《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》オリンピアード決勝戦
「アシア」
ビジョンとなったヘスティアが五番機の足元にいるアシアに呼びかけ、駆け寄った。
コウが心驚きを隠せない。ヘスティアはいつもの優等生の委員長姿ではなく、古代ギリシャ裝束をまとった、燃えるような赤髪のに変貌していたからだ。
爐床の神をモチーフにした存在だ。これが本來のヘスティアなのだろう。
「ようやく私の知っているヘスティアになったわね」
「宣誓の用意があるの。私の手を取って一緒に宣誓して」
「何をするつもり?」
「あの野蠻人が聖櫃を解放できないから、もういっそ勝負にしてしまおうかなと」
「勝負だと?」
アレクサンドロスⅠが怪訝そうに眉をひそめる。現狀では聖櫃解放の目処は立っていないが、ブリタニオンが窮地であるというのに悠長なことを言っている。
「この場所こそは【ブリタニオン】。ヘスティアが管理する聖域で、あなたの完全限定名はアレクサンドロスⅠ。今はあなたが挑戦者です。オリンピアードでも開催したほうが納得するでしょう?」
「このままだと埒があかない。挑発か何かはわからんが、乗ろうではないか」
アナザーレベル・シルエットに搭乗しているアレクサンドロスⅠにとって、あらゆる罠は些事に過ぎない。
「先にいっておくけど、同著一位の予選落ちだという歴史を忘れずに」
「同著一位もまた事実であろう」
アレクサンドロスⅠは気にもしない。このまま見えない封印と戦うより競技とやらに參加したほうがましだ。
「アシア。私の手を取って」
「わかった」
二人は手を取り合い、見つめ合う。同時に頷いた。髪ものも違うが、こうしてみると姉妹といっていいほど雰囲気はそっくりだ。
つないだ両手を天に掲げる。
『星アシア全土に布告する。これより行うは地下闘技場決勝改めオリンピアード。真の決勝戦なり。我が名超AIヘスティアの名によって開催する』
『星アシアの住民すべてに告ぐ。この戦いの承認は星管理超AIアシアなり』
二人は聲を合わせ、高らかに宣言した。
『これより二時間後、オリンピアード決勝戦を開始する。星アシア全土は休戦(エケチェイリア)を認める。刮目せよ!』
ヘスティアが口上を述べる。
『アンティーク・シルエットよりも遙かに古い、神話の如き兵アナザーレベル・シルエットが到來した。邪悪にして困難であるからこそ、オリンピアードの決勝戦に相応しい』
アシアが言葉を継ぐ。
『現世代シルエットが星開拓時代の高能シルエットに対し、どれほど迫り、または陵駕し得るのか。星アシアに來(き)たる転移者の神髄がここに』
放送は終了し、靜寂が訪れた。
コウたち三人は言葉もない。何が起きているか理解できなかった。
「二時間後だと? 時間稼ぎか」
「時間を稼いでも無理でしょ。カラヌスを倒す手段もない。あなたたちの宇宙要塞アルゴスはどうするの? 変な邪推はしないで」
「その競技とやらも不明ではないか。シルエット戦闘でいいだろう。パンクラチオン、ピュグメーやパレに類するものだ」
古代オリンピックでの戦闘競技分類は細かい。
ピュグメーは拳を意味するボクシング、パレは古代レスリングのことで最も危険な競技の一つ。パンクラチオンは全ての力を意味する総合格闘技だった。
「アナザーレベル・シルエットに搭乗しているから余裕よね。競技が立しなきゃ賭けになんないでしょ?」
「あなた、この後に及んで賭けにするのね……」
若干呆れ気味のアシア。
「手のまではばらしたくないけど、あなたは競技參加者だから教えてあげます。事には準備ってものがあります。聖櫃を復號するために何か手はないか、考えている。様々な方法を演算中だったのよ。解放するチャンスを増やしてあげるんだから謝しなさいよね。勝者には聖櫃、その中を。無理なら聖櫃を。ここで延々毆り合ってるよりましでしょ?」
「ふん。最初から渡せばよかろうに」
「問答無用で【ブリタニオン】を宇宙に引き上げたのは誰かしらね。それにあなただって中を知らなかったじゃない」
アレクサンドロスⅠは痛い所を突かれ、無言になった。
「そうそう。アルゴスとの通信は不可能だと思いますよ」
「なんだと? 弱った貴様如きの処理能力では不可能なはず。――そうか。アシアか!」
ヘスティアは橫目でアシアを見た。素知らぬ顔のアシア。
「ばれているか。私ではなくアシアの仕業よ」
「仕業って酷い言い草ね」
アシアが苦笑した。
「通信が遮斷されている気配はないが、確かに応答がない。ジャミングですらない手段を用いたか」
「どんな手を使ったかは教えてあげない」
こういうとき、アシアは悪戯っぽく笑うのだが、今は冷ややかだ。見下ろすような冷たい眼差しをバルバロイに送っている。
「ところでヘスティア。いつまで手を握っているの?」
ずっと手を握っている二人は仲良し姉妹そのものだ。
「あ!」
場違いな聲を上げてようやく手を離すヘスティア。
「數萬年ぶりだからねー。生き別れた妹みたいな」
「私のほうがお姉さんだけど…… 妹でいっか」
場違いな會話をするアシアとヘスティアはコウが知る二人だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ヘルメス様。かの開拓時代――星開拓時代のシルエットとはいかなるものです?」
渋面のヴァーシャがヘルメスに問いかけた。ボガティーリは母艦に帰投している。
ヴァーシャはただただ悔しいのだ。
バルドさえあの場にいるというのに、自分がいないという事実に。
「悔しい気持ちはわかるが抑えてくれ友よ。ワーカーこそはプロメテウスが設計した、開拓時代に生まれた乗りであることは知っているだろう? アナザーレベル・シルエットはプロメテウス自ら設計し、オリンポス十二神に獻上した戦闘用であり、その量産型たち。戦闘力は最上位のアンティーク・シルエットを遙かに上回る。あの三人の死は確実だ」
「それほどまでに?」
「裝甲材からして何もかも違う。一機で星を消滅させることも容易い。現行シルエットは燃費を捨てればある意味アンティーク・シルエットすら上回るものがある。しかし星開拓時代のシルエットは違う。全てが別次元。ゆえにアナザーレベル・シルエットだよ」
ヴァーシャの表がさらに険しくなる。そんな彼をみてヘルメスはあえて神々のとなる予定だった事実を話さなかった。ヴァーシャの格を考えると逆効果になりかねないからだ。
「そんな代相手に競技? 何を考えているんだ。ヘスティアは。アシアもだ」
I908要塞エリアに蔵しておいた制中樞が絡んでいることは容易に想像できる。
バルバロイと組んで星アシア攻略のために用意したもので、完はしていなかったものだ。
「彼らは星エウロパの住人。ぼくが預かった寶を取り返しにきたのだろうが…… オリンピアードか」
バルバロイが痺れを切らして奪還にくとはヘルメスにとっても予想外だった。
そのせいで殺されかけてはたまったものではない。あとできつく叱責する必要があるだろう。
「勝算が0ならヘスティアはそんな賭けはしないでしょう。――こんな狀況だというのに、ヘスティアのブックメーカーシステムもいていますね。ならば私はアシアの騎士に賭けましょう」
アシアの騎士コウはおそらく星開拓時代のシルエットについても知識があったに違いない。
それほどまでに差がある相手ならば、あのアシアが共同で宣言などしないだろう。
「今回に限っては見送ったほうがいいと思うよ」
「それでもですよ」
ヘルメスが苦笑する。ヴァーシャはコウとアシアも信頼しているのだ。
「ところでヘルメス様。アルゴナウタイにはどのように説明しましょう?」
おそるおそるアルベルトが口を挾む。剣呑な空気をじたからだ。
「面倒だな。I908要塞エリアを制圧した勢力によるアトラクションショーとでも説明しておいてくれ。――事実だから仕方ないだろう」
そんな理由でストーンズの連中が納得するのかという表を浮かべるアルベルトに対し、半神半人の意見などはどうでもよいと首を橫に振るヘルメスだった。
「まあ実際そうなのでしょうな。それでは私は指示してまいります。取れるデータは取らないといけませんなあ」
「そうだな。頼んだよアルベルト。ヴァーシャもだ」
「試合開始後、ありとあらゆるデータを集めます」
ラニウス、そしてボガティーリ・コロヴァトが星開拓時代の兵と戦うのだ。
「バルドよ。いかなる失態も許されんぞ。貴様は私の代理なのだ」
思わず本音がれるヴァーシャだった。
新年あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします!
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
ようやく辿り著きました。地下闘技場の闇試合からオリンピアードへ。今章のコンセプト達です。
とはいっても普通に戦えば、勝ち目がなし。二時間時間を稼いでどんな競技にするのか。打つ手はあるのか。超AIたちの駆け引きが始まります。
次回! 新年花火としていよいよ【塔】の出番です! お待たせしました!
【死】よりは威力が低いものの、星アシアの力を利用したP。アリマとプロメテウスが設計し、アシアの暗黒面を存分に生かした逸品です。ご期待ください!
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今年も書籍版もよろしくお願いします!
オリンピアードは今後のシルエット開発に大きな影響をもたらします!! 今年も定期更新を頑張ります!! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!
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