《【連載版】落ちこぼれ令嬢は、公爵閣下からの溺に気付かない〜婚約者に指名されたのは才兼備の姉ではなく、私でした〜》1話 落ちこぼれ令嬢
こちらは連載版となります。
短編以降の語は、5話からとなっています(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
ま、まさかの評価付停止にしておりました…!
応援しようとして下さった方、大変申し訳ありません。
評価付開放いたしましたので、もし良ければ評価して下さると大変嬉しいです( ; ; )
「─────私も、エスターク公爵家で行われるパーティーに同行を、ですか?」
ある日突然、父から告げられた言葉に私は疑問で返してしまう。
私にとってその言葉は、正しく青天の霹靂であった。
「……そうだ。アリスと共に今回はお前にも同行して貰う」
あからさまに嫌そうな顔で父が言う。
アリスとは私の二つ上の姉で、才兼備という言葉が誰よりも似合うお姉様。
両親はそんなアリスを溺しており、反対にお姉様と比べれば平凡極まりなかった私の事はあまり好ましく思っていなかった。
それ故に、家の汚點とも思われている私が屋敷の使用人に口を叩かれていようと知らぬ存ぜぬ。
どころか、の程を弁えさせる為にとあえて放置すらしている始末。
自分の事ながら、こんな環境下にいながらよく塞ぎ込まなかったなと自分自を褒めてやりたいくらいだった。
「……本來であればお前を同行させる気などなかったのだが、公爵閣下から公子公には出來る限り參加してしいとのお達しをけている」
理由は不明。
だが、あえてそのお達しを無視し、先方の気分を害させる必要はないと考えたのだろう。
特に、エスターク公爵家の次期當主とされるヴァン・エスタークは眉目秀麗と名高く、その能力も王家から特に高く買われているほど。
そう言えば、両親がアリスの婚約相手にヴァン公子をんでる云々という話をいつだったか耳にしたような気がする。
……る程。
なら余計に、たとえ落ちこぼれで家の汚點である私であっても同行させざるを得ないか。
寧ろ、分け隔てなく優しく接する素敵なご令嬢として売り込むにあたって私の存在はプラスに働くやもしれぬ。
とどのつまり、私はアリスお姉様の引き立て役として參加をしろ、という事なのだろう。
「いいか、余計な事だけはするなよ。お前はあくまで、アリスの引き立て役でしかない」
釘を刺される。
わざわざ本人を前にそんな言い方はしなくて良いじゃないかと思ったけれど、言い返したところで何かが改善される訳もなく、寧ろ悪化するだけ。
そう割り切っていた私は、心をおくびにも出さないよう気を付けつつ、「分かりました」とだけ返事をして呼び付けられた父の執務室を後にした。
◆◇◆◇◆◇
「……あぁ、さいあくだ。ほんと、私はお父様やお母様の都合のいいようにく人形じゃないってのにさ」
自室へと戻ってきた私は、先の父とのやり取りに対しての愚癡を吐く。
パーティーに參加しても、私に得らしい得がない事など分かりきっている。
だから、憂鬱極まりなかった。
「……絶対、落ちこぼれ令嬢だ。出涸らしだ。汚點だなんだってパーティーで私、口叩かれまくるんだよ、これ」
両親が私を參加させたくない思。
加えて、私自がパーティーに參加したくないが見事に合致した事で、私がパーティーに最後に參加したのはかれこれ六年近く前の話だ。
でも、六年も前の出來事を私は昨日の事のように覚えてる。
なにせ、周囲の同世代の令嬢から散々な扱いをけたから。
「ねえ、ハク(、、)。どうにかして、パーティーを欠席出來ないかな」
何もない虛空に向かって、私は話し掛ける。
事を知らない人間からすれば、私のこの行は正気を疑うものだろうが、私は至って正気である。
それを証明するように、程なくして私の言葉に対する返事がやってくる。
同時、何もない筈の場所から白いモコモコとした生が姿を現した。
『無理じゃない? 出來ないから、ノアのお父さんだってあんなに嫌そうな顔で參加しろって言ってたんだし』
「……だよねえ。でもほら、諦めきれないっていうか。いや、ほんと、不參加に出來るならお父様達からの評価はどれだけ下がっても構わないんだけど」
『ノアの評価は、もう下限を何回か限界突破し終わってると思うんだけど』
「……ハクって本當、そういうところ容赦ないよね」
私に対して現実を現実として突きつけてくるこの生の正は────〝霊〟と呼ばれる存在。名前を、ハク。
羽の生えた蜥蜴のような姿をしているが、これでも〝霊〟の中でも上位に位置する高位霊であるらしい。
私がハクと出會ったのはもう隨分と昔。
かれこれ、十年以上の付き合いになるだろうか。
屋敷に居場所らしい居場所がなかった私が、こうして何とか逞しく生きられているのも、ハクの存在が大きかった。
今や、かけがえの無い私の相棒である。
……言いに遠慮がないのが玉に瑕だけど。
『そりゃ、現実逃避してどうにかなる訳じゃないからね。でもさ、そんなに嫌なら逆に評価を上げてしまえば両親からの協力を得られるんじゃない?』
まさかの逆転の発想。
しかし、ハクのその考えは割とアリではあった。ただし。
「……どうやって、お父様達の評価を上げるの?」
『そりゃあ、決まってる。僕を使えば────』
「卻下。絶対やだ。それはなし。論外」
捲し立てるように拒絶四連コンボを決めて、私はハクの提案を容赦なく蹴り飛ばした。
ハクは己を使えばと言ったが、それはつまり、魔法の才は勿論、他に突出した才もなかった私に〝霊〟の適があったと伝えろという事だ。
その才を私があえて隠し続けている事を、ハクだけは知っていた。
「私の將來設計、ハクにも話したでしょ。私は、人と同時に家を出る予定なの。その為にお金だって頑張って貯めてるのに」
このままいけば、私の將來は間違いなく碌でもないものになる。
貴族令嬢として生まれた以上、貴族の責務を果たすべきなのだろうが、私としては両親に対して、そもそも家に対して悪しか抱いていない。
だから、家名に泥を塗るだとか。
そう言った事で気に病む心を持ち合わせておらず、それ故に私は人と同時に家を出るつもりでいた。
「……それに、それがなくても私は両親にだけは打ち明けないよ。打ち明けてどうなるの? 腹のを知ってる両親から今更、チヤホヤされても嬉しくも何ともないし。どころか、そんな事をされても、気持ちが悪くなるだけじゃない?」
〝霊〟の才能に目覚めたのは、本當に偶然。だけど、私は決して両親含む屋敷の人間にだけはそれを打ち明けようとしなかった。
その理由は、これ以上、生家であるアイルノーツ侯爵家に関わりたくなかったからだった。
だから隠した。
それは、これまでも。
これからも打ち明ける予定はない。
『……ノアはさ。見返したいとは、思わないの? これまで、散々酷い事を言ってきた人間の度肝を抜いてやろう、とか』
「ないかな。それ以上に、相手をしたくないって気持ちのほうが大きいし。あ。あと、早く家を出たいから。私の願いはそれだけだよ、ハク」
それもあって、面倒事は極力避けたかった。
エスターク公爵家で催されるパーティーにも欠席したい気持ちで山々だったが、恐らくそれは無理だろう。
會場の隅っこでひたすら時間が経過するのを待つか。それか、隙を見て會場から抜け出して時間でも潰して耐えるか。
「それに、〝霊〟をそんなつまらない目的で使う気はないから。そんなことで力を使ったら、手を貸してくれてるハクに失禮じゃん」
〝霊〟を扱うには、〝霊〟への適は勿論のこと、契約をわした霊の助力が欠かせない。
私でいえば、ハクだった。
「というか、〝霊〟を滅多な事で使うなって言ったのはハクじゃなかったっけ?」
約十年前。
ハクと出會い、契約をわした私は、ハクから口酸っぱく〝霊〟を滅多な事で使うなと言われてきた。
その理由は、私の力を悪用しようとする人間がいないとも限らないから。
だから、出來る限り使うなと言われていた。
私としても、その忠告には納得しかなかったのでかれこれ十年近く聞いてきた訳なのだが、最近になってこうしてハクは使っても構わないと言わんばかりの言いをするようになった。
『……僕としても、思うところがあるんだよ。契約者であるノアが、何も知らない人間に好き勝手言われるのは、腹が立ってた。いい加減、その認識を改めさせてもいいんじゃないかって、最近は思うようになってさ』
「……そっか。そっかそっか。いやあ、私の側にハクが居てくれて本當に良かった。おで、憂鬱だったパーティーもどうにか頑張れそう」
『なんでそこで僕にそんな生溫かい視線を向けてくるのか、甚だ理解に苦しむけど、力になれたなら良かったよ』
納得はしていないようだったけど、ジト目で私を見詰めながらハクは溜息を吐いた。
私がこうして笑っていられるのも、ハクが居てくれたから。
今度、ハクが好きなおやつでも作ってあげないとな。
そんな事を考えながら、私は相好を崩していた。
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