週末忙しくしており、久々の更新です。

レイナルドはきっかり21時にやってきた。

その日は冬の冷たい雨が降っており、夜に外を出歩く人はなく、公爵邸の前に無印の馬車が停まっていたとしてもだれも気に留めなかっただろう。

公爵邸でも事前に先ぶれがきており、ジーニアとキャロライナは奧にひっこんだままでファビアがひとりで対応した。

「雨の中お越しいただき誠にありがとうございます。」

暖かい紅茶を注ぎながらファビアは頭をさげたが、レイナルドは何食わぬ顔でソファに腰を下ろした。

「いいよ。これくらいなんてことはない。それで？話したいこととは？」

人払いはしてあったが、できるだけ人數がいい。

部屋の隅にはレイナルドの護衛騎士が立っていた。

信用できるだろうか…。

ちらとそちらに視線を移すと、レイナルドが護衛騎士に言った。

「セドリック。でていろ。」

「よろしいのですか？」

「ああ。」

セドリックと呼ばれた護衛騎士が部屋を出て扉を閉めた。

パタリ。

2人きりの空間になったので、ファビアが口を開く。

「殿下。最近、國王陛下や殿下のおの合で変わったことはありませんか？」

「え？」

レイナルドが視線をファビアに向け、どういうことだ？という怪訝な表をみせる。

「実はわたくし…。先日の舞踏會で、取引の現場を見たのです。」

「取引？」

「はい。外國の男とガーディアン人の男が薬のやり取りをしていました。その薬を飲めば1年後に風邪に似た癥狀からはじまる調不良がはじまり、その3年後にはこの世を去るだろうと…。」

ファビアがレイナルドの表を確認すると、わずかに眉をひそめ、そして考え込むような表になった。

「ファビア嬢はその薬が陛下や僕に使われていると考えているということか？」

「はい。」

ファビアは未來を知っているから、未來が変わらない限りその薬が國王陛下を殺すためのものだと推測できるが、ふつうに考えたらレイナルドが狙われる可能だってある。

ファビアはコクリとうなづく。

「し調べてみました。」

「薬のことをかい？」

「はい。その…こういう本を持っておりまして…。」

レイナルドにもらった醫學書を目の前に出した。

ファビアが開いたページにはデーゼの詳細がかかれている。

ミルアー語の書なのでどこから手にれたのかと言われるおそれもあったが、そんなこと言ってられない。

「へぇ…。」

「これじゃないかと…。それで、なんとか阻止したくて、他にも今調査中で、解毒剤があるようなので…。」

「待って。」

レイナルドが遮る。

「どうしてデーゼという薬だと斷定できる？」

「においです。取引現場でシナモンの匂いがしたからです。」

「シナモン？確かに書いてあるね。」

レイナルドもミルアー語は普通にこなす。

「実際はシナモンよりし辛めなかんじに思いましたが、誰かの香水かと思ったんですけれどその聲を聞いたので、おそろしくて、家に戻ってから必死で調べました。」

「……」

レイナルドは無言で考えている。

そりゃそうだ。

ファビアが突然言ったことを信じろと言うほうが難しい。

「本當のことを言いますと、わたくし予知夢を時々見るのです。」

真っ赤な噓だ。

けれど信じてもらうためにはこういう噓をつくしかない。

「今回も予知夢だと思うのです。その取引のし前に、國王陛下がお亡くなりになって、この國が亡びる夢を見ました。」

じっとファビアを見た。

信じてもらえるかどうかの瀬戸際だ。

けれど、わたしはガーディアンを救いたい。

絶対に滅びてほしくはない。

お願い。信じて！

そのままじっと數十秒、ファビアを見つめてからレイナルドはふっと息をはいた。

「信じるよ。君を。」

ほっとした。

「で？解毒剤だっけ？それはどこにあるの？」

「ミラージェス伯爵が今調査をされています。」

「え？彼も知っているの？」

「ええ。わたし一人でどうすればいいかわからなくて、けれど、なんとかしたくてマチルダ嬢に調査をお願いしてしまいました。彼も伯爵も、王宮でこういう取引があったことは知っておられますが、わたしが、毒の対象者が陛下か殿下と考えているということは言ってはおりません。」

「そうか。わかったよ。じゃぁ伯爵に聞くとしよう。キミは…」

レイナルドはファビアを見た。

「いや、キミにも報告したいから、時々、こうやってきてもいいかな？」

「ええ。もちろんです。」

どうしても國王陛下の毒殺を阻止したいファビアはこれからもマチルダに聞き調査を進めるつもりだ。殿下も伯爵と連絡をとるだろうけれど。

「わたしも何かわかったら報告いたしますわ。」

「じゃぁ暗號を決めよう。この件について手紙をかくときは、僕はセディを名乗る。便箋のは薄茶にしよう」

おそらく護衛騎士のセドリックの稱と瞳のをとったのだろう。

「ではわたしは、メイサと。黃の紙にいたします。」

「よし決まりだな。」