《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》雨の日のお散歩は楽しい
「今日の雨もすごいですね」
「午後にはやむみたいですけど……」
俺は外を見ながら言った。
前線の影響でここ二日ほど雨が降り続いている。
咲月さんは食を拭くために新しい布巾を棚から出して、
「隆太さんが導してくれたガス乾燥機がなかったら、ヤバかったですよ。いやー、あれ本當に優秀ですね」
「あれは買って良かったですね」
我が家は心海が保育園にったタイミングでガス乾燥機を導した。
保育園に持って行く服の量も多く、洗濯が増えて電気の乾燥機では対応できなくなった。
毎週末持ち帰るお晝寢シーツがくせ者で、電気ではまったく乾かず、この辺りはコインランドリーもない。
今後のことを考えてガス乾燥機を導したのだが、これが正解だった。
夜帰って來てから回しても、朝にはふかふかに乾いている。
心海は朝一番でその中にあるふかふかに溫まった服を著るのが好きで、畳むのも積極的に手伝ってくれる。
咲月さんと一緒に朝食の茶碗を片付けていると、心海がとことこやってきた。
「パパーー、今日の雨すっごいから、たきに行こう!」
「ああ、確かに。今日はすっごい滝になってるかもしれないな」
「すっごいのになってるよ、たぶん、ジャバアアアアほにゃあああってなるよ!」
心海は踴りながら目を輝かせた。
たきというのは滝だ。しかし當然この辺りに滝などない。
でもし離れた道の所に、山の中の水を効率的に流すため……? もしくは雨水を一カ所にあつめて川に流すため……? にパイプのようなものが設置してある。
それがなぜかわりと高臺に設置してあり大雨がふるとそこから滝のように水が落ちてくるのだ。
一度通り掛かった時から心海はあれが大好きで、毎回傘を持って滝の下に立ち楽しんでいる。
傘にドバババと水が當たるのが良いようだ。
個人的にはその心海を畫で撮影するのが楽しいので、付き合うのは全くイヤではない。
心海は咲月さんのほうに行き、
「ママ、大きなの、かってくれた?」
「買っといたよ」
「お絵かきしよう、お絵かきしてかわいくして、たきするの!」
「じゃあ描こうか! シールも100均で買ったよ~~!」
「えっ、みせてみせて、ママ見せて!」
「待ってて~~!」
心海と咲月さんは部屋の奧からビニール傘とシール、そして油ペンを取りだした。
ビニール傘を開くとかなり大きい。それを見て心海は目を輝かせて油ペンを持った。
傘は子ども用に可いものを購したのだが、心海はなぜかそれを使わず、俺が仕事用に使っているビニール傘を使いたがった。
咲月さんは「すんごくわかります。私も大好きだったんです、ビニール傘。ここに雨が當たるの見てると楽しいんですよね」と微笑んだ。
そして自分が子どもの頃したいと言っても許されなかったから……とビニール傘に絵を描いたのだ。
それを心海がものすごく気にって「もっと大きなこの傘がいいの、それにたくさんお絵かきして、たきしたいの!」と言っていた。
だから咲月さんは最大サイズのものをコンビニで買ってストックしていたのだ。
咲月さんが描いた絵を見て心海が目を輝かせる。
「ママ、キラちゃん描くの上手!」
「このキラちゃんは……雨に濡れてしまっているのだーー」
「わあああ、ここにたき當てたら、キラちゃんがヒャーーってなるのね!」
咲月さんが描いた絵は今子ども用番組で一番人気の犬のキャラクターだ。
そのキラちゃんがをブルブルと震わせている絵を描いている。
たしかにここに雨をあてたら、そういう風に見えるだろう。
咲月さんはイベントにこそ出ていないが、たまに絵を描いているようで、その筆力は衰えていない。
ふたりは楽しそうにただのビニール傘をオリジナル傘に仕上げていく。
咲月さんは昔お母さんに「子ども用に可い傘を買ってあげたんだから、それを使いなさい」と言われたのがイヤだったんですよね~と言っていた。
だから今、昔自分がしたかったことを心海としているのだろう。
20分くらいかけてふたりは傘に絵を描いてシールでデコレーションして仕上げた。
「じゃじゃーん、できた! どう? パパ、かわいい?」
「うん、すごく素敵な傘だね。じゃあこれをもって滝に行こうか。ついでに駅前でガチャガチャしてくる?」
「!! ガチャガチャする!!」
心海は室で傘をさしたままジャンプして喜んだ。大きすぎて若干危ないから早く外に出よう。
咲月さんはササッと玄関のほうにいき、心海の長靴とカッパの上下と帽子を取りだした。
心海はそれをについて外に飛び出した。俺も防水の上著を羽織り傘を摑んだ。
「じゃあちょっと散歩行ってくるね。ついでにガチャガチャ回して、お晝にうどんでも食べてドーナツでも買ってくる。15時くらいかな」
「おやつにいいですね、気をつけて!」
咲月さんに見送られて俺と心海は歩き出した。
雨は本當にすごくて傘を激しく叩くけど……心海は完全裝備だし長靴だし、なにより前を歩いている傘にたくさん絵が描いてあって可い。
傘が大きすぎて心海自が傘に包まれるようになっているのが面白い。
一度帽子なしでこの遊びをしたら、傘の骨組みの部分に髪のが絡んでしまって、痛い思いをさせた。
それから大きな傘で滝遊びをするときは帽子が必須だ。
心海は遠くに滝ポイントを見つけると「わああああ!」と歓聲をあげて走って行った。
ポイントからは今まで見た中でも一番の水量が筒から出ていた。
もうなんというか、普通に壊れた蛇口レベルだ。
それが地面に當たって大きなしぶきをあげている。
「これはすごい」
「パパ、すっごい、すっごいたきだよ」
そういって心海は傘を持って滝の下にり込んだ。
同時にドバババと水がすべて傘にあたって、周りに飛び散り始めた。
心海は大興してぶ、
「ほおおおお、すごいいい、たのしいいい!」
「あははは! ちょっと水が跳ねすぎて何も見えないな」
「すごいよ、パパ、すっごい!! 今まででいちばんすごい!!」
心海は傘でそれをけ止めて、傘の中から水を見ている。
俺はし離れた場所でスマホを畫モードにして心海を撮影した。
撮影しているが、水量がすごすぎて正直何も見えないどころか、見ているこっちのほうが被害甚大だ。
むしろ中心地にいる心海は傘に守られているのであまり濡れず……と言いたい所だが、傘にかなり激しく雨が當たっていて、ちょっとすごい。
傘が折れないのか一瞬心配になったが、強化傘だと書いてあった気がするから大丈夫か?
心海は上だけではなく下も防水パンツを履いていて、それをINするように長靴を履いているので、むしろ全濡れても問題ない。
いやこれから駅前にいくなら……と思っているが、心海はまるでそんなこと関係なく楽しそうに傘に雨を當ててくるくる回った。
人間スクリューのようで……ちょっともうし離れないとスマホのカメラが濡れて何も撮れない。
心海は30分以上全力で滝遊びをして、やっとその場を離れた。
「すっごく、すっごく楽しかったーー! キラちゃんがうわあああってなってたよ。パパ畫とれた? みせて?」
畫を見せると心海はケラケラ笑って飛び跳ねた。
そしてゆっくりと坂道を下って駅前に行くことにした。
ここは山の上にあるので、水が坂道をものすごい勢いで下っていく。
道自がもう川のようになるので、心海は毎回激流ポイントで立ち止まり、足でそれをせき止めて……一気に流す遊びをしながら歩いた。
普段「雨がふるとこんなに歩きにくいのか」と思っていた坂道だけど、心海と一緒ならそれも遊びになる。
心海はお気にりの激流ポイントがあるらしく、毎回そこに長靴をれてピチャピチャさせて楽しんだ。
駅前のショッピングセンターに到著すると、俺はまずお著替えルームがあるトイレに向かった。
このショッピングセンターは男用のトイレにも子どもとれるブースがあって助かっている。
そこで雨をがせて、著ていても濡れてしまうズボンも履き替えさせた。
雨の日はわりと恒例になっている遊びなので、毎回流れが出來ている。
まさか雨の日がこんな遊びの日になるなんて子どもが生まれるまで知らなかった。
心海は俺の腕をクイクイと引っ張って、
「さあパパ、ガチャガチャしよう?!」
とジャンプした。このショッピングセンターはガチャガチャの森という200個以上のガチャガチャが置いてあるブースがあって、心海はここで一回だけガチャを回すのをとても楽しみにしている。
一回だけと決めているので、もう毎回ブースをくまなく回って、どれをするか味している。
咲月さんはここが出來た時に推しを見つけて當たり前のように10回ほど回しそうになったが、そんなことしたら「心海も!」となると気がついて一回だけ回してきたと聞いた。
そこから我が家は、ここに來たら一回できる! というルールが決まった。
咲月さんは後日仕事終わりにカラになるまで回したらしく、何も変わっていない。
実は俺もデザロズが主題歌を歌ったアニメのガチャがあったので、仕事帰りにカラになるまで回した。
心海には殘念ながらだ。
「んん~~~心海、やっぱりコナンくんにする!!」
「最近コナンくん好きだね。これでいいの?」
「うん、心海さいきん、すごく好きだから!」
そう言って心海は名探偵コナンのキーホルダーが出てくるガチャを選んだ。
そして嬉しそうに200円れてガチャを回し、無事にコナンくんをゲットして飛び跳ねて喜んだ。
コナンは稚園児の間でも非常に人気で、咲月さんも「面白いですよ」と一緒に配信を見始めた。
俺もたまに一緒に見るけど、この街はあまりに殺人事件が起きすぎだとおもうが、それを逆手にとった作品まであって驚いた。
心海はコナンくんのキーホルダーを手に持って俺の方を見て、
「心海ね、コナンくんがすっごく好きだから、サッカーしたいなっておもってるの」
「?!?! コナンくんが好きで、サッカーを?!」
「うん、心海もあんな風にすっごいゴールするの!」
そう言って心海は足を振り上げた。
これは……咲月さんに報告したらものすごく楽しく話を聞くだろうな。
というか、あの殺人ばかり起きているアニメを見てサッカーをしたくなるものなのか?
俺はほとんど見ていないので、容をあまり知らない。
この辺りは咲月さんのほうが強いので、
「家に帰ってママに相談してみようか」
「稚園にサッカークラブがあるんだよ。心海そこにるー!」
「そうなのか」
どうやらわりと本気でやりたいようだ。心海がサッカー?!
インドアな人生をすごしてきた俺には未知の世界だ。
稚園の話を聞きながらフードコートでお晝を食べて、ドーナツを買った。
そして外に出るともう雨はやんでいて、水たまりにりながら坂を上がった。
さあドーナツを食べながらコナンの話をしよう、ものすごく楽しみだ。
本日『オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!①』
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