《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》53※

クーはわたしの家(屋敷)へ寢かされることとなった。すぐにクーのお母さんやお父さん。兄や妹がくる。全員が泣きそうな顔で、でもクーが無事だと分かって安堵していた。

「クー……」

「お姉ちゃん……」

皆が心配そうにクーの寢顔を覗く。あの子狼はクーのベットの下でうずくまっている。

……そういえばクーの妹に會ったのは初めてね。容姿は兄2人に似ている。とはいえ髪がクーと違うだけで、顔立ちはよく似ていた。そしてクーより、ちょっとだけ長が低いかな。

………そのうちクー、抜かされちゃうんじゃないかしら。まぁ、クーに言ったら泣きそうだから黙っておくけど。

わたしはクーの家族の時間を作るため、クーが寢ている部屋を後にした。

「ありがとうございます…」

去り際にクーのお父さんからそんな言葉をかけられた。

「いえ、わたしは…」

わたしは間に合わず、クーを危険な目にあわせた。謝されるなんておこがましい。もっと早く気付いていれば……。そう思っても所詮はたらればの話だ。悔やんでも時間が戻りはしない。だから、なぜこんなことが起きたのかを調べる必要がある。

「お父様」

「ああ、サラか。いいのか?」

「はい。今は家族の時間ですから」

「そうか……本當に聞くのか?」

「もちろんです。わたしの…親友になにがあったのか。知らない訳にはいきません」

「……分かった」

聞かせたくない。そんな想いがひしひしと伝わる。だけれど、わたしは聞かなきゃいけない。

「まず、あの屋敷からなんだが…なにも出なかった」

「……なにも?」

「そう。なにもだ。あそこで何が行われていたのかという記録や痕跡。さらに……メンティス自の姿もなかった」

メンティスが姿を晦ますのはまだ分かる。けれど、全ての記録や痕跡を抹消することなど不可能だろう。証言はないけれど、おそらくわたしが駆けつける直前までいたはずだろうから。

「ほんとになにも?」

「ああ。不(・)自(・)然(・)な(・)程(・)に(・)な」

不自然なほどに、か……。

「……信じたくはないが、もしかしたら…」

わたしはその先に続く言葉が分かった。

「クーが、そんなことをするとでも?」

思わず怒りがこもった聲がでる。クーは被害者なのだから。そんなことをするはずがない。そもそもクーは気絶していたのだから、そんなことを出來たとも思えない。

「もちろんそんなことはないと分かっている。…とりあえず屋敷を探し続けているが、未だ何か見つかったという報告はない」

「そうですか……」

拐したのはメンティスで間違いない。あの屋敷には彼しかいなかったのだから。でも証拠がない。本人もいない。完全に詰んでいるわね…。

「報告はそれだけだ。……そばにいてあげたらどうだ?」

「……はい」

わたしはお父様に一禮すると、クーが眠る部屋へと早足で向かった。

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