《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》父上との話し合い
今日は父上「ライナー・バルディア」が帰ってくる。
父上に相談したいことがあると、ガルンに相談すると彼からも父上に話しておくと言ってくれた。
ちなみに僕から話したいことは二つ。
一つ目は魔法や武など様々な勉強を始めたいということだ。
僕、リッドはゲームでは主人公補正による経験値増加等が無かった。
強くなれるとわかっていても、長に時間がかかる。
この世界においてもその設定が生きているのであれば、早く強くなれるように修練することに越したことはない。
二つ目はし自由に使えるお金がしい。
目標にある將來に備えての金策、だが現狀では元手もない狀況だ。
この點に関しては、父上の力を借りるしかない。
近な高級品を売る方法もあるが、後々問題にもなる可能もあるので最後の手段にしたい。
さて、書斎で本を僕はずっと読んでいるわけだが、面白いことがわかった。
この世界にある植や鉱などは基本的に前世の世界と名前も含めて、変わらないものが多くあることがわかった。
もちろん獨自のものある。
「これなら、金策の目途が付くかもしれない。商人を呼んでこの世界で作れて、持続的に供給可能なものを……」
本を読みながら今後の考えをまとめていると、可らしい聲で不満が聞こえてきた。
「……にーちゃま、つまんなーい」
「ああ、ごめん。そろそろ絵本を読もうか」
「いいの? やったー‼」
先日、メルに絵本を読んであげたら凄く喜んでくれた。
僕が書斎にいる時はメルも一緒に過ごすようになった。
絵本を読んであげるとメルはすぐ容を理解するので、とても賢いのがわかる。
僕の妹は天才じゃないだろうか。
メルのお付きで一緒に書斎にいるメイドのダナエが「やれやれ」という顔で見ているのは多分、気のせいだ。
「ゴホン、リッド様。ライナー様が執務室にお呼びでございます」
いつの間にか書斎のドアの前でガルンが咳払いをしながら立っていた。
「……わかった。すぐに行く」
「よろしくお願い致します。では、私は先にライナー様の所に戻ります」
ガルンは僕に必要なことだけ言うと、一禮をしてから先に書斎を出て行った。
「ええ‼ にーちゃま、行っちゃうの……」
「ごめんね。絵本はまた後でね」
「うう……」
絵本を読んでもらえると思った矢先に、僕が父上に呼ばれてメルディがぐずりそうになる。
すかさずダナエが「お嬢様、私が代わりにお読み致しますね」と聲をかけてご機嫌をとる。
彼の言葉で機嫌を直したメルから「あとで、えほんよんでね。やくそく‼」と言われ、「うん。約束」と返事をすると父上に呼ばれた執務室に向かった。
部屋の前に著くと、僕は張した面持ちで執務室のドアをノックする。
「れ」とドアの向こうから重圧のある低い聲が聞こえてきた。
「失禮します」と執務室の中にるとそこにはガルンも立っていた。
彼が先に戻ると言ったのは父上の仕事を手伝う為だったらしい。
父上は執務室の機の椅子に座り書類作業をしていたが、僕が執務室にってくると手を止めた。
僕を鋭い目でみると、低い聲で言った。
「……庭で倒れたと聞いているが、調は大丈夫か?」
「はい。今は何も問題ありません」
「そうか」
父上「ライナー・バルディア」は僕と同じ白銀の髪で瞳のは紫だ。
を読ませないように常時、無表で顔つきが強面だ。
特に目力が強いので、通常の子供なら泣いて逃げだしそうな雰囲気がある。
「ガルンから話があると聞いたが、どういった容だ?」
「はい。まずは今日、お時間頂けたこと謝致します。そして、お願いしたいことは二つあります。一つ目は、私に魔法、武、その他さまざまな勉強を教えて頂ける家庭教師をお願いしたく存じます」
「……ふむ。その件であれば、以前から考えていたがお前の神狀況や屋敷での態度を考えると難しいと先送りしていた。まさか本人から申し出をけるとはな。本當に大丈夫なのか?」
父上の言葉にし驚いた。
屋敷にいて僕やメルと會話するわけでもないのに僕の神狀況などを見て、家庭教師等の時期をずらしているとは思わなかった。
でも、それなら僕達ともっと向き合ってくれても良いのではないだろうか?
という疑問も同時に浮かんできた。
父上は表を崩さず、じっとこちらを見つめている。
僕は深呼吸をしてからを張り、自信を持って答えた。
「はい。ご心配おかけして申し訳ありませんでした。私自、母上が日々弱っていくお姿を間近で見てしまい、一時期は心が荒んでおりました。ですが、それだけでは何も解決しないと気付きました。私自を磨くことで母上のお力になれることもあると存じます。家庭教師の件をよろしくお願い致します」
「わかった。そこまで意志がはっきりしているのであれば大丈夫だろう。すぐに手配しよう。さて、二つ目はなんだ?」
僕の言葉を聞いたライナーは安堵したような嬉しそうな表をしみせたが、すぐ無表に戻ると次の質問を持ってきた。
「はい。二つ目は恥を忍んでのお願いになりますが、私個人が好きに使える資金を用意して頂きたいのです」
「……何の為だ?」
聲の重圧が強くなり、父上の一言で執務室の空気が変わる。
部屋の中には重苦しい雰囲気が漂っている。
「書斎での様々な資料を調べているうちに、いくつか有用な商品になりそうなものがありました。それを実行してみようと思っております」
「通常なら資金提供をする側に、提出する資料などがあるはずだ。それもなしに資金提供だけをしろというのか?」
「はい。仰る通りです。今回は私自に投資して頂きたく存じます。父上であれば我が子の才能を信じて頂けると思い、恥を忍んでお願いしておりますがいかがでしょうか?」
これは賭けだ。確かに父上の言う通り、確実に資金提供を求めるのであれば資料を用意すべきだ。
だけど、資料を準備するにしても時間が、かなりかかってしまう可能が高い。
母上のことを考えると恐らくあまり時間はない。
その為、僕は一か八かの勝負に出た。
時に熱意は人の気持ちをかす、それが親子であれば尚更だと思う。
家族としての繋がりがあることが前提だけど、父上は僕の事を見ていたような発言をしたからきっと承諾してくれると思う……‼
僕の言葉を聞くと父上は眉間にしわを寄せ、そのしわを右手の親指と人差し指でんでいる。
僕は父上の顔を、食いるように見ていた。
父上は僕の視線に気づくと小さくため息をついた。
「ふぅ……わかった。お前に幾らか自由に使える資金を用意しよう。『有用な商品』と言っていたからには、何か商売でも考えているのだろう? 商売用の資金なぞ子供には過ぎた金額だが、そこまでの大口を叩くのであれば有効に使ってみるのだな」
「……‼ はい、ありがとうございます‼ 必ず期待に応えてみせます‼」
執務室にった直後よりも、父上はし機嫌が良さそうである。
もう一押しいけるかな?
「父上、折角なので、もう一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだ? 資金の話ならこれ以上は無理だぞ」
「いえ、そうではありません。私もですがメルも父上とあまり話が出來ずに、し殘念に思っております。良ければ朝食や夕食などはご一緒できないでしょうか?」
「メル」という言葉にライナーの額がピクッといた。
「考えておこう。……ところで、お前はメルディのことをメルと呼んでいるのか?」
「え? はい。メルから、母上にもそう呼ばれているから、私にもそう呼んでほしいと言われましたので」
「そうか……用件は以上か? 無ければもう下がれ」
父上は目を閉じて何かし考えているようだ。
僕はその様子を見ながら「失禮しました」と執務室を退室した。
ドアを閉める時、父上とガルンが何か話している様子が気になったけど、その場を後にして僕は書斎に向かった。
「よし、思った以上にうまくいった。軍資金は手にったから、あとは商人を探すじかな」
父上との渉が想像以上にうまくいって、僕は忘れていた。
メルに絵本を読むという約束を……
しばらくすると、書斎のドアが勢いよく開け放たれた。
何事かと思い、目をやるとそこには半ベソ狀態のメルが凄い顔をして立っていた。
その時、僕は自分が約束を忘れていたことを思い出した。
「メ、メル、ごめ……」
「にーちゃまの、うそつき‼ うそつきぃい‼」
謝ろうとした僕の言葉に、被せるようにメルは泣きびながら僕に抱きついて來た。
僕に「ポカポカ」と痛くないパンチをしながら、メルは怒ってめちゃくちゃに泣いていた。
僕はそんなメルを抱きしめながら「ごめんね、メル」と呟きながらあやしていた。
その後、泣き止んだメルが満足するまで、絵本を僕が読まされたのは言うまでもない……
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