《【書籍化&コミカライズ】創魔法の再現者 ~『魔法が使えない』と実家を追放された天才年、魔の弟子となり正しい方法で全ての魔法を極めます。貴方の魔法は、こうやって使うんですよ?~》139話 はじまり

クロノの魔力の高まり。それに合わせて、クロノの傍らに置かれた古代魔道──エスティアマグナが呼応するように起する。

その雰囲気、それが放つ魔力はかつて大司教ヨハンがスカルドロギアを使っていた時とは別。あれは所詮魔道の力の一部を一方的に借りけていただけだったが、今回のそれは違う。この魔道の本來の使用資格を持った使い手が一週間をかけて十全に魔力を馴染ませた結果、魔道が持つ力と、魔道の正しい力が余すところなく解放される。

天球儀が蒼くり輝き、周囲を回るが更に回転を増し。

側からのが見るもの全ての目を焼くほどに煌々と輝き切って──その果てに。

世界が、揺れた。

ここで一つ、本的な謎について解説しよう。

──そもそも、魔道とは何か?

それを説明するためには、更に本的なところから考えてみるのが分かりやすいだろう。すなわち──そもそも『道』とは何か、というところから考察する。

の意義、存在する意味。

それに関してはいくつかの説こそあるだろうが、模範解答に近い一つとして……『人間単獨ではできないことを行う』ために道は存在すると言えるだろう。

人間のだけではを切り分けることが出來ないから刃が生まれ、効率よく耕すことができないから農耕が生まれた。『道』という概念が生まれた本からして、人間の能力を補うものとして発生、発展してきたと言える。

魔道でも、それは例外ではない。

は、人間単獨ではできないことを行うためのもの。

同様、魔道は──人間単獨(・・・・)では(・・)できない(・・・・)魔法を(・・・)行う(・・)ため(・・)のものである。

それこそが、『魔道』と呼ばれるものの大元。

古代魔道(アーティファクト)の中でも更に一握り。エスティアマグナをはじめとした七つの特級古代魔道。それが、統魔法の発端とほぼ同時期に生まれた魔道──読んで字のごとく、魔法を(・・・)使う(・・)ための(・・・)道(・・)である。

では、以上を踏まえた上で次の疑問。

それほどの古代魔道(アーティファクト)を用いて扱おうとした『魔法』とは何か?

それについて言及するには、これも更に遡って──『統魔法』というものが発生した瞬間にまで話を戻す必要がある。

統魔法とは何か。

これは、この國に蔓延る常識とエルメスたちが抱く認識に齟齬がある部分だろう。

この國に蔓延る常識は──『統魔法は、神から賜った選ばれしものの魔法である』。

エルメスたちの認識は──『統魔法は、人が叡智を積み重ねて作った技である』。

これは、果たしてどちらが正しいのか。今、結論を述べよう。

──どちらも(・・・・)間違い(・・・)ではない(・・・・)、である。

より正確に言うのであれば……基本的にはエルメスたちの認識で正しいが、一部この國の常識の発端となったものも存在する、と言ったところか。

何故なら、そもそも考えてみてしい。

魔法。無から有を生み出し、何の労苦もなく炎や氷を扱い、極めれば災害に等しい力までってみせる。

そんな技を──何の原點も參考もなしにたかが人間が創り出せるだろうか?

答えは、否。

それこそが、魔道が生まれた理由であり。これまで、一部の人間を除いて誰も辿り著けていなかった真実。

存在、したのだ。

人が創り上げ、に埋め込むという形で継承した統魔法とは別口。それらの原點であり、創り上げる上での參考となった。

──この世界に(・・・・・)最初から(・・・・)存在(・・)していた(・・・・)魔法(・・)が。

それらは、統魔法と比べてもあまりに強大で絶大で、得たとしても人ので扱うには絶的なまでにあらゆるものが足りなさすぎて。

けれど、その力に魅せられたものたちにとっては、その程度で到底その力を我がにすることを諦められなくて。

だからこそ、創り上げた。

魔法を得るだけでは足りない。に埋め込む形で継承するだけでもまだ足りない。

であれば──統という側に継承するのではなく外付けの継承。得た魔法を分割し、その一部を『』ではなく『道』に埋め込むことによって新たな継承手段とした。

それが、『魔道』と呼ばれるものの発端。

今でこそ形を変えて伝わった影響で『魔法の効果を底上げする』程度のものに留まっているものが大半だが、そもそもの目的は『人の一つだけでは扱いきれない魔法を扱う』ためのもの。

その原點から発し創られた七つの古代魔道(アーティファクト)だけは、本來の目的を失わず今なおこの世界のどこかで正しき扱い手に渡ることを待ちわびている。

そうして、今。

はるか昔の彼らがんだ通りに、古代魔道(アーティファクト)の一つが該當する魔法を統によりけ継いだ人間の手に渡り。

人のに宿った魔法と天球の裡に閉じ込めた魔法。その二つが一切の齟齬なく噛み合い。

──一つの神話を、顕現する。

「【六は點鐘(てんしょう) 贖罪と世 鐘を鳴らそう 鐘を鳴らそう】」

朗々と、粛々と。

高らかに凪いだ聲で、クロノが詠唱を紡ぎ上げる。

合わせて量が限界に達した天球が重い金屬音と共にから割れ、その中にあった多くの魔法陣、文字の羅列が解き放たれ。在るべき場所に収まるかのように、全てが何の迷いもなくクロノの元に集っていく。

「【詩を歌おう 雨を拭おう 全てを無謬に整えた 世界はひどくつまらない】」

ラプラスが、高揚と皮をその表に滲ませて。

ユルゲンが、淡々とした中にも畏怖を宿した表で。

オルテシアが、どこか虛な狂気のを宿した瞳で。

三者三様に、その景を見守る。

「【おおいなるもの すばらしきもの つよきもの かがやけるもの

優劣(くだり)をつくろう 影(かげり)をそう 始原の泥に 無垢のを】」

『その魔法』を発現する條件は、大きく分けて四つ。

一つ目が、まず大前提である該當する魔法を統魔法としてけ継ぐこと。

二つ目が、け継いだ者の中でも更に抜きん出た素質を持ち、にある魔法を理解して研鑽を積み重ね、一定の領域まで辿り著くこと。

これが足りていないと、『その魔法』でも他の統魔法と同じく強力ではあるが然程の差がない、ある種の素樸な形に落ち著いてしまう。既にエルメスたちが見た例としては、サラの(・・・)二つ目の(・・・・)統魔法(・・・・)がそれに當たる。

「【何者にでもなるが良い 壊れるものを識ると良い そんな星こそ しいから】」

それをクリアした上で、三つ目。研鑽の果てに、に宿す魔法の全てを扱えるようになること──すなわち、魔銘解放(リベラシオン)を習得すること。

そして四つ目。該當する古代魔道(アーティファクト)を手にれ、その扱い方を理解した上でに馴染ませること。

に宿す魔法の極限だけでは足りず、外から得る魔法も極限まで活用してようやく行使することが葉う。それほどの魔法であるが故に、これまで王國の歴史を遡っても『それ』を完全再現できたものは皆無。長い歴史の果てに伝承すら途切れ幻想とり果てた、まさしく伽話の魔法でしかなかった。

──それが、今。幻想が現実にり、伽話が世界に侵食する。

「【全てを釜に 爐融かし鐘に 子守唄を鳴らします 是こそ世界と吼えなさい】」

其は、統魔法よりも更に一つ上の次元に存在する魔法。

教會の信仰の拠。正真正銘の、神と呼ばれる次元の存在が生み出して遣わした魔法。

文字通りの、世界を創った魔法が。

「【□□□□ □□□□□ □□□□□ □□□□】」

この世の生には聞き取ることすらできず、故に世界からその響きを隠す星の詠で締めくくったのち。

「──魔銘解放(リベラシオン)」

統魔法ではあり得ない、七階の詠唱の果て。

その魔法が今、日の目を見る。

「第六創世魔法(・・・・・・)──『□□□□□(アルス・マグナ)』」

斯くして、創世(はじまり)の魔法が解き放たれ。

──國の終わりが、始まった。

ようやく、本作の幹に関わるを一つ開示できました。

これからどんどんこれまでの謎を解決していくので、決戦の流れともども是非この先も楽しんでいただけると!

次回もお楽しみに!

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