《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》23※
私はクーが負けるつもりでいることを、すこし間があった返事で察知した。
クーは目立ちたがり屋ではない。それは分かっていたこと。だけど、だからってわざと負けようとするのは許さない。
「クーの防は心配しなくていい。私は私のことをするだけ」
それにしてもクッキーを買っておいて正解だったわね。とはいえ、1個しか用意していない。どうしようかな…
「っ!」
魔力の塊が飛んできたので、それをかわす。
そしてすぐに飛んできた場所を把握する。どうやら上かららしい。厄介ね…
「あれをかわすかよ…」
「殘念だったわね」
正直なところ、かなり危なかった。私がかわせたのには理由がある。
魔力を塊をぶつける方法。それは、クーがよく使う攻撃手段。だからこそ分かった。
……まぁあの子はそれ以外にも々出來ちゃうんだけど。
『白』は攻撃手段をほとんど持たない。だから魔力の塊を飛ばすことが多い。
それをねじ曲げてしまったのが彼だけど。それが嬉しくもあり、危懼している。
クーの力は強力。だからあまり人に知られる訳にはいかない。それはクーも理解している。だから目立たないよう負けようとしたんだろうけど…私が負けたくないのよね。
「まぁ、クーならバレないよう上手くやるでしょう」
「さっきから何言ってんだよっ!」
今度は水の塊が飛んできた。それを同じ水の塊で相殺する。へぇ。なかなか。
「じゃあこっちから《エアバレット》」
「《エアバレットっ!》」
またしても相殺。これじゃあ埒が明かない。
「並列。《ファイアボール》《ファイアバレット》」
相手と同じ高さへと移し、ふたつの魔法を同時に行使する。同じ屬で並列するのはそこまで難しいことでは無いけれど、高等部1年生でできる人はあまりいない。
……それを初等部でやった子なら知ってるけど。
「なっ!《ファイアボールっ!》」
どうやら相手は出來ないようね。ファイアボールは相殺されたけど、ファイアバレットは生きている。
さすがに直接狙うのは危険だから、相手の後ろにあるフラッグを狙う。フラッグは燃え上がり、炭になる。フラッグを破壊するのも可なのよね。
「くそっ!」
やぶれかぶれの突進。魔法しかできない人なら有効かもね。
「でも殘念」
キレイな一本背負いを決める。それでネックレスが割れる。ふぅ。
「あーあ…」
「楽しかったわ」
私がそう言うと、相手は悔しげな顔をして去っていった。
『赤チームフラッグ全滅!よって青チームの勝利!』
どうやら終わったようね。後でクーにクッキーあげないと……あれ、高かったんだけどなぁ。まぁクーの笑顔が見たいからいいんだけど。
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