《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》雙子と迷宮
夢を見た。
俺とルーとハーの三人が、俺たちの丹沢の中にいる。
小屋を建てた中腹の土地ではなく、山頂に立っている。
よく見慣れた場所なので、すぐに分かった。
俺たちはパジャマだった。
もちろん俺はニャンコ柄だ。
ちなみに雙子はネコとウサギの顔のついたもので、さっき一緒に寢た時のものだった。
「タカさん」
雙子が張している。
「よく分からんが、落ち著け。俺たちが一緒にいれば大丈夫だ」
「「うん!」」
俺は移するべきか迷った。
いざとなれば、「飛行」で移出來る。
「タカさん! なんか來る!」
ルーが言った。
俺にも気配はじられた。
強い敵意のプレッシャーがある。
敵だ。
何かが現われた。
形はよく分からない。
闇が渦巻いて、何かの存在を示していた。
雙子が俺を守るように両側に來て構えた。
《お前たち》
「「テレパシー!」」
《散々好き放題にやってくれたな》
「なんだ!」
「文句あるかー!」
雙子は怖いもの知らずだ。
《お前たちは、この山の獣を殺し過ぎた。幾ら何でもやり過ぎだ》
「うるさい!」
「勝手だろー!」
「俺は殺してないぞ?」
「「タカさん!」」
《これからお前たちに罰を與える》
「なんだとー!」
「やってみろー! ゴルァ!」
「おい、俺は……」
俺たちの周囲の闇が渦巻いた。
目の前が暗くなり、俺たちは別な場所に運ばれた。
空は赤い雲に覆われ、夕焼けの空のようだった。
幅20メートルの通路があり、両脇は高さ50メートルの壁がそそり立っている。
壁はらかは表面で、コンクリートとは違うものだった。
地面は土だ。
薄っすらと砂が乗っている。
「「タカさーん」」
雙子が俺に抱き著いている。
「おい、これってお前らのせいだよな?」
「えー」
「そうなのかなー」
「……」
まあ、俺たちは一心同だと言っているのは俺だ。
仕方がねぇ。
留まっていても埒が明かないので、一緒に進んだ。
道は何度も曲がっており、分岐も多かった。
分岐のたびに雙子に選ばせた。
「タカさん! なんかいるよ!」
「ちょっとおっきいよ!」
雙子ならではの探知能力だ。
波をじている。
「赤黒だね」
「怒ってるね」
角を曲がると、長5メートル以上あり、人間に似たに巨大な牛の首が乗っていた。
頭のが肩から二の腕、と背中まで拡がっている。
走った巨大な目は激しい憎悪を湛えて俺たちを見ている。
「なんだおまえー!」
「やんのかー!」
雙子が怒鳴っている。
「おい、俺たちは突然ここへ連れられて來たんだ。戦うつもりは無いんだけどな。まずは話し合おうじゃないか」
怪を宥めようとした。
「モォー!」
「……」
「タカさん?」
「やれ」
「「うん!」」
話ができねぇんじゃしょうがねぇ。
雙子が「槍雷」でグサグサにして殺した。
「ミノタウロスか……」
この壁に挾まれている曲がっている道と牛頭の怪。
「ラビリンスか」
雙子に、ミノタウロスとラビリンスの話をした。
怪ミノタウロスを閉じ込めた迷宮を模していると言った。
「じゃあ、斃したからもう終わり?」
「終わってねぇよなぁ」
「「うーん」」
取り敢えずもうし歩こうということになった。
「タカさん、また!」
「おう」
今度は俺が戦った。
「螺旋花」でを散させた。
しばらく歩き、時々ミノタウロスを殺して行った。
「タカさーん」
「おう」
「お腹空いたー」
「あ?」
俺もちょっと空腹はある。
で4時間ほど彷徨っている。
「アレ、食べられるかなー」
「アレって、ミノタウロスかよ!」
「うん」
「やめた方が良くないか?」
「うーん、でもお腹空いたなー」
「まあ、そうだけどよ」
次のミノタウロスを斃した。
俺たちには全然脅威ではない。
ただ、飲み食いが出來ないのは不味い。
まだ大丈夫だが、數日も経てば、水も飲まないのは生命的に危険だ。
サバイバル的にはまだ余裕はある。
俺は取り敢えずはまだ喰うなと言った。
またミノタウロスを斃し、俺は雙子に休んでいるように言った。
一人で先を調べに行った。
戻るといい匂いがする。
「おい!」
雙子がミノタウロスのを切り取って「電子レンジ」で焼いて食べていた。
「食べるなって言っただろう」
「ごめんなさーい、お腹空いちゃって我慢できなくてー」
「しょうがねぇな」
それだけにしろと言って、雙子が焼いたを全部食べた。
「どんな味だった?」
「うーん、牛味?」
「そっか」
まあ、口にれてしまったものは仕方が無い。
萬一の場合は、俺が絶対に何とかする。
雙子の様子を見たかったので、休憩にした。
壁に背を預け、二人が俺の両肩に寄り掛かる。
「し寢ろよ」
「「うん」」
「絶対に俺が何とかするからな」
「「うん」」
二人がスヤスヤと寢始めた。
これをどうやって終わらせるか。
ミノタウロスを斃しても終わらない。
ならば、この迷宮を抜けなければならないのだろう。
しかし、先の見通せないこの迷宮をどのように抜けるか。
一般の迷路の解き方は分かっている。
だが、迷宮の規模によっては俺たちの力がもたない。
1時間ほどで、二人は起きた。
俺は眠らずに警戒を続けていた。
幸いにもミノタウロスはその場に留まっているようで、移はしていないようだった。
それでも油斷は出來ない。
「おい、に異常はないか?」
「「うん!」」
まだ空腹はあるかもしれないが、それは今後の見通しだ。
俺は、恐らくこの迷宮を抜けなければならないという推測を話した。
「そうだね」
「でも、どうする?」
「飛ぶ」
「「ああ!」」
三人で「飛行」した。
上昇すると、迷宮の全貌が見えた。
相當巨大で、數百キロはありそうだった。
あのまま歩いていてはダメだっただろう。
俺たちは周辺まで飛び、その外側が闇に包まれているのを確認した。
迷宮の終點を探した。
外周を回っていると、大きな門を見つけた。
その前に、一際巨大なミノタウロスがいた。
俺たちは念のために二つ手前の曲がり角に降り、門に向かった。
「お、お前たち!」
「お前は喋れんのか?」
「何故、こんなに早く來た!」
「東大卒だからだぁ!」
三人でボコボコにした。
一応殺すなと言っておいた。
「もう、勘弁してくれ」
「てめぇ! 俺たちをいきなりこんな場所に放り込みやがって!」
「元に戻す! だから殺さないでくれ!」
「すぐに戻せ!」
巨大な門が開かれ、俺たちは前に進んだ。
元の山中に戻った。
傷だらけになった巨大ミノタウロスがいた。
「てめぇは一何者だ?」
「この山一帯の主です」
「あんだ?」
「あなたがたを、すこし怖い目に遭わせようかと」
「死ぬとこだったじゃねぇか!」
「お前! どうしてくれんだー!」
「焼いて喰うぞー!」
主だと言う巨大ミノタウロスが泣いて謝った。
「でも、このままだと山の獣がいなくなってしまいます」
「それがどうしたー!」
「がんばってセックスしろー!」
「まあ、俺たちもちょっと喰い過ぎたかな」
「いや、ちょっとって量じゃ……」
「なんだおまえー!」
「文句あんのかー!」
俺は雙子を制し、今後はし控えると言った。
「だけどよ、お前の納得するものかどうかは知らん。文句があるなら戦爭だ」
「ヒィッ!」
「どうしたんだよ」
「今、「地の王」から教えて頂きました! あなたは「神獣の王」だったのですね?」
「あ?」
「申し訳ありませんでした!」
「お、おう……」
何だかよく分からんが、終わったらしい。
気が付くと、家のベッドに寢ていた。
両側で雙子が俺を見ていた。
「ミノタウロスのね」
「迷宮にいたの」
「そうだったな」
三人で同じ夢を見ていたことを確認した。
「丹沢で、ちょっと控えるね」
「そうだな」
「でも、全滅させてもいいんだよね?」
「まあ、でもちょっと優しくしてやれよ」
「「うん」」
そういうことになった。
「おい」
「なーに?」
「お前ら、ステーキ臭いな」
「「ギャハハハハハハ!」」
雙子がうがいをして戻って來た。
また三人で寢た。
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