《【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。》07
屋上にあるカフェテリアで、アンヌマリーとランチタイム。
アンヌマリーの今日のメニューも味しそう。
角鳥(つのどり)のローストとアボカドのライ麥パンサンドイッチ。ミネストローネ。そして翠(エメラルド)レモンエイド。
私が購したのはホロホロ鳥のクリームシチュー。黒パン。季節野菜のピクルス。そして溫かい珈琲。
家ではろくなものを食べさせてもらえないので、學院生徒なら無料で食べられる食堂、カフェテリアのランチは私の大事なカロリー源だ。
「うん、サンドイッチ味しい」
「クリームシチューも味しいわよ」
「一口換しない?」
「いいわね」
私達がきゃっきゃしていると……。
「リンジー・ハリンソン!」
鼓を破らんばかりの甲高い聲が屋上に響いた。
何……?
聲がした方を見ると、金髪ポニーテールの生徒が、腰に細剣(レイピア)を帯びて仁王立ちしていた。
整った面立ち。そして強気につり上がった目の奧でる、青金石(ラピスラズリ)の瞳。
他の學院生徒の上品な服裝とは異なる、上半はの隆起に沿ったシルバーメイル姿。赤いミニスカート。白いハイソックスに、赤く染められた編み上げのロングブーツ。
彼は鋭い視線を私に向けていた……。
見知った顔だった。
「あ、あなたはビクトリア姫……」
ビクトリア・デ・レジュッシュ。
アンドルー王子の一つ下の妹。つまり、この國の王様……ということになる。
アンドルー王子と婚約者だった頃、何度か會っているし、學年は違うけれど同じ學院の生徒。廊下ですれ違うこと位はあった。
しかし、ビクトリアの『無能令嬢』の私へのあたりは強かった。
私が挨拶しても、學院の廊下ですれ違っても、無視が當たり前。
兄の婚約者への敬意や禮儀正しさはゼロだった。
『無能令嬢』の私がよほど気にらなかったのだろう。
正直とても怖くて苦手だったんだけれど……。
「そう、私はビクトリア・デ・レジュッシュ。
レジュッシュ王國第一王子アンドルーが妹、人呼んで姫騎士ビクトリア!」
姫騎士。
そう。人呼んで、『姫騎士ビクトリア』だそうである。
姫騎士という呼稱は、彼が自稱しているだけなのだが、ビクトリア曰く、彼はレジュッシュ王國の姫騎士だそうである。
魔法王國に生まれながら、剣の腕を磨き、剣と魔法を組み合わせた技を駆使する異の姫君。學院でも『魔法戦士』向けの特別授業を組んでもらっており、あまり一般生徒と関わっていないと聞いていたけれど……。
「リンジー・ハリンソン!今日、私の兄アンドルーを人前で侮辱したそうね!
婚約破棄への仕返しかしら?
王族への侮辱は、私への侮辱!」
演説のような聲の高らかさで、ビクトリアは腰に腕をあててそっくり返った。
「私は貴に正式に決闘を申し込む!
々能力に覚醒したからといって調子に乗った事を後悔させてあげるわ、『無能令嬢』リンジー!」
彼は白い手袋をいで私に投げつけてきた。
私はにあたって落ちたシルクの手袋を拾って困顔。
アンヌマリーも呆然としている。
「リンジー、どうするの?」
「どうって……やるしかなさそうね」
私はため息を付いて立ち上がった。
あの兄にして、あの妹。
人前で侮辱?私がアンドルー王子から再婚約を申し込まれて拒否したこと?
最初に私に婚約破棄をしたのはアンドルー王子なんだけれどね。それでも私が悪いというの?
ちょっと、痛い目を見て反省してもらいましょうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
レジュッシュ國第一王ビクトリアと、元『無能令嬢』の正式な決闘。
というわけで、學園の中央ホールが決闘の場になった。
用意周到に學院に正式に決闘屆けを出していたビクトリア様。
勝手な生徒同士の決闘はご法度だからね。
立ち會い人として、教員が複數名その場を仕切っていた。
その中には、一限の授業で足がガクガクになっていたハゲ教員もいる。
ものすごく不安そうな顔で私とビクトリアを互に見て、泣きそうな顔をしている。
まあ、そうでしょうね。
私が覚醒した後の様子を見ているんだもの。萬が一正式な決闘で姫君であるビクトリアが私ので砕け散ったら、大変な大事件になるんだから。
見高い大勢の生徒たちがランチを済ませ、見學にやってきている。
両手をもみ絞り心配そうなアンヌマリー。
そして、腕を組んで不敵に笑うアンドルー王子もいる。
「ビクトリア、手加減をしてやれよ。リンジーは能力に覚醒したばかりなんだ。お前が本気を出したら命を奪ってしまうぞ」
アンドルー王子が何様のつもりなのか、そんな言葉を妹にかけている。
「お兄様、ご心配なく。命まではとるつもりはございませんわ。
お兄様を侮辱するとどうなるか、に教えてあげるまで。
『虛(ゼロ)級』といっても、今日昨日魔法が使えるようになった素人。
剣と魔法を組み合わせた魔法剣士の腕を磨いてきた私の敵ではございません」
瀟灑な細工の施された銀の細剣(レイピア)を抜くビクトリア姫。
そして油斷なく私に刃先を向けた。
「リンジー・ハリンソン。準備は良い!?」
「ええ。準備は出來ています」
というか、準備なんて必要ないんだけれどね。
「王立魔法學院の立ち會い!
ビクトリア・デ・レジュッシュと、リンジー・ハリンソンの正式な決闘を開始する!
決して命は奪わないこと!
どちらかが降參というか、床に倒れ起き上がれなく生ったら試合は終了とする。
よいな……では、始め!」
ハゲ教員の震える聲で決闘が開始した。
さて、どうしてくれよう?
(続く)
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