魔力暴走した場合の問題があるので、実技練習をするのは人気が無い時。すなわち、伯爵家の皆が領地を離れる社時期になってから、ということでそれまでにセシルはひたすらに座學を極めた。また、安全のために防壁機能を持った指―――伯爵家の人間に見つからないよう首から下げた―――や、それでも傷を負った場合に使えるようにと、かなり治癒レベルの高い傷薬など、アレックスは過保護ともいえるほどセシルに惜しみなくと學力を與えた。

そうして、多の魔力暴走を経つつも、まずは空間の裂け目を作る方法を―――これを自分のバッグなどとつなげると、収納魔法となる―――、そして徐々にその亀裂を広げ、１６歳の時にはなんとか人がれるサイズまで大きくすることが可能となり、セシルは移転魔法を習得できるようになった。とはいえ國境を超えるほどの長距離移は未だ行っていない。現地に直接足を運んだことがあり、自分がその場所に立っているイメージを明確化できる方が、失敗がないためだ。そのため、領地の屋敷から出たことのないセシルは、部屋の移くらいしかやったことはなかった。

本格的な移転魔法は、貴族籍返還手続きをして平民になってこの場所から逃げだしてから、と人を待っていたところに、いきなり王命が下った。

「お前のような化けが王家に嫁げるとは」

「我が家に益となるべく、その命を王家に捧げろ」

勿論お前が王太子妃として長くその地位にいられるとは思うなよ、との言葉と合わせて伯爵から無に王命を伝えられたセシルは、彼らの前では一切その表を変えることはなかったが心の中ではただ只管に泣いた。

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「大丈夫。王太子は王命の意味も理解できない馬鹿みたいだから」

用事があったのか數日來られないと言っていたアレックスがセシルのもとへ現れたのは、王命により學園に編するために領地から王都へ移する前日であった。

「王太子には人がいて、そっちを王太子妃にしたいみたい。セシルの爵位が低いのも気にらないみたいだし、きっと王太子とどうこうなることはないと思う…って王太子妃になりたいとか思ってた？」

揶揄うようにアレックスがセシルに訊ねる。

「まさか。私が師と一緒に屬研究所で働くことを楽しみにしているのは、知ってるでしょう？　それに、何より王太子妃になれば、待っているのは子供を産んだ後の毒杯でしょうに。それをむほど、自殺願はないわ」

セシルはし膨れた表を見せる。

アレックスと過ごすようになり、アレックスの前でのみやっとセシルはしずつ表を出すことが出來るようになった。

普通の人に比べて、隨分と小さな変化ではあるけれど、アレックスはセシルのその変化を見逃さない。よしよしと頭をでてから、しだけ膨れたその頬にツンと人差し指をあてる。

「膨れないの。セシルの可いお顔が臺無しだよ」

アレックスは、よくセシルの頭をでて可いを連発する。セシルは、自分にそんな言葉をかけてくれた人間は今まで誰もいなかったので、アレックスに言われるたびに未だ頬が染まるが、その反面いつまでも子ども扱いされていることに、だんだん悲しくもなっていた。

最初のうちは盲目的に師という存在を慕っていたセシルは、徐々にその気持ちが崇拝から師が重ねてきたその努力に対する尊敬へ、そして毒舌だけれどもセシルを常に守ろうとしてくれる優しさを攜えた師本人への思慕へと変化してきたことに気付いていた。しかしながら師とは１２歳も年が離れているため、師にとっては妹もどきか、あるいは同されるような劣悪な環境にいたことに対する庇護でか、自分がまだまだい子供に見えるからこそ、事あるごとに自分の頭をでてくるのではないかと思えて仕方がなかった。１７歳は一般的には立派な淑といえる年齢。婚姻は１８歳からが一般的だが、１６歳以降なら認められているため、婚約者でもない相手に頭といえどもむやみにれられるのは良くないのでは、とは思う。

そんなことを言えば、本來異と二人きりで部屋にいること自が問題ではあるのだけれど、とセシルは本的な問題に突き當たる。伯爵家にばれないためには仕方がないとはいえ、ありえない狀況のはず。それなのに、師が一切気にしている様子がないというのは、やっぱり妹くらいにしか見えてないということよね、とあまり長していない自分の部を思い出しながら、こっそりとセシルはため息を吐いた。

下手なことを言って、師が頭をでてくれなくなるのも、それ以上に自分のところに現れてくれなくなるのも嫌だもの。そう考える自分をずるいとじながら、それでもセシルは何も言わないことを選択する。

「王命を何とかしないとね。本當だったら人したらすぐ行う予定だったけど、卒業まで貴族籍返還を待ってもらってもいいかな？」

申し訳なさそうにアレックスがセシルの顔を覗き込む。

何か企んでいるらしいが、セシルは師がむならどこまでも付いていくつもりでいるので、気にせず頷く。

「師のむとおりに」

誤字報告いただきました。ありがとうございます。修正いたしました。