《世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~》最強は準備を始める⑲

召喚したリジッドゥの幻影は、大きな亀のような見た目をしたドラゴンだった。

キヨシの言葉をかりるなら「リアルバージョンガ〇ラとゴ〇ラが混ざった見た目」らしい。

確かにゴジ〇の背びれのような棘が甲羅を覆いつくしているし、甲羅がある時點で亀なので……見た目はガメ〇で間違いないのだが、釈然としない。

リジッドゥの攻撃は予想に反して地震ではなく地割れの方で……。

ガラガラと足元の地面が割れていき、崩れる様は召喚した私ですら生きた心地がしなかった。

「これは酷い」と言ったのは源次だ。同意するように頷いている他のメンバーを他所に、私はホクホクとドロップを眺める。

スペースマーマンのドロップは、水中で使える酸素ボンベの上位版である水の吐息だ。

これの効果は、一本で二時間使える。

しかも、水屬の攻撃が10%向上すると同時に水屬の魔法攻撃を5%レジる効果がある。

他にもスペースマーマンの皮とか、とか、眼球とか……何に使うのかよくわからないもドロップしているが気にしない!

「ついでだから、皆POTの殘量確認しといてねー」

全員が全員MPがヤバい狀態なので、その場でMP休憩を取る。

HPがヤバいのもいるけど、そこはPOTで補っていただきたい!

私はあくまでバフであり、回復ではないのだ。

大和の聲かけに私もインベントリを開く。

持っているPOTの大半が青い。

青いPOTはMPPOT。赤いPOTがHPPOTである。

は、HPMP療法回復のPOTであり、自作以外に作ることはできないし取引や、売り買いもできない。

『どう?』

『私、あと一回分』

『俺、無いんだけど』

『自分ももう、殘り三本っす』

『ren、どんだけPOT持ち歩いてるの?』

『俺も、もうないなー』

『キヨシには最初から期待してないから大丈夫だ!』

『酷い! 聖劉が毒はいたー!』

『毒は海蛇だけで十分じゃね?』

『言えてるっすね……』

『酷い! 最初はあんなに素直で従順だったミツルギが、最近クラメンの悪影響けすぎて、オレ悲しくなってきた』

『いや、最初っからこんなんだっただろ?』

『えー! それもどうなの?』

やんややんやと言い合いをするメンバーたちに呆れながら、どうしたものかと考える。

水竜を見に行きたいけれど、確実に死ぬのが三人……いや、大和もれると四人か。

さっきリジッドゥを召喚したためプロテクは無い。

一応、回復の無敵魔法はあるけれど……いざってときのために使いたくないのが正直なところだ。

『POT無いし、一度戻ろう』

私が帰る判斷をしたため全員が立ち上がると、帰還の護符を使う。

この狩場は、後継で作られたおかげで帰還の陣を探す必要がない。

直ぐに帰還が発して、街に戻ると私は倉庫へと移した。

倉庫にたどり著き、再び海底へ行くための準備を整える。

のメンテナンスを鍛冶屋で行い。

を開始しようとした時だった。

[[ベルゼ] ren、いるー?]

[[大次郎先生] ちょっと、待って、引きすぎだってティタ!]

[[ren] ?]

[[ベルゼ] お、いたいた。あのさー、ちょっと相談があるんだけど、時間ある?]

[[ティタ] え? これぐらい普通じゃないの?]

[[宮様] 大慘事だわー!]

[[ren] わかった。ハウスに戻るから部屋に來て]

[[ベルゼ] 了解]

クラメンの相談ごとなので海底に行くのを諦め、クランハウスへもどる。

部屋にり、一息れようとヒガキ特製の抹茶フラペチーノを出す。

コンコンと扉がノックされ室を許可すると、ベルゼと共に千桜がってきた。

とても嫌な予がすると思いながら、二人に座るよう促すと早速本題を話すよう切り出す。

「で?」

「……相変わらず勘が言いわいね……」

「で?」

「実は、アースが大変なことになっててだな……」

アースが大変なことになってる? どういう大変なのかわからないのだが……はっきりと言ってくれないだろうか?

「ハッキリ言って?」

「実は……」と言って、千桜が切り出した容に私は呆れる。

「馬鹿なの? ていうか、馬鹿だよね? 何考えてんの雪継は!」

「本人は裝備手放してでも買い戻すって言ってるわいね……」

「無理でしょ。どう考えても足りないよね? 裝備手放した程度で、クランハウスが買い戻せる訳ないじゃん!」

そう、もうお察しだろう。

アースがやらかした大変なこととは、クランハウスの稅金を六回滯納したためクランハウスの取得権限が無くなったらしい。

ハウスの取得者がいなくなると、一応と言う形で一週間の買い戻し期間が設けられる。その間に買い戻す場合、一度最初の販売金額で買わなければならない。

勿論、前所有者が買い戻した場合、支払った金額の90%は戻ってくる。

殘りの10%はと言えば、稅金と言う名で運営に巻きあげられ、無かったことになれる。

それが嫌なら競売で、になるわけだけど……今回、結構なクランがハウス取得を目指しているのではないだろうか? 新規狩場でお金が溜まりやすくなったのもその理由の一つである。

実際には、コツコツ貯めてたクランが今では滅多に売りに出なくなったクランハウスを競売で、取得したいのだろうが。

雪継と千桜がどう考えてるのかは知らないけど、競売は相手がいる分値段が跳ね上がり、落札できない可能が高い。

私の時は時期が良かっただけだ。あれほどの幸運は中々ない。

だから私としては競売よりも全額で買い戻すことを勧める。

しかし……稅金と言っても、一回10Mだ。それを払えないほどアースは困窮しているのだろうか?

「で、いくら足りないの?」

千桜が私の元に來たと言う事は、お金の無心だろうと先に聞いてみる。

「金額的に3Gほど……だわいね」

「はぁ……ちょっと待ってて」

[[ren] 先生、宮ネェ、h]

[[大次郎先生] 悪い、今狩り中だから、終わってから聞く]

[[宮様] ごめんなさい。し待っててー]

[[ren] どれぐらいで戻る?]

[[宮様] 三十分ぐらいよ~]

[[ren] k]

「今、先生たちが狩り中だから、三十分後に雪継連れて出直して來て」

「……わかったわいね」

雪継を呼ぶため、ハウスを出ていく千桜の背を見送った私は、大きく息を吐き出すと抹茶フラペチーノを楽しむことにした。

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