「眠い」

ストレンジTVに新しいチャンネルが加わって以降、智子には寢不足の日々が待っていた。

翌日が仕事だと分かっているのに観てしまうのは、あまりにもあのが可哀想だからだ。

番組に出會って早く一ヶ月。

あらすじもなく、説明もないあのドラマは謎が多い。

それでも寢ずに見れば、分かった事は多かった。

あの黒髪のの名は宮森玲奈と言って、宮森財閥という名家のご令嬢である。

そして宮森財閥の當主が玲奈の父親の宮森雅紀だ。

彼は政略結婚で玲奈の母である三條沙耶と結婚した。華族の家系である三條家の筋をんだ雅紀の両親が、手放しで喜んだ結婚相手だ。

しかしい頃から雅紀は家に縛られるのを嫌い、沙耶と婚約していたにも関わらず、高校で出會った織と人関係になる。

雅紀と織は自分達の関係に酔いしれ、仲を深めていった。

その結果、沙耶との結婚後も二人の関係は続いた。

沙耶と織、二人は同時期に雅紀の子を宿す。どちらも可らしいの子だった。

雅紀は病気がちの沙耶を療養のためと離れに住まわせ、織を母屋に住まわせた。

そして沙耶と玲奈にはお金だけを渡し、母屋には決して近づけさせなかった。そのお金も僅かなもので、二人は決して裕福な暮らしをしていない。

その環境からか、沙耶のい頃からの使用人の斉藤以外、ほとんどの人間が沙耶と玲奈を蔑ろにしていた。

織の娘の里は、その環境に慣れているからか、常に玲奈を見下していた。

玲奈はそれでも沙耶のために勉學に勵み、マナーをに付けていた。

それというのも、宮森家には必ず決められた婚約者が充てがわれるからだ。

里には自由を味わってほしいと、雅紀は玲奈を生贄に決めた。

そしてそのためには彼が優秀でなければならないと、厳しい家庭教師をつけ、習い事もさせた。

おかげで10歳になる前だというのに、玲奈のスケジュールは常にいっぱいだった。

それなのに隙間の時間を見つけては、母親を訪ねる健気ななのだ。

（なのにあのクソ男も使用人も頭おかしいんじゃないの！？）

智子は苛立ちに任せてキーボードを叩く。

あのドラマを見れば見るほど、管が切れそうになる。

どう考えても沙耶にも玲奈にも非は無いのに、周囲が彼達を悪し様に言うのだ。

そもそも智子が報を知ったのは、玲奈が使用人や親戚から聞こえよがしに笑われているの聞いたからだ。

あのドラマは、常に玲奈がいる場所が寫される。そのせいか、得られる報は聞こえよがしな悪口からだけだ。

不思議なのは、決して玲奈視點では無い事だ。ただただ淡々と、玲奈とその周囲の映像が寫される。

たまにこれが現実なのでは、と勘違いしそうになる程リアルで、それが余計に苛立ちを募らせた。

（あーもう、ムカつく！ 誰かヒーローは出てこないの！？ 誰でもいいから彼達を幸せにしてよね！）

智子はすっかり、玲奈と沙耶の幸せをむようになっていた。