あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

せっかく元旦なので0時更新しました！

私とアリアとネコちゃんは大型ダンジョンの攻略を続けている。

攻略自は順調……と言ってもいいかしら。

大型ダンジョンは深く潛るほど複雑になって、順路が分からない限り攻略速度は下がるはずなのだけど、逆に進行速度は上がっていた。

魔の數が実できるほどに減っている。たぶん、私たちの予想通り下層の魔が最下層へ向かっているのだと思う。

「スノー」

「……死が殘っているわね」

一瞬、自分のことを呼ばれていると気付かず、一瞬返事が遅れてしまったけど、アリアの言いたいことは理解できたわ。

ダンジョンでは魔の死は殘らない。ダンジョンが取り込んでいるとか、そんな話もあるけど、実際は他の魔が骨さえ殘さず食べているからではないかしら。

奧へ進むほどに魔の姿を見なくなり、その替わりに私たちは魔の死を見るようになった。

でも、どうして魔の死があるの？　どうして魔の死が食われずに殘されているの？　それは……

「やはり淘汰が始まっているわね」

魔知識のお復習（さら）いをしましょう。

魔は魔素を多く取り込みすぎて変異したのなれの果て。それでも元が一般のとは思えないほど変異した魔がいるのは、魔化したまま世代代を繰り返し、進化したのだと言われている。

中には古代エルフの魔法によって変異したものや、魔素の濃い妖界などの生きなんかもあるけど、それらは別にして、一般の魔は生まれつき気が荒く、他の生を襲って食らう。

魔が人間を襲うのは、數が多くて魔素を多く取り込んでいる人間を捕食するのが効率的だからと言われているけど、私は人間が確率的に〝魔石〟を持つ者が多いからだと思っている。

その推測を肯定するように、ダンジョン中に転がっている魔の死は、そのすべてが心臓辺りを貪り食われていた。

おそらくは心臓にある魔石を食らうことで、魔は自己進化しようとしているのではないかしら？

「それだと人間も魔の魔石を食べると強くなる？」

「それは無理だと思うわ。人はであって魔ではないし、魔は心臓から抜き出した死んだ魔石(・・・・・)には見向きもしないもの」

いくらなんでも悪食が過ぎるわ。まだいている心臓ごと魔石を貪り食わないと、力を取り込めないのだと思うのよね。でも……。

「……ウサギ程度の魔ならいけるかしら？」

「…………」

『ガア』

――止――

――愚――

あらあらネコちゃんに怒られてしまったわ。私たちならやりかねないと思ったのかしらね。やはり魔でないと直接取り込むのは無理そうね。

ただ、人間でもまったく取り込んでいないとは思わない。

死んだ魔の心臓から抜き出した魔石はすでに死んでいる。その違いが何か分からないけれど、魔が死ぬことでその〝何か〟が霧散して、それを倒した者が無意識に取り込んでいる可能がある。

そうでないとランク５になった人間が、グリフォンや飛竜と互角に戦える理由にならないもの。

まぁ、あくまで私の推測。日々の食事と同じで適量を摂取しないと意味がないのだと思うから。

適量を間違えたら……もしかしたら、オーガやオークはそうして人間種から魔化した変異種かもしれないわね。

――愚――

その日……たまたま遭遇した魔（うさぎ）を生きたまま解しようとして反撃をけてしまい、またネコちゃんに怒られてしまったわ。

その翌日も私たちはネコちゃんに乗ってダンジョンを駆け抜けた。

もう魔と出會うことはない。多罠があったり、迷路になっていたりと面倒にはなっていたけど、ネコちゃんの能力だけで通り抜けていった。

でも、魔と遭遇しないということは、食料も調達できないということになる。

私とアリアの【影収納(ストレージ)】にはまだ食料は余っているけど、ネコちゃんはそうはいかない。私たちは、これまで狩って殘しておいた魔のをすべてネコちゃんに渡して、豆や乾燥野菜、量の干しだけの簡素な麥粥にだいぶ飽きてきた頃、ようやくダンジョンの終わりが見えた。

「ここが最奧？」

「おそらくそうね」

長い階段を降りて、しだけ広い空間に出る。

おそらく準備のためだけの広場の先に、金屬で出來た巨大な両開き扉があった。

私もアリアも必要以上に言葉數がない。ネコちゃんも目を細めるだけで、そのがわずかに帯電するように逆立っていた。

扉の奧からじる威圧……。私たちがネコちゃんの背から降りて歩いて近づきながら、その巨大な扉をどうやって開こうかと考えたその瞬間――

ドォオンッ！！

轟音と共に扉の向こう側から何かがぶつかり、扉がこちら側に突き出すようにひしゃげる。

「「――っ」」

私たちが飛び下がると同時にひしゃげた扉が軋みながら開き、中から巨大な人型の影がその姿を現した。

長で私たちの倍以上。重量なんて何十倍あるか分からない、それは……。

「ゴブリンキング……っ！」

ゴブリン系の最上位種。ミノタウラス・マーダーに匹敵するランク６。

戦闘力３０００を超える巨のそれは、扉の暗がりから走った目で私たちをギロリと睨めつけ、一歩前に踏み出した。

だけど……。

『――グァアアアアアアアッ！！』

すでに塗れ(・・・)のゴブリンキングの腹を向こう側から貫いた黒い槍が、〝蛇〟だと気付いた瞬間、救いを求めるように私たちに手をばしたゴブリンキングの巨を、釣り上げるように易々と奧へ引き釣り込む〝何か〟がいた。

一本釣りの如く宙に舞い、引き寄せられたゴブリンキングが、巨大な複數の顎に噛み砕かれて絶命する。

「……スノー」

アリアの知識にはないのでしょう。呼ばれた私は通常の知識から思い出すのを早々に諦め、い頃から読み込んでいたレスター家の書の容を思い出す。

魔同士の淘汰の結果、元々いた人型魔から生き殘ったゴブリンが共食いの末に進化してゴブリンキングとなった。

でも、それと同時に獣系の魔も淘汰して、おそらくはダンジョンの介によって、通常生まれないはずの歪な生命が誕生してしまった。

鱗が生えた熊のようなに、様々な獣の六本の腳。

歪な形狀の黒い翼に黒い角。

長くびた蛇の尾に獅子と狼と猿のような複數の頭部。

自然に生まれるはずのない生命への冒涜……それは……。

「……キマイラ……」

【キマイラ】【種族：魔獣】【魔獣種ランク７】

【魔力値：307/350】【力値：1034/1180】

【総合戦闘力：7306】

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！』

最奧の魔はキマイラです。

イメージとしては夢枕獏先生のキマイラ・吼みたいなじです。

本書書籍の5巻も無事に発売されました。まだ本屋さんに殘っていたら手に取ってみてくださいね。

悪魔公の書籍2巻が2/2 コミカライズ１巻が1/6に発売されます！

こちらもよろしくお願いします。