《腐男子先生!!!!!》11「その子から、手、離せよ。嫌がってんだろ」
「っしゃ」
朱葉が小さなガッツポーズをした。
繁華街からちょっとはずれたゲームセンターの端。
學校のない、日曜日のことだった。
好きなキャラクターのキーホルダーが景品《プライズ》として出ることを知って、いそいそとやってきたのだった。
幸いなことに目當てのキーホルダーはクレーンの設定も易しく、一度目の五百円でとることが出來た。
(やったね)
上機嫌でキーホルダーを取り出す。顔のペイントも悪くない。
じゃああとは、一番くじの様子でも見て帰ろうか……そう思って、歩き始めたその時だった。
(あれ?)
クレーンゲームに張り付いている、背の高い影。
(あれって……)
後ろ姿だけれど、間違えようがない。そこにいるのは朱葉が毎日顔を合わせている生教師、桐生和人の、オフの方だった。
(まあ、別に意外ではない)
と冷靜に朱葉は分析をする。このゲームセンターはこの辺りでも、一番景品のれ替わりがはやく、アームの設定も平易で、ゲームのそれぞれの待ち時間もない。
アニメショップとゲームセンターはオタク同士、いつ顔を合わせてもおかしくない場所だった。
(何とってるんだろ)
首をのばしてみれば、人気アイドルゲームのおだんごのごとく丸いクッションだった。
(げー、あれ、難しいんだよね……)
朱葉は足をとめ、様子を眺めた。コインを投している時に聲をかけて、集中力を切らしたら可哀想だと思ったのだ。そのあたり、朱葉は教師思いの実によく出來た生徒だったといってもいいだろう。
(もうちょっと、がんばれ!)
何度かクッションをつついて、とれやすい角度にもっていく。さすが桐生、クレーンゲームも玄人がある。
(いける!!)
いま、そこだ! そう思った、その時だった。
「 !!」
突然、桐生の橫から出てきた影が桐生の腕に飛びついた。がくっと、桐生が勢をくずし、アームがむなしく空をきる。
(あ、あー……)
あれは、殘念だろう。そう思って視線をずらして、朱葉はまばたきをする。
(え?)
まず、目にったのは長い髪だった。桐生に話しかけた相手。長の桐生と並んでも、遜がないくらいすらりとした高い背。ヒールの高いブーツ。服裝も、オタクが好きそうなゴシックチャイナだ。ただの私服ではなく、ばっちりとした、よそ行きの服。
桐生の方は、いつものように野暮ったい姿だけれど。
(連れ……?)
朱葉の耳は、ゲーム機から鳴り響く音が蓋をしている。だから、二人が何を喋っているのか聞こえてこない。ただ、初対面、という風には見えなかった。それはそうだろう。そうじゃなかったら、腕に飛びついたりしない。
桐生の方も、ゲームが邪魔されて怒ったのか、首に腕を回してヘッドロックをかけている。その姿は、どう見ても。
……どうみても、なんだ?
同級生の、夏が言っていた言葉を思い出す。桐生和人。獨彼なし。でもそれって、その時點の報だし、いつアップデートされてもおかしくないわけだし。そもそも、その報が本當だと、いつから錯覚していた?
(いやいや、友達かもしれないし)
そう、朱葉にだって友達はいるわけだし。
(いや、でも、ゲーセン一緒に來るような、男友達は、わたしには、いないぞ)
そう考えたら、なんか、ちょっと、落ち込んだ。その落ち込みがなんなのかは、朱葉にもいまいちわからなかった。
手の中のキーホルダーが、とたんあせて見える。さっきまで、めちゃくちゃ可かったのにな。
(ちぇっ)
もういいや、帰ろう。そのままエレベーターを待っている間に、顔をあわせたりするのが嫌で、朱葉は扉をあけて非常階段に出た。
(二次元の方が味いんじゃなかったのかよ)
ばーか、と思いながら。非常階段の踴り場におりようとして、
「お、コンチワ~」
煙草を吸っている若い男グループに聲をかけられて、足を止める。
「……」
そのまま歩き去ろうとしたが、前に立たれた。
「ねぇねぇ、ひとり?」
「暇なの?」
そんなに悪い相手だとは思わなかった。そのまま無言で立ち去ってしまえばいいことで。戻ってエレベーターに乗ったっていい。嫌だけど。
「どいてください」
苛立ちをにじませて朱葉が言った。けれど相手は、「いくつ?」「子高生?」とからかい聲をやめようとしない。
いよいよ朱葉が、無理矢理通ろうとして、肩をつかまれた、その時だった。
「やめろよ」
階段の上。背中から、ドスのきいた聲がかかった。
「その子から、手、離せよ。嫌がってんだろ」
振り返る。
知らない、人。ではなかった。いや、知らない人ではあるのだが。
(ええ……)
ゴシックのったチャイナ服にを包んだ、黒髪ロング。それはどう見ても、さっき桐生と一緒にいたひとではないか?
そして、ヒールをはいて、化粧もしているが。その聲は……。
「うわ! キメェ」
男達が思わず聲を上げ。
「誰がキメェじゃぶっ殺すぞ!!!!」
……黒髪ロングは、そう、啖呵をきった。立派なのど仏と、男の聲で。怒鳴られた男達はそそくさと逃げていき、そう思って見直せばあまりにガタイが立派な黒髪ロングはヒールを鳴らしながら踴り場におりてきて、言った。
「大丈夫?」
どうやら煙草を吸いにきたらしい。呆然と朱葉は見上げ、言っていた。
「……おとこの、ひとですか?」
「ピンポン♡」
両手を頬にあてて、いたって楽しそうに、黒髪ロングが言った。
するとばたばたと、今度は聞き慣れた聲がして。
おだんごクッションを抱えた桐生が喜満面て飛び込んできた。
「おーーい秋尾《あきお》! とれた、とれたぞ!」
見て見てー! と見せてくる桐生が、私服の朱葉と目が合って。
朱葉は思わず、言っていた。
「先生やっぱり、ホモだったんですか!!!!?」
沈黙。眼鏡をおしあげ、とりあえず、という風に桐生が言った。
「なんかよくわかんないけど毆っていいかな? 早乙くん」
なんだかよくわかんないけど、お斷りです、先生。
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