《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第85部分 古の大英雄カノン

いよいよ明日、書籍第一巻発売です!!

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そ・し・て!

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翌日夕方。

僕はナスターシャの背に乗って北へ向かっていた。隣では、エンピナ様がドラゴンの頭蓋骨に乗って飛んでいる。

僕とマリエルとカエデはナスターシャに乗って先にミムラスの街へ向かい、他の村の仲間は走って(と言っても馬車より遙かに早いが)移し後で合流する予定だ。

そして、エンピナ様もドラゴンの頭蓋骨に乗って僕たちの隣を飛行している。

「メルキス様、私疲れましたぁ~。もう飛べませーん!」

と、ナスターシャが訴える。

「よし、近くに街があるから今日はそこに泊まろう」

僕たちは著陸して、街にる。

易が盛んなようで、大通りは様々な店が立ち並び、活気に満ちていた。王都程ではないが、かなり栄えている街だ。

とりわけ目を引くのはフリーマーケット。

プロではなく、個人が自分の売りたい所持品を持ってきて売れる市場だ。

商店とは一風変わった品が並び、獨特の雰囲気がある。店主との渉次第で値切りが立するのも楽しみの1つだ。

「メルキス様、見ていってもいいですかぁ?」

「ああ。ナスターシャは今日頑張ってくれたし、お禮に何か1つ買ってあげるよ」

「本當ですか!? ありがとうございますぅ~!」

ナスターシャが楽しそうに並んだ品を見て回っている。

「ほう。人の都市に來るのは久しいが、最近はこんな形態の市場があるのか。面白いではないか」

と、世俗に疎いエンピナ様もフリーマーケットに興味津々のようだ。

各々、興味がある店を見て回っている。僕も剣を扱っている冒険者向けの店を幾つか覗いていきたい。

店舗には出回らない中古の名剣が驚くような値段で置いてあることもあるので、フリーマーケットは楽しいのだ。

「メルキス様、私これがしいですぅ~」

ナスターシャが僕を呼ぶ。見ていたのは、アクセサリー類に骨董品などを雑多に扱っている雑多なお店だった。

恐らく、家の蔵から出てきたものを整理して、高く売れそうなは専門店に売って、殘りをフリーマーケットで出しているのだろう。

ざっとみたところ、あまり高価そうなものは置いていない。値段は高くて數千ゴールド程度だ。

そして、ナスターシャがしいと指さしているのは指だ。

ダイヤのようなものが埋め込まれているが、この値段で売られているということはきっとガラス製の模造ダイヤだろう。そう思っていたのだが……

(メルキス様、これ本のダイヤモンドですよ!)

とナスターシャが耳打ちする。

(本のダイヤモンドを見分けられるのか?)

(はい! 私、寶石収集が好きなのでこの程度の區別は簡単につきます)

そういえば、ドラゴンには金銀財寶を収集する癖がある個もいるらしい。

あまりそう言った面を見たことがなかったが、ナスターシャも金銀財寶収集を趣味にしているドラゴンだったようだ。

意外な一面を見たな。

「おねえちゃん、その指しいのかい? 何かもう一つ買ってくれたら、1割引にするけどどうだい?」

と、店主の中年渉を持ち掛けてくる。

「そうですか。では、折角ですので僕も何か買いましょう」

と思って商品を眺めるのだが……。

古著。カーペット。よくわからない模様のったお皿。アクセサリー。特にほしいと思えるものがない。

マリエルに似合いそうなアクセサリーがあれば買おうかと思ったが、どれもピンと來ない。

……その時、端に置いてある不思議なモノを見つけた。

この店で売っている古著は、木製の像に著せている。よく見ると、どうやら木像自も売りのようだ。

臺座には“大英雄カノン・ガットショット”と刻まれている。

――大英雄カノンと言えば、とても有名な存在だ。

300年前の魔族と人類の戦いで、活躍したのは勇者だけではない。

數々の英雄が、魔族と戦い人類の勝利に貢獻した。

大賢者エンピナ様もそのの1人である。

そしてカノンといえば、1人で大陸中を渡り歩いて魔族を倒し、多くの國を救った英雄である。

背の高い絶世のであり、近接戦闘においては圧倒的な強さを誇ったという。

だが。

大英雄カノンの行は、場所によってまるで一貫がない。

ある街には、街を襲っていた魔族を倒しても一泊の宿と食事しか求めない謙虛な英雄と語り継がれている。

しかし別の街では、助けたお禮に街の財産の半分を要求する大変強な人という記録が殘っている。

それに、姿もまちまちだ。

大英雄カノンは、他の英雄と比べて圧倒的に大陸中に像が多く建てられている。

しかし、『背が高くて髪が燃えるように赤い絶世の』という點は共通しているのだが、どれも顔つき等がバラバラなのだ。どころか、像によって槍を持っていたり剣を持っていたりと武すらまちまちである。

そのため、

『大英雄カノンは実在せず、人々が魔族との戦いの中希を求めて作り上げた架空の英雄』

という説が有力だ。

きっと各地で魔族を倒した軍隊やレジスタンスの活躍が、大英雄カノンの活躍として語り継がれているのだろう。

僕も小さい頃は大英雄カノンにあこがれていたし、実在しないと知ったときはショックだった。

……という訳で改めてフリーマーケットに置かれている木像を見てみる。

「これは……偽でしょうねぇ」

「そうよねぇ」

と、店主の中年さんも同意してくれる。

像は、力強く拳を點に突き上げたポーズのだ。

特に背が高いわけでもなく、顔立ちはとても整っているが絶世のというほどでもない。

大英雄カノンの設定を無視した像である。しかし造り自はとても丁寧で、今にもき出しそうな迫力がある。

客もみんなニセモノだと思って買わないのだろう。(そもそも架空の英雄の像にニセモノも本も無いのだが)

元々は街の宿に一泊出來るほどの値段が値札に書かれていたのだが、何度も二重線で消されて更新されて、最終的に安めの晝食代程度の値段になっている。

掛けられている古著の方が倍以上の値段設定というありさまだ。

……あまりに、不憫だ。

実在しなかったとはいえ、英雄の像が値下げされまくった挙句古著かけ扱いというのはあんまりではなかろうか。

特に飾りたいわけではないが、せめて屋敷に持って帰ってもうしマシな扱いをしてあげたいと思う。

「では、指とセットでこの木像を下さい」

「はい、毎度あり」

僕は商品をけ取る。

「しかしお兄ちゃん、こんな像を買うなんて好きだねぇ」

好き扱いされてしまった。

「でも、私はいい像だと思いますぅ。顔つきとか、凄く良く似てますよぉ~」

「え?」

ナスターシャは今、『凄く良く似ている』と言ったのか? 架空の英雄像を?

それとも、誰かほかの知り合いとそっくりだというのだろうか?

僕がナスターシャに尋ねようとしたとき――

「ねぇナスターシャちゃん、その指なぁに?」

ドス黒いオーラを纏ったマリエルが後ろから突如現れた。

「メルキスからもらったの? 婚約者である私を差し置いて? どういうつもりか、説明してもらうよ?」

マリエルが歩くたびにズリズリと音がする。いつの間にかフリーマーケットで買ってきたらしい自分の背丈よりも長い大剣を引きずっている。

「ごごごご、ごめんなさーい!」

涙目のナスターシャが凄い勢いで逃げてしまった。

「逃がさないよ、まだ話は終わってないんだから!」

マリエルがナスターシャを追いかけようとして――。

「あ痛っ!」

転んでしまった。大剣なんか引きずったまま走ろうとするからだ。

「いてててて……」

マリエルの膝からは、うっすらとがにじんでいる。

「大丈夫か? 治癒魔法“ローヒール”」

僕は魔法でマリエルの怪我を治してやる。

「傷口から雑菌がったかもしれない。念のために消毒もしておこう。狀態異常解除魔法“ローキュアー”」

「えへへ……ありがとう、メルキス」

マリエルがはにかみながらお禮を言ってくる。

「でも、軽々しく他のの子に指なんて渡したら駄目だからね! メルキスは昔からそう言うところが甘いというか――」

その時。

“バキバキバキッ!”

何かが砕けるような音が響く。見ると、今さっき買った木像の表面が崩れていた。

どうやら、今使った狀態異常解除魔法“ローキュアー”が木像に何かしら影響を與えてしまったようだ。

“バキバキバキ”

木像の表面はどんどん崩れていく。

そして。

「ふっかぁ~つ!!」

木像の表面がはがれきって、中からが現れた。

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