてるの!』、と、『あー、そうですか』という2つの思考が脳に同時に浮かぶ。

私が、

「あー、そうですか」

とつぶやくと、ノムが続ける。

「言い換えれば、特出した屬はないとも言える」

ご謙遜を。

間違いなく全屬特出していらっしゃいますね。

などど、脳で嫌味を言ってみる。

・・・。

それに引き換え『エレナは全屬特出していません』とかだったりしないよね。

そうならば、恨うらむぜ神様。

「ちなみに、エレナの得意屬は『雷』」

『雷』?

「なんでわかるのさ!

ってか、私が雷屬得意ってわかってるなら、最初に教えてよ!」

ならば、なぜ最初に火屬の魔法を教え、そして次にエーテル屬の魔法を教えようとしているのか?

最初に雷の魔法を教えてくれていれば、先のゴーレム戦であれほどの恐怖を味わう必要はなかったのではあるまいか。

そう思うと非常に腹立たしく、強い口調になってしまった。

「雷は難しい。

魔力消費も大きいから、魔力量がない駆け出しのときは、1発発することさえキツい。

も悪くて、者の意図通りにエネルギーを作できない。

初心者には扱いにくい屬

・・・。

で。

に失敗すると非常に危ない。

できても、制できないと危ない。

エレナは、まだ封魔防壁も弱いから、さらに危ない。

だからみんな、バーストや、エーテルから習得する。

それらの屬練してくれば、雷系の魔も自由に使えるようになるから」

私は、『雷系、非常に危ない』とノートに書き込んだ。

ノムの『危ない』を翻訳すると『死』になる。

ちなみに、ノムの『大丈夫』を翻訳すると、『死ぬことはないから大丈夫』になる。

「じゃあ早速。

今から『エーテル変換』のコツを伝えるから」

なにか話しが長くなりそうだ。

それにしてもお腹がすいた。

闘技場での戦闘のあと、ご飯を食べる暇さえ與えてもらえなかったのだった。

「先生!

とりあえずお晝ご飯を食べてからでいいですか?

お腹が減りました」

「私は減ってない」

「ノムは弁當食べたからじゃんか!」

命がけの戦闘の合間に腹ごしらえをする青髪の映像がフラッシュバックされる。

イラダチスゴイ。

そんな私の言葉を無視するように、講師ノムによる、『エーテル変換』の解説が開始された。

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