《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》47

しばらく呆然としていたクーリアを現実へと呼び戻したのは、サラからの通信だった。

『もしもーし。クー、今大丈夫?』

「…え、あ、うん大、丈夫…」

突然のことでしどろもどろな返事になってしまった。

『どうしたの?』

「なんでもないよ。ちょっと驚いただけ」

すぐさま取り繕う。幸いサラが疑うことは無かった。

「それよりどうしたの?」

『んー?特に用はないんだけど……世間話的な?』

「はぁ…そう。とりあえずそれなら今は無理そうだから、しばらくしたら私からかけ直すよ」

今クーリアがいるのは森のド真ん中だ。ここで悠長に話していたら、日が暮れて危険な目に會いかねない。

『……忘れたりしないわよね?』

「……ソンナコトナイヨ」

クーリアは異常なまでの記憶力を持つが、約束事はすぐに忘れてしまうという不思議質である。それをサラは知っていたため、疑うような言葉をかけたのだった。

案の定クーリアは覚えておくつもりはなく、おもわずカタコトの返事になった。

『……まぁ、別に重要な話ではないからいいのだけど』

「じゃあかけ直さなくていい?」

『……なんでそんなに嬉しそうなのよ』

「ソンナコトナイヨ」

2回目のカタコトである。

『はぁ……じゃあ明日ね』

サラはもう諦めることにした。重要な話ならば、その都度こちらから通信すればいいのだから。

「うん。じゃあね」

クーリアは通信を切る。

「ふぅ…」

「クゥン?」

腕の中にいるリーヴォが不思議そうに首を傾げる。

「なんでもないよ。帰ろっか」

「アウっ!」

ふふふ、と笑みを零しながら、クーリアは持ってきていた鞄を地面から拾い上げ、その中にリーヴォをれた。

……ちなみに持ってきていたパンは、クーリアとが話している間に銀狼が全て食べていた。

「大人しくしててね」

鞄の中にいるリーヴォに話しかけ、クーリアは森を後にした。

『…………』

「ええそうね。わたしらしくないかもね」

『……………?』

「……わたしにも分からない。ただ、あの子をあ(・)の(・)ま(・)ま(・)ほっておけなかった。それだけよ」

『……………』

「ふふっ。それはあなたもでしょう?」

『…っ!………』

「ふふっ。本當に不思議な子ね。……でも、ちょっと調べる必要はありそうだけれどね…」

『…………?』

「ええ。だからしばらく………。こ(・)っ(・)ち(・)は(・)よろしくね」

『………!』

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