《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》44

「あの時は助けなきゃってことだけ思ってたからね…」

倒れたことを思い出し、クーリアが呟く。

「その時もこうやって尾で包んでくれたよね」

「……ガウ」

銀狼は未だクーリアと顔を合わせようとはせず、それでも小さく返事した。

「ふふっ。ありがとうね」

銀狼へともたれ掛かりながら、優しく尾をでる。クーリアから尾を離そうとしないということは、満更でもないようである。

「あらあら。可い子がいるわね」

しばらくクーリアが銀狼をでていると、突然凜としたの聲が聞こえた。

クーリアが聲の元を探すと、森の奧からとてもしいが現れた。その顔立ちは、まるで人(・)間(・)で(・)は(・)な(・)い(・)かのように整っていて、思わずクーリアはのことを見つめてしまった。

「あ、あなたは…?」

しの時間が流れ、やっと疑問の聲を絞り出すことができた。

「わたし?わたしは……その狼の飼い主、とでも言うのかしらね」

それを聞いて、クーリアがバッと立ち上がった。

「す、すいません!勝手に……」

「いいのよー。その子がらせるなんてとっても珍しいんだから」

「そう、なんですか…?」

そう聞き返してからクーリアは、會った時は警戒されていたことを思い出した。

「確かに最初は警戒されてましたね…」

「やっぱりね。でも、どうしてそこまで仲良くなったの?」

「えっと…怪我をしていたのを治したんです」

クーリアがそう言うと、し目を見開いた。

「怪我してた……気づかなかったわ」

どうやら飼い主として気づけなかったことをけなく思ったらしく、目を伏せてしまう。

「わたしが治したからでしょう?」

「それでも気付くものよ……ごめんなさいね」

近づいてきて銀狼の頭をでる。すると銀狼はを鳴らし、気持ちよさそうに目を細めた。それだけで、飼い主として信頼されているということがよく分かる。

「……そう。あの時ね…でも、どうして分かったの?」

「えっと…聲…いや、意思?よく分からないんですけど、助けてって言っているような気がして…」

するとは考え込む仕草をする。

「意識の同調…いや、共鳴かしら…ちょっとこっちに來てくれる?」

「は、はい」

の近くへとクーリアがく。するとはクーリアの頬に手を當て、お互いの額をコツンと當てた。

(なっ!……うん?溫かい……)

最初こそ驚いたものの、ほのかな溫かみをじ、頬を弛めた。

「……これは…人(・)間(・)と(・)し(・)て(・)は(・)、すごいわね。でも、これじゃ………」

額を離すと、またしてもブツブツと考え込み始めてしまった。

「あ、あの……?」

「あぁ、ごめんなさい。うーん…やっぱり親和が高いのかしらね…」

「親和…?」

「ええ。この子とね」

が目線を銀狼へと向ける。

「そう、なんですか?」

クーリアは不思議そうだ。それも當然だろう。実がないのだから。

「そうよ。……うん。そうね、あなたになら託してもいいかしらね」

「なにをです…?」

「ちょっと待ってて」

クーリアの質問には答えず、は森の奧へと消えてしまった。

    人が読んでいる<出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないを望む>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください