《腐男子先生!!!!!》18「泣かないで、先生」
12月にり、寒さが厳しくなり、インフルエンザも流行り始めているという。寒い教室でホッカイロを握る金曜日、三限目の生の時間。教室にってきた桐生を見て朱葉はぎょっとした。
「せんせーどうしたの?」
クラスメイトから問いかけが飛ぶ。
「風邪です、風邪」
かすれた聲で、桐生が言った。ああ、なんだ風邪か、と朱葉はちょっと肩をなでおろす。びっくりしてしまった。大きなマスクで顔を包んで、どこかくたびれた様子は、いつもの隙のない「桐生先生」とは様子が違っていたから。
どちらかといえば、朱葉の見覚えのある姿になってしまったのかと思って。
「インフルエンザですかー?」
「休んだほうがいいんじゃないですかー?」
自習を期待したクラスメイトが口々に言う。
「一応朝一で病院行って調べてきましたのでご心配なく。ただの風邪です。よって自習もありません」
マスクの奧のくぐもった調子で、けれどはっきりと言って。たまに咳き込む以外はこれといって特別変わったところもなく授業は進んだけれど。
終わり際、プリントを整えながら桐生が言った。
「皆さんもくれぐれも調には気をつけるように。──ただの風邪ですが、うつったら困るのはかわらないので、今日は生準備室は面會謝絶です」
その言葉に、
(あ、わたし宛て)
と朱葉は、顔には出さずには思った。ので、不自然ではない程度にこくこくと頷いた。
今のは多分、自分あてだろう、というのは特別扱いのうぬぼれとかそういうのではなくて。
普通に、順當に、他にはあるまいと思うのだった。
(面會謝絶て)
いや、別に、全然困らないけど。
(大丈夫なのかな……)
確か、明日は土曜日。DVDの発売イベントだったはずでは?
大人力を見せつけて、イベントに行けることを自慢していたはずではなかったか。その時のことを思い出すと、結構腹が立ったので、あんまり心配は、してやらないことにした。
翌日土曜日は學校もなかったので、早朝に一度目覚ましで起きてゲームのスタミナを使って二度寢をしたら、本格的に起きるのは晝近くになっていた。
(原稿……)
冬コミが近づいている。朱葉はスペースはとってはいなかったが、カップリングアンソロジーに寄稿を予定していた。
週明けには提出だが、一応あと一日もあれば仕上がる目処は出來ている。今日か、明日。仕上がったらゲームをするか、漫畫喫茶でもいくか……。
そう思っていたら、スマートフォンに通知がった。
(ん?)
メールでも、著信でもない。
(メッセージ?)
SNSの、他者から見えないクローズドなメッセージが一通。開いてみて、目を疑った。
>すみません。先日ライブビューイングのチケットを取引させていただいた者ですが、本日時間ありますか?
取引用のアカウントから、他人行儀な口調ではあるが。
(先生じゃんか)
なんとなく用件は想像がついたが、返事をする。
>先日もありがとうございました。今日、あいてますよ。どうしましたか?
>実は、調を崩してしまい、今朝から熱が下がらないため、予定していたイベントに行けなくなってしまって。
よかったら、代わりに行ってきてはもらえませんか。
>構いませんけど、大丈夫ですか?
>心配には及びません。週明けには治すつもりですが、出演者及び他の観客にうつすわけにはいかないので。
いや、そういう大丈夫じゃなくて。
今、ユーが大丈夫かどうかって聞いてるんですけど。
まあ、自分のより大事なことがあるのだろう。
>會場前までチケットをもっていきますので、代金はいりません。もらってください。
>會場前でなくとも、そちらの最寄り駅まで行きますよ。改札から出なければ、どうせ行く道なんで。
本當は、家まで行きますと言ってあげたかったけれど。まあ、それは々、まずいだろう。例によって。
プレイでも、オフでも、曖昧にして、踏み込んではいけない距離があるはずだった。
イベントの30分前を待ち合わせにして、メッセージのやりとりを終えた。
さて、これからシャワーを浴びて、服を著替えて用意をしなければいけない、のと。
「おかーさーん。熱冷ましのシートって、まだあったっけー」
部屋を出ながら、朱葉が尋ねた。
時間通り、地下鉄駅の改札近く。銀の柵のそばに立っていたら、小走りでこちらにくる背の高い影。
「走らなくて、いいですよ!」
気合いのぬけたジャージにロングコートとマフラーで。あとがっつりマスクをつけて、ちぐはぐなじで桐生がやってきた。
「ほ、ほんとに、大丈夫ですか?」
思わずのぞき込むみたいにして聞いたら、桐生がのけぞりながら。
「早乙くん。だめ。マスクして」
まだ未開封のマスクを渡される。あ、はい、と朱葉がそのマスクをした。どうやら今日は、『取引相手』のロールプレイをするのもしんどいらしかった。
「あの、じゃあ、これ」
渡される。イベントのチケット。とても楽しみにしていたもの。
目に見えて、桐生の背中がまるまって。
「めちゃくちゃ不覚……」
「泣かないで、先生」
あんまり可哀想なじにうなだれたので、思わずその背中をぽんぽんとしてしまう。一応、真面目に、可哀想に思ったから。
「レポ絵描くから」
「おっし」
一瞬で背中が戻った。
「立ち直りはやすぎじゃね? なんなの?」
「これでぱぴりお先生に譲ったかいがあった」
「いや、最初からそれ期待してたでしょ? 汚くない? どうなの?」
元気なら、いいけどさ、と朱葉は思う。
いつまでも改札の柵を挾んで話してはいられない。
「じゃあ、行くんで」と言った朱葉が差し出したのは、小さなコンビニ袋だった。
「これ」
「いや、お金いらない……」
「違うって。うちにあまってた冷卻シート。あ、電車くる!」
じゃあまた、月曜日に。
電車のる音がしたので、朱葉が駆けだした。
「…………」
桐生は小さくなるその背を見送った後、まだし朦朧とする頭で、コンビニで薬を飲むための水を買い、レトルトのおかゆを買った。
ひとりで暮らす家に帰ってから、靴をごうとして。
ふと、朱葉から渡された、小さなコンビニ袋が目にったので、中を見て見ると、確かに封のあいた、冷えピタがひとつ。
(使いかけ……?)
でもないだろうに、頭が切られていたから、なんの気なしに取り出してみれば。
「…………ああ、やばい」
ずるずると、そのまま玄関先に、座り込んでしまう。
手の中に握った冷卻シートには、手書きのサインペンで、桐生のしたキャラの絵と、『げんきになってね』の文字。
「熱……あがる」
かすれた聲で、呟いたけれど。
誰の耳にも、屆くことはなかった。
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