《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》124

「クー……?」

「…魔封弾、あと1発あったよね」

「あるけど…」

「それ、頂戴」

サラが魔封弾を手渡し、クーリアはそのまま魔導銃にけ取った魔封弾を裝填した。

源を、消す」

『……おね、ガい』

ゆっくりとクーリアが霊へと近付く。

『待って! 今(・)そんなことをしたら』

「黙って」

『っ…』

クーリアがリーヴォの発言を強く制止する。

「……いいの。元々、わたしは、もういないから」

「クー…? 何を言って…」

サラが疑問の聲をあげるが、クーリアはその聲には耳を貸さず、ゆっくりと銃口を霊へと向ける。

「これで、貴方がわたしに託(・)し(・)た(・)ことも、やっと終わる」

『………』

「痛くはないはずだよ。……さようなら」

クーリアの震える指が、引き金を引く。乾いた重い炸裂音が薄暗闇の森へ響き渡るとともに、強いが辺りを包み込んだ。

『────────っ!』

「……終わった、の?」

が収まると、霊の姿は消え去っていた。

「…これ、で、全部、元に…」

クーリアがそう呟いたと思えば、突然その場へ倒れ込んだ。

「クー!」

「お姉ちゃん!」

サラ達がクーリアへと駆け寄る。

「げほっ!……」

が…なんで…」

クーリアが吐する。それも、今までよりも濃いをしたを。

「…これで、いいんだよ。わたしは、もういないはずだったんだ、から」

「え…?」

「あの、霊が、助けたって言ったでしょ?…わたしは、ね。産まれる、前に、死んでたんだよ」

「「「っ!?」」」

クーリアが、何故霊がクーリアを助けたのかを靜かに語り出す。

霊は、ボロボロだった」

代償魔法の反は、無論行使者である霊もけていた。

「だから、理を失って、墮ちる前に、わたしに託した」

いつか理を失い墮ちた自分を、殺してもらう為に。

「でも、なんでクーが苦しまなきゃならないの!」

「…それは、わたしが、霊の力だけで生きてたから、だよ」

産まれる前に既に死んでいたはずのクーリアが、何故今まで生きていたのか。それは霊が託した力を生命力に変えていたからだった。

「でも、それはあの霊の、一部だから…」

が消滅した今、クーリアの中にある霊の力もまた、消滅しかけていた。

『…だから、全部ボクが貰うはずだった』

リーヴォの存在理由。それはクーリアから霊の力を引き剝がし、別の生命力を注ぎ込む為だった。

『別の生命力を注ぐには、霊の力が邪魔だった』

だからこそ、急いだ。しかし、事はそう上手く運んではくれなかった。

「サラ」

「…なに?」

「……わたしの、友達でいてくれて、ありがと」

「…っ! …ええそうよ、貴方はわたしの大切な友達。だからお願い……置いて、いかないで……」

サラの瞳から輝く雫がこぼれ落ち、クーリアの服を濡らす。

「リーフ」

「…なぁ、に? お姉ちゃん…」

「不甲斐ない、お姉ちゃんで、ごめんね…」

「そんな事ないっ! お姉ちゃんは、わたしの憧れで、目標で…だから、だからっ!…ずっと、ずっと、傍に、いてよ…」

リーフィアの頬を伝う雫を、クーリアがゆっくりと拭う。

その後力なく垂れ下がろうとするクーリアのその手を、リーフィアが両手でけ止めた。

「ナターシャ、さん」

「…なにかしら」

「2人を、頼みます」

ナターシャが、靜かに頷く。

『主様は、ボクが送るよ』

そう呟くリーヴォの姿は、もう既に消えかかっていた。

「いま、まで…ありがと…」

「嫌…いかないで…」

サラがクーリアのを強く抱きしめる。

そして……リーヴォの姿が消えると同時に、クーリアはその瞳を、靜かに閉じた。

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