《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》30

サラから著替えをけ取ったクーリアは、その服に袖を通して、すぐにそれが高いものだと悟った。

なぜなら、普段クーリアが使うものとは、比べにならないほどりがよかったのだ。

「サラ、これって…」

「ふふ。驚いた?」

サラはまるでイタズラが功したことを喜ぶように微笑んだ。

その反応を見て、クーリアはふくれっ面をした。

「こんな高いもの…」

「いいのいいの。それあげるから」

サラがこう言ったら聞かないことを、クーリアはをもって知っていた。これを斷るとより高いものを押し付けられるのだ。なのでクーリアは、渋々その服をけ取ることにしたのだった。

場所は変わり、クーリア達はサラの寢室のベットに寢転がっていた。

寢室ではあるが、その広さはパン屋にあるクーリアの部屋の5倍はあるだろう。

「クー、今日はどうだった?」

「どうって?」

「対抗戦よ」

あぁ…と納得した様子のクーリア。

「異(・)常(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)よ(・)」

その言葉の本當の意味を、一どれだけの人が理解できただろうか。

「そっか…って、そっちじゃなくて!」

「うにゅ?」

思わずクーリアが変な聲を出す。

(それ以外に何かあったっけ?)

「クー的には対抗戦、楽しかったの?」

「あぁ……うん、まぁまぁかな」

クーリアにとってのまぁまぁがどれだけのものなのかは、その本人にしか分からない。だからとても曖昧な答え方だ。

「曖昧ねぇ……まぁしは楽しめたんだ」

「うん」

クーリアは楽しんだ…というより、実(・)験(・)が(・)楽しかったのだ。

(あの防魔法はまだ改良できるよね)

サラと會話している間でも、クーリアは平常運転であった。

「サラは?」

「わたしもまぁまぁかな。でも、骨がある相手とは會えなかったよ」

そもそもサラを満足させる、互角に戦える人は、ほぼいないだろう。それだけサラには実力があったのだ。

「だから明日は付き合って!」

「えぇー…」

付き合って、とは、つまり模擬戦して!ということである。サラにとってクーリアは、ほぼ互角に戦える貴重な相手だったのだ。

………もっとも、サラはクーリアに手加減されていることに気づいているのだが。

いつかは手加減なしで戦いたい、というのが、サラの目標でもあった。

「……まぁいいけど」

「やった!じゃあおやすみ!」

そう言って本當にすぐに眠ってしまった。

現在クーリアはサラと同じベットに寢ている。クーリアは隣ですぐに寢息を立て始めたサラに苦笑しつつ、自分もベットへと潛り込んだ。

………皆が寢靜まった夜。ベットから起き上がる1つの影があった。

その影は口にハンカチを當て、咳き込む仕草をする。だが、そこに"音"は無い。

そうして口から離れたハンカチには………赤いシミが出來ていた。

その影はそれを見て何かを呟いたが、全くもって聞こえはしなかった。そしてそのままベットへともぐりこみ、何事もなかったかのように眠ってしまった。

音はなかったが、口のきから、おそらくこう言ったのだろう。

『まだ、時間はある』と……

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