《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第65話 本心
「大丈夫か、ソフィア?」
目を開けて飛び込んできたアランの姿に、ソフィアの淺い呼吸が治まっていく。
「ア……ラン、様……」
ひとりでに聲がれる。
それからゆっくりと上半を起こす。
真っ暗闇の中に差し込んだ一筋のを摑むかのように、ソフィアは手をばした。
その小さな手を、アランが両手で包み込む。
大きくて溫かくて、固いをじてソフィアは安堵の息をらした。
「すまない、起こしてしまって。隨分と魘されていたようだったから、つい聲をかけてしまった」
アランの言葉に、ソフィアはふるふると首を橫に揺らす。
「良かった……です、怖い夢を、見てて……暗くて、怖くて、それで……」
言いたい事がうまくまとまらない。
夢の中でじた恐怖が、哀傷が、おぼつかない言葉となってぽろぽろと落ちる。
「大丈夫だ」
アランがを寄せてくる。
それから頭に優しい。
まるで大事な寶を扱うかのように、アランはゆっくりとソフィアの頭をでた。
何度も、何度も。
恐怖に歪んでいたソフィアの表に、しずつ安心が広がっていく。
心の中で騒めいていた黒いモヤがのように引いていく。
「……落ち著いたか?」
こくりと、ソフィアは頷く。
「もう一眠りするか? であれば、退室する」
ふるふると、ソフィアは首を振る。
「し、アラン様とお話ししたいです」
「わかった」
頷くアランに、ソフィアは目を伏せて言う。
「我儘を言ってしまって、ごめんなさい……」
「何も謝ることはない……本當に、謝ることはないんだ」
念を押すように言うアランの拳に、力が籠る。
「むしろ俺の方が、ソフィアに謝らなければならない」
「何を、でしょうか?」
「醫者によると、今回、ソフィアが倒れたのは過労だそうだ」
「過労……」
「ああ。環境が変わった上に、連日の霊魔法の練習でずっと気を張っていたのだろう。今日、課題を一つクリアして張が緩んで、一気に疲労が來たという見立てだった」
「そう、だったのですね……」
自分のの調子に対しての認識が淺いのか、ソフィアはあまりピンと來てなさそうだった。
「ソフィアが日に日に疲弊していく事に気づかず、隨分と無理をさせてしまった。本當に、すまないと思って」
「いいえ」
アランが言い終わる前に、ソフィアが否定の言葉を口にする。
また、ソフィアは首を振る。
「私が、悪いのです」
震える聲で、続ける。
「薄々、の調子が悪いと言う事は気づいていました……ですが、言い出せなかった。皆さんに迷をかけたくない、ご心配をおかけしたくない……そう思って、我慢してしまって、言い出せなくて……だから、私が」
「君は悪くない」
今度はアランが、ソフィアの言葉を遮った。
「もう一度言う、君は悪くない。悪いのは……君に、“全部自分が悪い”と思い込ませた周りの者たちだ」
アランの強い語調に、ソフィアは息を呑む。
強い意志を燈した二つの瞳から目を逸らせなくなる。
「何度でも言う、君は悪くない、悪くないんだ。だから……」
そっと、ソフィアの頬に手を添えて。
優しく、労わるような聲でアランは言う。
「そろそろ、自分の本心を肯定してあげてくれ」
その言葉は、ソフィアの凍りついた心にすとんと落ちた。
どこか自覚はありながらも、大丈夫、大丈夫だって言い聞かせて、見えないように蓋をしていた本心。
辛い。
泣きたい。
もう嫌だ。
そんな自分の本心に、アランがれてくれたような気がして。
もう我慢しなくていいって、言ってくれたような気がして。
「あ、れ……」
じわりと、視界が滲む。
アランの整った顔立ちが、ぼんやりと歪む。
目から熱い雫が滲み出した事に、ソフィアは遅れて気づいた。
「お、おかしいですね……なんで、でしょう……」
頬を伝う涙を慌てて拭う。
だけど、拭えど拭えど涙がぽろぽろと溢れ出てしまう。
「ご、ごめんなさい……すぐ止め……」
「止めないでいい」
アランが、ソフィアの頭をに抱き寄せる。
ぽす、と額にれたアランのから優しい溫もりをじる。
「それが君の本心なら、素直に従ってくれ」
「ほん、しん……」
「ずっと辛かったのだろう?」
こくりと、ソフィアは小さく頷く。
首を橫に振ることはもう、できなかった。
「もう、我慢しなくていい」
頭上からかけられる優しい言葉の數々。
「泣きたければ、泣けばいい」
その言葉が決定打だった。
ソフィアの本心を固く閉ざしていた氷の扉が、決壊する。
……ぽたり。
布団にひとつ、シミが出來る。
ぽたり、ぽたり、ぽたりと、何粒も。
「う、あ……ぁ……」
ソフィアの両腕が、アランの服を摑む。
「……うぅ……あぁあ……」
頭が真っ白になる。
がぐっちゃぐちゃになってまとまらない。
それからソフィアは、聲を上げて泣いた。
フェルミの実家にいた頃の、さっき悪夢で見た家族からけてきた仕打ちの記憶が浮かんでは消え浮かんでは消えていく。
期待されて育った期から一転、魔力判定ゼロを叩き出してから訪れた無能と蔑まれげられ続けた苦痛の日々。
辛かった、しんどかった、泣きたかった。
でもそんな本心を口にしたってどうせ無駄だと、ずっと心の奧底に押し込めていた。
ソフィア自が自らに課した抑圧にアランは気づいてくれて、我慢をしなくていいと、泣きたければ泣いていいと言ってくれた。
耐えられるわけが、なかった。
ソフィアは泣いた。
大聲で、息を詰まらせたり、しゃくりをあげたりして。
アランのに抱かれて、赤ん坊のように泣きじゃくった。
數えきれないほどのが押し寄せてきて止まらなかった。
止めることなんて不可能だった。
十年分の悲しみを、辛さを、洗い流すかのように。
ソフィアはいつまでも、いつまでも泣き続けた。
そんなソフィアをずっと、アランは抱き締め続けてくれた。
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