《【完結】悪と呼ばれたもと王妃はもうも結婚もコリゴリなのです》プロローグII
◇◇◇
神ルーの到底神とは思えないキンキンした聲が頭の中に響き、そのままぐるぐると目が回り、強烈な頭痛と吐き気がして、気づけば…ファビアは布団の中で目を見開いたというわけだ。
そして冒頭に戻る。
ううっ…。頭痛と吐き気がまだ継続中のようだ。
大きな聲を出したことで本當に吐きそうになり、ベッドから起き上がると、近くに置いてあった洗面桶の上にうぷっと嘔吐した。
まだ頭痛は治まっていないが吐き気はなくなりし楽になる。
あらためて自分の手を見て、ぽちゃぽちゃしていて小さいことに気づく。
それにこの部屋。
どうみても、子どものころファビアが使っていた部屋だ。
し楽になったので、ベッドから降りてみた。
歩幅が小さいし、背もかなり低い。
そして姿見の前まで行くと、自分を思う存分検分する。
この大きさは…?7歳くらいかしら?
ふと、姿見の後ろの方に映るピンクのが目にった。
あれは…。
ピンクのうさぎのぬいぐるみだわ。
忘れもしない。
ここ、公爵邸に來てはじめてもらったもの。
本の赤ん坊くらいの大きさの結構しっかりした質の良いものだったはず。
わたしが目覚めたときにあの場所に置いてあって、ムカついて、イラついて、即刻窓から池に向かって投げ捨てたもの。
そのうさぎのぬいぐるみが、耳にリボンがついている狀態でまたあそこにあるということは…
7歳の誕生日の朝ね。
ほんとはあのぬいぐるみ、しかったのよね。
何より大きくてふわふわでかわいくて、ずっと抱きしめて眠りたいなって思ってたのに…。
意地っ張りなわたしはぬいぐるみを手元に置く事より、継母が苦しむことを選んだ。
バカなわたし…。
どんなに反抗したって、最後まで継母は…キャロライナお母様は…わたしを案じてくれていたのに…。
ファビアは姿見の場所からぬいぐるみの置いてあるソファの場所までてくてく歩いて行くと、ウサギを取り上げた。
思った通りフカフカだわ。
ここにそう。顔をうずめて見たかったの…。
ぽふっとうさぎのお腹のところに顔をうずめたらやわらかな布が気持ちいい。
中のワタもぽわぽわでとっても気持ちいい。
やっぱり素直にもらっていればよかったのよ。
フルフルとうさぎのお腹で自分のほっぺを転がしてそのを楽しんでいたときだ。
コツコツと扉がノックされ、こちらの返事は待たずに、年配の侍が室してきた。
「あら、まぁ。ファビアお嬢様。起きてらしたのですね?気づきませず失禮いたしました。」
ファビアがぬいぐるみから顔をあげたところ、侍がしびっくりしたような顔をしてファビアを見つめている。
し構えているのがわかる。
無理もない。
この頃は確かいつも癇癪を起して暴れまくっていたはずだ。
またいつ暴れるかとドギマギしているのだろう。
言葉遣いは丁寧だが、そこに尊敬の念はじられない。むしろそこには軽蔑の念がある。
あの頃のファビアは使用人たちが自分に向けたこの軽蔑の念をいながらにじ取っていたのだろう。
毎日癇癪を起こし、使用人を困らせ、自分の存在を認めさせたかったのだ。
けれど今ならわかる。自分が間違っていたと。
認めてほしければ、自分こそが使用人を認め、大切にしなければならなかったというのに。
けれどもう失敗しない。
「メラニー。ごめんなさい。わたくし吐いてしまったの。」
ファビアは目の前にいる公爵家の古參の侍長メラニーに1か月前にここに來てから初めてだと思われる謝罪の言葉を口にした。
目を伏せ、うつむき、反省しているのだという意思をきちんと見せなければ…。
「ファビア様…?」
メラニーが驚いたように一瞬息をのんだのがわかる。
しばらく固まったかのように見えたがそこは一流の侍、それは一瞬の事ですぐに桶の中にある吐しゃを確認するとあわてたようにファビアの前に來て覗き込むように顔を確認した。
「失禮いたします。ファビア様。」
そして、おでこに手を當てる。
「お熱はないようですけれど、お顔のがすぐれませんわ。すぐに醫師を手配します。まだ起きられてはいけません。ベッドの中へ。」
メラニーがおそるおそるファビアの手をとる。
信用を取り戻すのはなかなか大変らしい。
今までならこういうときも一度目はすぐに手を振り払っていたっけ。
けれどファビアは振り払うことはせず、メラニーに手が引かれるままベッドにいざなわれると大人しく中にった。
「寢起きが悪かったの。すごく嫌な夢を見たのよ。だからごめんなさい。」
「怖い思いをなされましたね。メラニーは醫師の手配をしにまいりますからしお待ちくださいませね。」
メラニーが出ていこうとするのでファビアはあわててひきとめる。
「そのまえに、そのうさぎをとって頂戴。わたくし一緒に眠りたいの。」
「まぁ。ファビア様。」
メラニーの顔が輝く。
「キャロライナ様が…お喜びになりますわ。」
継母になりたてのキャロライナが誠意を持って選んでくれた贈り。
公爵家の侍たちはそれを知っていた。
前世ではこの贈りを無下に扱って、完全に侍の信頼を失ったのだが、今世では絶対に失敗しないわ。
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