《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》特殊魔法

父上とクリスが化粧水とリンスを獻上しに行ってから、しばらくたったある日のこと。

僕宛に二人から手紙が屆いた。

早速、自分の部屋で、封を開けて中を読んでみる。

読む限り、獻上は無事に終わったらしい。

でも、クリスの手紙の容は僕が帝都行きを丸投げしたことに対しての愚癡が多い気がする。

あと過激な文面もしある。

「ローラン伯爵は出にしました」

會ったこともない伯爵が、知らない間に出になっている。

父上もローラン伯爵についてよく愚癡っているけど、この人は毎度、何をやらかしているのだろうか?

「マチルダ皇后陛下はやばいです。危険です」

文字だけ読むと不敬罪になりそうな文面だ。

でも、父上からマチルダ皇后陛下についてはあまり聞いたことないから、クリスが帰ってきたら話をきいてみようと思う。

「ライナー辺境伯は、そっぽしか向きませんでした。あとだまし討ちされました」

どういうこと⁉ そっぽしか向きませんでしたとかだまし討ちとか意味不明なのだけど⁉

「でも、クリスはこっちに居た時は帝都行きをなんだかんだ楽しみにしていたけどなぁ。何があったのだろう?」

確か、出のサフロン商會からも「人族の商圏に風開けた」って言われたって喜んでいたはずだ。

それなのに、このクリスの手紙からはなんか黒いオーラが「オォォ……」って出ている気がする。

というかこの手紙は絶対、普通の神狀態で書いていない気がする。

なくとも僕が知っているクリスはもっと知的な人だった。とりあえず、僕はこれ以上考えるのをやめた。

父上からの手紙には、獻上が功したこと。

クリスが皇后陛下に気にられたこと。

クリスティ商會とバルディア領で獻上した商品の利権が認められたこと。

などが書いてあった。最後にある、「帰ってきたら、大切な話がある」という文面がし気になった。

手紙を読み終えたタイミングで、部屋のドアがノックされる。

返事をするとガルンが部屋にって來た。

「サンドラ様が訓練場でお待ちです。いかがしましょう?」

「あ、準備してすぐに行くって伝えて‼」

返事を聞くとガルンは「かしこまりました」と返事をして僕の部屋を退室していった。

僕は手紙を片付けると、きやすい服に著替えて訓練場に向かった。

「リッド様、遅いですね‼」

「ビシッ」と右手を腰に當てながら、左手の人差し指でさされた。

人に指さしたらダメだよ、と心の中で突っ込む。

「遅くなってごめんね、サンドラ先生」

「いえいえ、その分修練を厳しくしますから、気にされないでください」

何故、サンドラ先生は毎度すこしばかり毒をのせて來るのだろうか。

まぁ、あんまり気にならないけど。

サンドラが帝都で過ごした日々。

そして、魔力回復薬の打診をしてからサンドラとの距離がし近くなった気がする。

姉弟みたいなじでちょっと楽しいと思う自分もいる。

サンドラから指示をけながら魔力変換の修練を開始した。

魔法を発する為に魔力量を増やす必要があるので、修練は毎日欠かさず行っている。

サンドラが立ちあってくれる日は効率良くできているかどうか見てくれる。

問題があれば指摘してくれるから、凄く上達が早い。

修練が一通り終わると僕はサンドラに特殊魔法について教えてしいと伝えた。

サンドラは「し早いですけど。リッド様なら大丈夫そうですね」そう言うと、訓練場の黒板がある部屋に移して座學を始めてくれた。

「大前提として屬魔法を発する際には屬素質が必要です。屬素質が全くない人はいまのところ確認はされていません。誰でも何かしらの屬素質は持っている。というのが、昨今の魔法學です。ただ、もし仮に屬素質が無かったとしても「無屬」の魔法は発出來るので、修練さえすれば誰でも魔法は使えます。ここまで、いいですか?」

サンドラ先生は眼鏡をしている。

普段はしていないのに。

でも何故かとても様になっている気がする。

僕はサッと右手を上げて質問をする。

「サンドラ先生、普段は眼鏡していないのは何故ですか?」

「え? そ、それは、ライナー様が以前、眼鏡を外した時に「ないほうがいいぞ」って言ってくれたから……って何を言わせるの‼ 魔法學の座學中でしょ‼ 質問は魔法だけにしなさい‼」

「は~い」と簡単な返事をサンドラに返す。

サンドラは僕の質問にうっかりノリ突っ込みで答えてくれたが、その時の顔は恥じらいで赤く染まっていた。

父上は自覚なしにしているのかな?

は「ゴホン」と咳払いをすると魔法學の座學を続けた。

「屬魔法については屬素質が必要でしたが、特殊魔法と言われる部類には、特別な素質が必要でしょうか? リッド様、お答えください」

「う~ん、わかりません‼」

僕は正直に答えた。

素質のことは前世のゲーム知識からわかっていたが、特殊魔法はこの世界に來てから初めて知ったことだ。

なので、素直にわからないとしか言いようがない。

「わからないことを「わからない」と言えるのは大切なことですね。では、答えをお教えすると、素質も何も必要ありません」

「え? では誰でも使用できるのですか?」

「うーん、「誰でも」というのはし違いますね。正確には修練を積み、創作もしくは伝授してもらったら使用可能になります」

魔法を創作できるということか? それを聞いた途端に、凄いテンションがあがったのをじた。

攻撃魔法もオリジナルは作ったが、それ以上に特殊な魔法を作れるというのはかなり心を擽られる気分だった。

「攻撃魔法の時に、イメージを明確化することで初めて魔法は発可能ということでしたが、特殊魔法も同様なのでしょうか?」

「そうですね。ただ、特殊魔法は攻撃魔法よりさら的なイメージと合わせて必要な魔力量が多いので、イメージが出來ても魔力量が足りなければ発しません。その逆も然りです」

「攻撃魔法は魔力変換とイメージの確立によって発可能。特殊魔法は魔力変換、魔力量、鮮明イメージの確立が必要ということでしょうか?」

「その通りです。やはりリッド様は理解力が素晴らしいですね」

おお、つまり魔力量さえあればオリジナル魔法が作り放題なのだろうか。そう思うとが躍る。

でも必要な魔力量というがよくわからない。

まず、魔力量を測る魔法を創るとか、道を作ったほうがいいかもしれない。

「では最後に、特殊魔法の伝授についてです。伝授に関しては魔法発報を文字通り指定の相手に伝えることで、伝えられた人は比較的簡単に発が出來るようになります」

「へ?」僕はちょっと間抜けな聲を出してしまった。

サンドラ先生が言うから間違いないのだろうけど、伝授って強すぎない。

つまり、僕が魔法を創ってその魔法の使い方を伝えれば誰でも強力な魔法が使えるようになるはずだ。

僕の考えていることに気付いたのか、サンドラ先生は話を再開した。

「もちろん、伝授も萬能ではありません。まず、伝授する側の魔力量は相當必要になります。そして、伝えられた側も発には相応の魔力量が必要になるので、伝授されても魔力量が足りなければきちんと伝授されずに発もできません。あと、伝授はその魔法を創造した人だけが可能です」

「それはつまり、僕が魔法を創ってサンドラ先生に伝授はできるけど、その魔法をサンドラ先生は誰かに伝授することはできないということですね?」

「その通りです。ちなみに最初の修練で私がリッド様に施した魔法は私が創造したので、私から伝授することは可能です」

なるほど、だが伝授出來るのは特殊魔法だけなのだろうか?攻撃魔法も屬素質さえあれば伝授できそうな気もする。

「あと、特殊魔法で作れる魔法の範囲ですが正直どこまで可能で、どこまでが不可なのか正確にはわかっていません。その為、特殊魔法は出來るかどうか、魔力を使いながら確かめると言った容になります」

「よろしいでしょうか?」サンドラは説明が終わったようで、眼鏡を右手の人差し指で「クイッ」としてこちらにドヤ顔を向けている。

「質問です‼」と言い右手をサッとあげると、サンドラ先生は「どうぞ、リッド様」と楽しげな様子だ。

「特殊魔法の伝授はわかりましたが、今の話だと屬魔法も伝授出來るのではないでしょうか?」

「良く気づきましたね。リッド様の言う通り屬魔法も伝授は可能です。ただし、伝授される側がそれ相応の魔力量を持っている。つまり修練をしっかりしている必要があります。それに、伝授する側も一回伝授するごとに消費する魔力が凄いので効率としてはあまり良くありません。仮に私が特殊魔法をリッド様に伝授すると、恐らく私は疲れ果てて今日は寢込んでしまうと思います」

どんなに魔法を放っても息もきれないサンドラの魔力が空っぽになって寢込むということは、「一定の魔力量が必要というより伝授には保持魔力をすべて使い切ってしまう」というのが正しいのかもしれない。

「以上で特殊魔法の説明は終わりますが、他にご質問はありませんか?」

僕が説明を聞いて考え込んでいる様子をみて、とても楽しそうに微笑んでいた。

曰く、魔法にここまで熱心な人はないらしく、僕のことを弟子のように可がってくれている。

んな意味で。

「はい。ありがとうございました」

僕はサンドラにお禮を言うとペコリと頭を下げた。

「貴族の息子が、簡単に頭を下げたら駄目ですよ」

と注意されるがサンドラの顔には嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。

「サンドラ先生、話はし変わるのですが魔力回復薬はどんなじでしょうか?」

僕は授業に使った資料をまとめると、おもむろに切り出した。

先日、サンドラに月草を預けた時に、研究所を用意してほしいと言われたが「とりあえず、現狀でも出來ることをやってみます」と言ってくれていたのを思い出したからだ。

「いま出來る範囲で調べましたが、月草にある魔力の回復効果は確認できました。あとは、どう分を出して濃するかですが、こればっかりは施設や道がないと難しいですね」

「なるほど、ちなみに完系はどんな形にするの?ドリンク系とか末、錠剤とかあるけど」

いわゆる栄養ドリンクみたいになるのか、サプリメントみたいなじだろうか。

ただ、月草を試しに生で食べてみたときは気持ち魔力が回復した気はしたけど、味はえぐみが強くて「これぞ草‼」ってじだったから二度と食べたくはない。

そのイメージがあるから、ドリンクは個人的に嫌だと思って聞いたのだが、僕の言葉にサンドラは「ハッ」とした表をしている。

「失念していました……ナナリー様の病狀の進行を抑えるためなら、錠剤や薬をとりあえず作るという方法が手早くていいかもしれません。すみません、回復効果を高めることばかりに頭がいっていました」

サンドラは申し訳ないと、僕に頭を下げてきた。

その様子に僕も慌ててしまった。

「そ、そんなつもりで言ったわけじゃないから気にしないでいいよ。だから、頭を上げて。ね?」

僕の言葉を聞いて、パッと顔をあげた彼は目をメラメラと燃やしてやる気に満ち溢れた表をしていた。

「ありがとうございます‼ すぐに取り掛かって試作品を用意しますね‼ では、すぐに帰って、研究に取り掛かります‼」言うと同時に彼は凄い勢いで駆け出して帰っていった。

「え? このあとの授業は‼」去っていくサンドラの背中に聲をかけると「ごめんなさい‼ 自習でお願いしま~す‼」と聲が遠のきながら聞こえてきた。

「じ、自習……あ‼ こういった聲の聞こえ方は、確かドップラー効果って言うのだっけ」見えなくなっていくサンドラの背中を見ながら僕はそんなことを思うのであった。

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