《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》母上
「リッド様、朝ですよ。起きてください。」
「……おはよう」
「ん? どうかされましたか?」
ダナエは怪訝な表で僕の顔を覗いていた。
僕はメイド姿のによって朝に起こされたことに驚いていた。
メイド姿に見とれていたとはさすがに言えず、恥ずかし気に視線を外した。
そんな僕の様子に彼は首を傾げていた。
ベッドから起き上がると服を著替えるのも手伝うと言われたが、さすがに恥ずかしくて斷った。
だが、見たこともない服の著方がわからない。
顔を真っ赤にしながら結局、ダナエに著替えを手伝ってもらった。
「背びしなくても大丈夫ですよ」とダナエに言われた時はちょっと泣きそうになった。
著替えが終わると朝食を取る為に食堂に移した。
食堂の長機に用意された席に座ると次々に食事が運ばれてきた。
貴族の暮らしって凄い。
橫には昨日、名乗ってくれた執事のガルンが控えている。
食事をしながら周りを見渡すが、僕以外は誰もいなかった。
「そういえば、他の皆は?」
「ライナー様は帝都に行っておいでですが、近日中にはお戻りになると思います」
僕、リッドの父はライナー・バルディア辺境伯。
隣國と接する領地を治めている領主だ。
その為、時折帝都に行って行政に攜わっている。
ガルンの言葉に僕は頷いた。そうか、父上は帝都に行っているのか。
「母上は?」
「ナナリー様は、調が優れず部屋で休んでおられます」
「なら、後で様子を見に行こうかな」
「それは、ナナリー様も喜ばれると思います」
ガルンと他無い會話をしながら朝食を無事に終えた、テーブルマナーが大丈夫かと心配したが、何とかなったらしい。
食事が終わると、今後の計畫を立てる為に自分の部屋に戻ろうとした。
でもその時、母上の調が何故かすごく気になった。
僕の近くで待機していたダナエに母上の部屋に連れて行ってしいとお願いした。
母上の部屋を知っているはずの僕のお願いにダナエは怪訝な表をしたが、一人で行くのがし恥ずかしいと言うと「クスクス」と笑ってすぐに案をしてくれた。
ちなみにナナリー・バルディアはゲームに名前も出てこない。
はてさて、どんな人かな? と思いながら歩いていると、不思議なもので期待と不安が渦巻いての鼓が高まり始めた。
ダナエに「こちらです」と部屋の前まで案された僕は、ドアの前で立ち止まると途端に不安と張に襲われて息を呑んだ。
まるで、決してってはいけないとと心が拒否しているようだ。
そんな僕の様子に気付いたダナエが心配そうに聲をかけてくれた。
「リッド様、調がまだ優れないのではありませんか? あまり顔がよくありません」
「え? あ、いや、大丈夫だよ。母上に會うだけなのに何だか、久しぶりに會うみたいでさ」
僕の言葉を聞いたダナエは怪訝な表をした後、迷うような素振りを見せてからおもむろに言った。
「……リッド様、本當に調は大丈夫でしょうか? リッド様はナナリー様が調を崩されてから、しするとお會いになるのを避けておられました。以前は毎日のように會いたいと仰っていたのに、最近は全くナナリー様の部屋には訪れていなかったと思います」
「え……? そう…だっけ?」
「……はい。屋敷の者、皆でその様子に心を痛めておりましたので……」
「……そっか」
言い終えたダナエは悲しそうな表をしていた。
どうしてリッドは、僕は母上に會うことを、訪れることをやめたのだろうか?
理由を思い出そうとすると、僕の中にあるリッドの記憶がとても怯えているのをじた。
今は思い出す事より、母上にまず會おう。
僕は、期待と不安で一杯の気持ちを抑えながら、部屋のドアをノックした。
それからしすると「……どうぞ」と部屋の中から小さい聲で返事が聞こえてきた。
僕は意を決してから部屋にった。
部屋にると、赤い長髪で紫の瞳をしたし細のが、ベッドに上半だけ起こした姿勢で本を読んでいた。
その姿を見た瞬間に「ドクン」との鼓が鳴り響いた。
同時に様々なが走馬燈のように心に流れ込んでくる。
「甘えたい、大好き、おしい、守りたい、ずっと一緒にいてほしい、なんで? どうして? 悔しい、悲しい、許せない、誰が? 僕が? 消えないで、お願い……」
言葉では言い表せない複雑なが沢山の思いと共に襲ってきた。
僕はの処理が出來ず、その場で立ち盡くしていた。
その時、何故か目頭が熱くなり自然と涙が頬を伝った。
「ハッ」とすると僕は服の袖で涙を拭った。
僕が涙を流したことに気付いた母上は、驚いた様子でんだ。
「リッド大丈夫なの⁉」
母上は僕にしでも近づこうとベッドからを出そうとするが「ゴホゴホ」とせき込み、その場でベッドに手をついた。
「母上‼ 大丈夫ですか⁉」
僕はとっさにベッドに近寄り、母上の背中をさすった。
近くで見ると母上の生気がし薄くじられ、背中をさする手に自然と力がった。
母上は僕を心配そうな顔で見ると、の中に抱きしめながら優しく言葉をかけてくれた。
「……リッド、ありがとう。でも、あなたが庭で倒れたと聞きました。私も部屋に行こうとしたのだけれど、が言うことを聞かずにごめんなさい…… ガルンから話は聞きましたが、本當に大丈夫ですか?」
抱きしめてくれた母上の腕の中は、慈に満ちた溫かいものだった。
僕は先程から渦巻いていた様々なが落ち著いていくのをじていた。
だけど、母上の聲はとても震えていた。
「……はい、もう大丈夫です。母上の様子が気になりましたので、お顔を見られて良かったです」
僕は母上の震える聲を靜められるように笑顔で優しく言葉をかけた。
「そう……なら良かったわ。あなた達につらい思いをさせて、ごめんなさいね……」
母上の申し訳なさそうな顔に対して、僕は首を橫に振った。
しでも安心させようと手を両手でしっかり握り力強く返事をした。
「大丈夫です。私は辺境伯である父と母上の子供ですから‼」
僕の言葉を聞くと母上は嬉しそうな顔でにこりと笑ってくれた。
その後、母上と談笑してから「また、きます」と言って母上の部屋を出た。
母上、ナナリーを見た時に流れ込んできたを思い返して、僕はふと呟いた。
「……母上を見た時に流れ込むようにじたはリッドの、僕自の中に眠っていただったのだろうか……」
大好きな母上がしずつ弱っていくのに、誰も何もできない。
一番近いところに居た僕はどんな思いで母上の傍にいたのだろうか?
母上は慈に溢れ、病の辛い姿も見せず、僕を心配して大切にしてくれる存在だった。
きっと、泣きびたくなるほど、心が切り裂かれるほど辛かったと思う。
その思いを誰にも言えずに僕は、ずっと抱え込んでいたような気がする。
僕はこの時、真っ當に生きるために母上を必ず病気から助け出すと誓った。
◇
自分の部屋に戻ってくると、僕はこれからすべきことを書き出すことにした。
幸いなことに、この世界には紙がちゃんとあるようで、機の上にメモ用紙とインクが用意されていた。
早速、日本語で書きはじめた。
追放、斷罪を防ぐ今後の方針。
① ゲームの登場人と仲良くなって斷罪、死亡、追放巻き込まれルートを回避。
② ①が不可の場合に備えて一人でも生きていける力を磨く。
③ ①が不可の場合に備えて、お金を貯める。(稼ぐ)
④ 母上ナナリーの治療。
こんなものかなと「①~④」まで書き出すと、僕は深いため息をついた。
「書き出しておいてなんだけど、①が早々に無理だ……」
そうなのだ、ゲームの登場人達の所在地は帝都や他國である。
辺境伯の領地にいる僕が、人脈も何もない今の狀態で彼らと接點を作れることはまず不可能だ。
さすが、ゲーム本編にほとんど関わらない人のリッドだ。
ちょっと泣きそうだけど、こんなことではへこたれていられない。
僕は真っ當に生きると誓ったのだ。
「とりあえず、優先順位は④が最優先。ついで③と②かな」
僕は部屋に急いでガルンを呼んだ。
母上の病名を聞くとガルンはかなり険しく渋い顔をした。
僕はドアの前で仁王立ちをすると必死の形相で険しい顔のガルンを睨みつけながらんだ。
「教えてくれるまで、この部屋から絶対に出さない、僕は本気だよ‼ 絶対に諦めない‼」
「リッド様……」
彼は僕の思いを汲んでくれたのか母上の病名は「魔力枯渇癥」であると教えてくれた。
癥狀についても詳しく聞くと、この世界の住人は皆なからず魔力を持っている。
魔力とは生命エネルギーでもある。
魔力は本來枯渇したとしても自然回復していくものだが、「魔力枯渇癥」を発癥すると自然回復力が極端に落ちてしまう。
その結果、徐々に衰弱してしまい、やがて死に至ってしまう。
今のところ、治療方法が確立されていないと苦々し気に教えてくれた。
本來、母上の病名を教えるつもりはなかったらしい。
僕があまりにも必死の形相と決意に満ちた目をしていたので、二人だけのということで教えてくれた。
僕はガルンの話の中に出てきた病名と癥狀には心當たりがあった。
前世の記憶にあるゲームで「魔力枯渇」というデバフが存在していたことを思い出したのだ。
デバフによる「魔力枯渇」はしずつMPが減っていき0になると、次はHPが減り始める。
當然そのまま放置するとHPが0になり戦闘不能になってしまう。
ゲームではHPとMPも回復方法があるのでそこまで脅威ではなかったが、現実の病気となるとこれほど恐ろしいものはない。
自然治癒が一切出來ない死病みたいなものだ。
「……すぐに調べをしたいけど、図書室とかあったかな?」
ガルンの話を聞き終わった僕の第一聲はそれだった。
その後、屋敷の中にある大きな書斎に案された。
「調べはこちらの書斎をご利用下さい。もし、他に必要な資料がありましたら取り寄せますのでご指示下さい。ただ、取り寄せには數日かかりますのでご注意下さい」
「わかった。ありがとう」
僕が謝意を伝えると、ガルンは軽く頭を下げてから書斎を後にした。
見渡すと書斎にある本は結構な數だった。
しかし、そもそも本を読めるのか?
という疑問が今更ながら脳裏に浮かび、恐る恐る近場の本を開くと……読めた。
普通に読めた。
転生ボーナスありがとう。
「さぁ、気合れて探すぞ‼」
僕は、力強く言い放つと顔の両頬を両手でパチンと叩くと書斎中の本を読み漁っていく。
んな種類の本を読んでいるうちに、読める速度がどんどん上がっていく。
一回読むと、本の容を丸暗記出來てしまうことに途中から気が付いた。
なんてハイスペックな子供なのだろう。
「リッド……君はこんなに超ハイスペックなのに、なんで悪役令嬢の取り巻きになったのかな……」
僕は遠い目をしながら、自然と呟いてしまった。
本作を読んでいただきましてありがとうございます!
しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
差支えなければブックマークや高評価を頂ければ幸いです。
評価ポイントはモチベーションに直結しております!
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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【その他】
※注意書き
攜帯機種により!、?、‼、⁉、など一部の記號が絵文字表示されることがあるようです。
投稿時に絵文字は一切使用しておりません。
絵文字表記される方は「攜帯アプリ」などで自変換されている可能もあります。
気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。
こちらの件に関しては作者では対応致しかねますので恐れりますが予めご了承下さい。
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