《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》メモリーに出來る事
「リッド‼ なんなの、この記憶‼」
僕は屋敷の自室に籠って先日、覚えた魔法を試していた。
自分の前世の記憶を呼び出すために編み出した特殊魔法の「メモリー」だ。
使用方法としては心の中で「メモリー」と呼びかけると彼が反応してくれる。
そして、しい報を伝えると該當する記憶をメモリーが、僕の前世の記憶から探してくれるという魔法だ。
ちなみに、メモリーと會話できる狀態になっていると一定時間ごとに魔力が消費される。
仕組みを理解した時は昔の攜帯電話の通話料と一緒だと思った。
そして、僕はいまメモリーに怒られている。
何故、頭の中にメモリーの怒號が響くのか?
それはついさっきお願いした記憶にあった。
それは「ときレラ!」の記憶だ。
というのも、実は前世においておまけ要素のフリーモードばかりしていたから、そんなに本編を覚え込むほどやっていなかった。
せいぜい本編で覚えているのは主人公達の名前ぐらいだ。
それも、名前だけで苗字まで覚えていない。
ただ、シンデレラストーリーということですべての攻略対象が様々な國の王族に連なる面々だったはず。
マグノリアの皇族しかり、確か今度行く、レナルーテの王族にも攻略対象にいたはずだ。
確か王子の名前は「レイシス」だった。
ゲームだと萬能キャラで、鍛え上げると結構使いやすいじだった気がする。
キャラの育に付隨してくる報に関してはこんなじで覚えている。
だが、肝心の彼がメインとなる本編ストーリーをよく覚えていない。
ちなみに、覚えていない理由にも実は心當たりがあった。
ただ、それをメモリーにあえて言わずに頼んだ結果、怒りを買ったわけだ。
「えー、でもメモリーが報集められるって言ったよね?」
僕はとぼけた様子で彼に返答する。もちろん確信犯だ。
「……リッド、君わかって言っているよね?」
「そうかぁ、やっぱり厳しいかぁ……」
僕は、殘念な気持ちで一杯だ。
さすがに厳しかったよね。
「當たり前だろ‼ 君、本編をほとんど未読スキップ使っているじゃないか‼ 記憶を遡っても出た報がぼろぼろの紙屑狀態だよ。こんなの引き出すなんてさすがに無理だよ‼」
そうなのである。
前世で「ときレラ!」を全クリしたけど本編はしやってから面倒くさくなって、未読スキップ【ON】にして進めたのだ。
ちなみに、未読スキップ機能について簡単に説明すると、乙ゲーやゲーと言われる部類は、様々な攻略対象がいる。
その為、何度も周回プレイするのが前提だ。
だけど、対象ルートにるまではある程度同じストーリーが描かれる。
だから、一度読んだストーリーを早送り出來る「スキップ」という機能がある。
ただ、「未読」の一度も読んだことがないストーリーは飛ばさないように初期設定は未読スキップが出來ないように設定されている。
それを、解除するのが未読スキップ【ON】だ。
これを使えば、既読だろうが未読だろうがすべてスキップできる。
つまり、次の選択肢まですぐにたどり著けるというものだ。
僕は前世で「ときレラ!」をしているときは、途中からほとんど未読スキップしていたのだ。
それが、こんな形でしっぺ返しを食らうとは思わなかった。
でも、何故リッドのことは覚えていたか?
それは、フリーモードで使い込んだあとに、このキャラは本編でどんな立ち位置なのか?
ふと気になりネットで攻略サイトやらなんやらでリッドのことを調べたからだ。
フリーモードで鍛えれば化けるのに、本編での不遇扱いに當時は笑ったが、今は笑えない。
「うーん。ならこの機會にメモリーが調べられる記憶について教えてもらってもいい?」
実際にメモリーに記憶を依頼したのは今回が初めてだった。今後もメモリーを頼ることが多くなるはず。
なら、なにがどこまでできるかは確認しておいたほうが良いだろう。
「はあ……、わかった。今回の件は僕も詳しいことを伝えていなかったからね」
頭の中でメモリーの聲が響く。そして、説明が始まった。
結論としては、前世の見聞きしたものがすべて記憶にはあるという。
ただし、メモリーが報として持ち出せるのは、その中でも鮮明に見聞きしたものだけだということだ。
例えば、ネットなどの畫を僕が意識して見たものに関しては大引っぱり出せる。
だが、右から左に流して意識的に聞いていなかった會社の上司の愚癡などの詳細は引っぱり出せない。
つまり、どれだけ前世の僕が意識して見聞きしていたか?
ということが重要らしい。
意識的に見聞きしたことであれば、前世の僕がいころの記憶でも持ち出せる。
だが、大人になったあとでも意識せず垂れ流しで見聞きした報は引き出せない。
また、記憶が曖昧な報をどうしても引き出す場合にはかなり時間がかかる。
「前世の記憶で曖昧な報を正確に引き出すのは、シュレッダーされた大量の紙屑からプリント一枚を復元するようなものだよ? 君ならこの例えがわかるだろう?」
メモリーは僕の前世の知識も使って説明してくれている。
それで最初の「ぼろぼろの紙屑狀態」というわけか。
「つまり、記憶っていうのはファイリングのようにまとめられているものと、シュレッダーのような紙屑みたいになっているものがある。ファイリングされているものはすぐ出せるけど、紙屑の記憶は復元するのが大変で引き出しが難しい。最悪不可能ってことでいい?」
僕はメモリーから聞いた容を自分なりにまとめて質問した。
「うーん。とりあえず、そんなじかな? どちらにしても、君が未読スキップで飛ばした報を引き出すのはかなり大変。すぐ出來るものじゃないよ。しろと言われればするけど、期待しないでほしいってじかな。どうする?」
なるほど、時間はかかるけど不可能ではないのか。
それなら、手掛かりはしでもほしい。
「じゃあ、大変だろうけど、お願いしてもいい?」
「はぁ……わかった。やってみるけど期待しないでね。ほかに探す記憶はあるの?」
僕は思案して、とりあえずはその報だけ今回は探してみてほしいと伝えた。
メモリーは「はぁ」とため息をついてから「やるだけ、やってみるよ。期待しないでね?」と言ったのが最後で頭の中から聲が聞こえなくなった。
僕は頑張ってね。
と心の中で呟いた。
「にーちゃま、なにしているの?」
心の中で呟くと同時に、いきなり聞こえてきた聲に僕はビクッとして、部屋の出り口を見た。
するとそこにはドアノブに手をかけながら怪訝な顔をしたメルがいた。
「にーちゃま、だいじょうぶ? ずっとはなしごえがへやのそとにきこえてきたよ?」
なんと、聲を出しながらメモリーと話していたらしい。
僕は困ったような顔をしながら、メルににしてほしいと頼んだ。
というか、メルににしてもらっていることが多い気がする。
「いいけどまた、えほんをよんでくれる?」
「わかった。いいよ」
「にーちゃま、やくそくね」
僕の返答を聞くとメルは可く微笑んだ。
でも、なんで僕の部屋にってきたのだろう。
気になったので軽いじでメルに聞いてみた。
「うーんとね。さいきん、にーちゃまとあそべてないからへやにきたの。でも、どあをのっくしてもへんじがなくて、こえしかきこえなかったから、どあをすこしあけてのぞいたの」
なるほど、そしたら僕が獨り言をずっと言っていたから聲をかけてくれたわけか。
そういえば、最近はメルに絵本を読んでいなかった気がする。
メルの表を見るとはいつもよりし寂しそうなじがした。
その顔を見て、僕は今日はメルと過ごすことにした。
「メル、今日は僕とたくさん遊ぼうか?」
「いいの? にーちゃま、だいすき‼」
その日、メルに付き合って一日中、絵本を読んだ。
そして前回、同様に聲の使い過ぎで聲がガラガラになってしまった。
ただ、メルがとても喜んでくれたからよかった。
明日からまた頑張ろう。
僕はそう思いながら、今日をメルと楽しんだ。
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