《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》35

それからクーリアは、サラの父親と晝食を共にした。

「そういえば、お母様は?」

「まだ仕事がある。だが、夜には帰れるそうだ」

その返答を聞いて、サラが嬉しそうにする。

なぜなら、両親がそろうことなど最近ほとんどなかったからである。

「じゃあわたしはこの辺で…」

親子水らずの時には邪魔であろうと判斷し、クーリアは帰ることを告げた。

「あぁ。すまんな。もっとゆっくりして行ってもらいたかったが…」

「殘念だけど……じゃあ玄関まで送るね」

そしてサラの父親に別れの挨拶をし、サラと共に屋敷の玄関へと向かった。

「あ、そうだ。クー、これあげる」

そう言ってサラがクーリアに渡したのは……片耳分のイヤリングだった。裝飾などはなく、明な小さい石が付いているだけのシンプルなもの。

「なにこれ?」

どこからどうみてもイヤリングではあるが、サラが普通のイヤリングを渡すなど考えられない。

……まぁ普通のイヤリングをサラが渡すとしたら、裝飾が綺麗などう見ても高価なものになるだろう。

「これは通信よ」

「通信?」

「そう。わたしのものと一対になっていて、魔力を流せばいつでも、どこでも會話できるの」

通信はかなり広まっている道ではある。現にクーリアも母親…フィーリヤと通信できる通信を持っている。

だがそのことから分かるように、難點は決まったペア同士でしか通信できないということだった。

なのでサラは、クーリアに新しい通信を渡したのだ。

……だが、疑問點はそこではない。

「なんで今これを?」

そう。何故今(・)渡したのかということが疑問なのだ。

「……明日、もしかしたら(・)き(・)が(・)あ(・)る(・)かもしれないの」

その言葉だけでクーリアはすべてを理解した。

「分かった…じゃあ明日は付けとくね」

「その…できるならいつもつけてしいなぁ、なんて…」

そもそもいつもにつけなければ、通信を持っている意味がないのだが。

「…分かった。じゃあ付けて?」

「分かった!」

サラが妙に嬉しそうにする。なぜならクーリアは、基本そういった裝飾品をにつけないからである。

(絶対付けたほうが可いのに!)

サラはクーリアを可くしたいらしい……。

(はた迷な……でも、まぁ…サラからならいっか)

なんだかんだ言って、クーリアも満更ではないようであった……。

「うん。似合うよ。お揃いだね」

サラが耳にかかった髪をあげ、右耳についたイヤリングをクーリアに見せた。ペアなのだから、お揃いなのは當然なのだが。

「そうだね。ありがとう」

「どういたしまして」

「じゃあバイバイ」

「うん。バイバ──ちょっと待ちなさい」

帰ろうとしたクーリアの首っこをサラが摑む。

「な、なに?」

「これ、忘れてないよね?」

サラが紙袋を差し出す。その中は…昨日クーリアが寢る時に著せられた服であった。

「うっ!」

「やっぱり分かってて帰ろうとしたのね!?」

當然である。

「はい、ちゃんと持ちなさい」

「……分かったよ」

渋々クーリアはサラから紙袋をけ取った。

「じゃあまた明日」

「……うん。バイバイ」

「バイバイ」

そう言って今度こそ、クーリアはサラの家(屋敷)を後にした。

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