《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》39

「くそっ!なんだこれは!」

「分かりません…ただ、魔法であるとしか」

「くそっ!こんなものを使うなど卑怯だ!」

(卑怯なのはどっちなのか…)

そんな會話を聞いて、クーリアは呆れていた。

なぜなら、煌びやか裝をにつけた男子の周りに、騎士の格好をした男4人が立っていたからである。

ここにいる人數だけで規定人數をオーバーしていた。

「はぁ……」

ため息しかでない。とはいえ魔法の腕はあるらしく、クーリアの防魔法を確実に削っていた。

そして耐えきれなくなった防魔法が、パリンっ!という音を立てて砕け散った。

「ははっ!この俺にかかればこんなもの!」

「はぁ…」

2度目のため息を吐く。1(・)枚(・)だ(・)け(・)と誰が言ったのか。

「なっ!?」

砕いたはずなのに、フラッグを取れず、というより、近づくことすらできないことに驚きの聲を上げる。

「多重にするのは基本でしょうが…」

結界であれ防魔法であれ、2枚以上重ねるのは基本だ。結界より脆い(とされている)防魔法ならば尚更である。

(この人頭お花畑なのかな)

クーリア、毒舌である。

「なんで!この!」

また壊そうと魔法を放つ。周りの騎士たちも剣で叩くが、中に張ってあった防魔法のほうが外側よりも強力なので、割れることは無い。

「なん、で…くそっ!!」

男子の額に汗が浮かび、息遣いが荒くなる。どうやら魔力が切れかけているようだ。

「うーん……あ」

このまま放っておいたとしてもフラッグが取られる心配はないので、別にいいのだが、クーリアはあることを思いついた。

「えっと……あ、あった」

クーリアが探していたのは、監視の魔道。それに魔力の塊を當て、向きを変える。ちょうど男子がるように。

『赤チーム違反行為により失格!』

案の定、すぐに失格宣言が出された。判斷が早い…まぁ、一目瞭然なので當たり前だが。

「な、なぜだ!ここは見られないはず!」

「わ、分かりません!」

アタフタとあわて始める。そもそも違反行為をしてバレないと思うほうがおかしい…

(うん?じゃあなんで今までバレなかったの…?)

唐突にその疑問が浮かんだが、その時、小さな巖に隠れていたクーリアと男子の目が合ってしまった。

「お前かっ!」

「あらー、バレた」

見つかってしまったので、ひとまずその疑問は置いておくことにした。

「失格ですから、早く退場しては?」

「そんなこと認められるか!《ファイヤーボール》!」

何故ここまで往生際が悪いのか…

「はぁ…《リジェクト》」

ため息をつきつつ、短くクーリアが呟く。すると、クーリアに向けて飛んできていたファイヤーボールが空中で靜止した。

「なっ!?」

「お返ししますね」

そう言うと、ファイヤーボールが男たちのもとへとひとりでに返っていく。ちなみに、監視の魔道は魔法を使う前に向きを戻してあるので、クーリアが何をしたのか見られる心配はない。

「う、うわぁぁ!!」

ドカァンっ!とファイヤーボールが著弾し、男たちが吹き飛ばされる。

(うわぁ…規定違反級の威力じゃん)

男たちは吹き飛ばされた衝撃で気絶していた。それだけの威力が、男の魔法にあったのである。

「あー、テステス。サラ、聞こえる?」

『……はーい。聞こえるよ』

耳に著けたイヤリングに魔力を流すと、サラの聲が聞こえる。

「終わったよ」

『了解。大丈夫だった?』

「もちろん」

『流石だね』

もともとサラは今回、違反行為が行われることを知っていた。きがあるという言葉は、そのことを指していたのだ。

「それ以外はない?」

『うん。今(・)の(・)と(・)こ(・)ろ(・)は(・)ね』

「分かった。とりあえず行くね」

『うん』

クーリアはそこで通信を切り、男たちを放ったまま、サラ達のもとへと向かうことにした。

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