《【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。》09
帰宅すると、笑顔の両親が待ち構えていた。
「リンジー、お前、ついに式の発に功したんだってな!
しかも中級クラスのモンスターを一撃で殲滅させたんだって?」
「さすが私の娘だわ、リンジー!
本當に誇らしいわぁ!
校長があなたを最優秀特待生にしてくれるそうよ!」
ああ、この流れか。
自分の親の笑顔が、こんなに醜く見える日が來るなんて。
二人はああだこうだいいながら、私の肩を抱いて歩き、私を強引にリビングのソファに座らせる。
私がこれまで何年も座らせてもらえなかった豪華なソファ。
らかな座面に沈み込む……ああ、このソファは、こんな座り心地だったんだなあ。
「王子との婚約破棄だが、また再婚約となりそうだぞ。
先程王室から遣いが來てな。
明日朝一番で王宮の謁見の間に來いとのことだ」
「きっと婚約破棄を取り消して下さるのだわ!良かったわねえ、リンジー!」
うっきうきの両親の言葉に、私はため息を一つ。
「多分、それはありません。
今日、アンドルー王子から再婚約してもいい、と、上から目線で言われたので、はっきりお斷りした所です」
「は?はい?」
「今あなたなんて言ったの?」
「だから、斷ったんです。再婚約の申し出を。
王宮に呼び出されたのだとしたら、別件か、なにかの罰をけるのかも知れませんね。
王子からの再婚約の提案を斷った罪、とかで。
知らないですけど」
私の言葉に、みるみる両親の顔が曇っていく。
「さらに今日、アンドルー王子の妹のビクトリア姫に決闘を申し込まれ、勝ちました。ビクトリア姫からはお姉さまと呼ばれるようになりました」
「は?はあ?決闘を……けたのか?しかも王族に……勝ったのか?
一お前は何をやっているのだ!」
お父様は眉間にシワを寄せて話を聴き、私の言葉が終わる前には、いつも通り喚き散らしはじめていた。
「何を言っているんだお前は?
何故斷った!?何故決闘をけたのだ!
そ、それに再婚約の提案を斷った?何故そんなありがたい申し出を斷ったのだ!」
「いや、もともと婚約破棄をしてきたのはアンドルー王子ですし。
その後すぐ、別のと婚約をしておられましたよ。
そしてまた、その方との婚約も破棄。
そんないい加減な方と婚約したくありません。
私はもともとアンドルー王子が好きではありません。
私を『無能令嬢』と読んでげていた男ですよ。
結婚して幸せになれるとは思えません」
「王子との結婚以外に幸せがあると思っているの?
リンジー!なんて親不孝な、なんて恥知らずな!」
「お母様、あまり喚かないで下さる?
耳に障ります……『靜寂(サイレンス)』」
ヒステリックにわめきたてていた母のに、私は視線と呪言だけで魔法を発させた。
お母様は突如聲を失い、を抑えて、金魚のように口をパクパク。
聲を出せなくする魔法だ。
すぐ解けるように調整はしたけれどね。
「リンジー!お前は……!一何をした?
母親に『靜寂(サイレンス)』の魔法をかけたのか?
なんということだ……お前をそんな風に育てた覚えはないぞ!
我がハリンソン家の一人娘としての自覚を持て!」
私はどう育てられたんだっけ?
無能とわかって以來、ほうっておかれたんじゃなかったかしら。
そんな事を考えていると、廊下の方から足音が。
騒ぎを聞きつけたのか、リビングにイグニス兄様が飛び込んできた。
リビングの慘狀を目にして、イグニス兄様は鬼のような形相となり、私を睨みつけてきた。
「お前、母親になんてことを……!
魔法が発できるようになったからといって調子に乗るなよ」
そういって私に摑みかかってくる……。
きが遅い。
いや、十分速いんだろうけれど、今の私には遅く見える。
私はひらりとイグニス兄様の腕をかわし、風の魔法で彼を壁まで吹き飛ばした。
「ぐあっ!ああ……」
壁に叩きつけられて、きながら床に崩れ落ちるイグニス兄様。
「あらごめんなさい。
イグニス兄様は、風のエレメントの使い手でしょう?
上手く相殺して著地なさると思ったのだけれど、たいしたことなかったですね。
私を無能な妹、無能な妹とからかっておられましたのに。
お兄様の風の魔法こそ、たいしたことなかったのですね。
そんな腕で、本當に王宮にお勤め出來ていて?」
両親、床でく兄、心配して様子を見に來た使用人數名。
誰もが私の豹変に驚き、口をあんぐり。
何も言葉を口にせず、棒立ちになっていた。
「お父様、お母様。安心して。
お母様の『靜寂(サイレンス)』はあと數分で解けることでしょう。
イグニス兄様も怪我はなかったはず。
もしあれば私が魔法で癒やして差し上げてよ。
あ、そうそう、私の世話をしていたメイドと使用人を全員解雇して下さい。
全員サボっています。
冷えた食事にはもううんざりと臺所にも伝えて。異論はありますか?」
「い、いやないよ……リンジー。
それより、どうだ、今日は食堂で夕食を一緒にとらないか……今後のことをな、話し合うのはどうかと……」
「いえ。結構。私はお父様とお母様が與えてくださった薄暗い屋裏部屋が気にっておりますから。
夕食はいつも通り一人でとります。
溫かい食事、期待しておりますわ」
私はスカートの裾をつまんで禮をすると、堂々とリビングを出て、屋裏部屋へと向かった。
通りすがる使用人は皆壁に張り付き、これでもかと云うほどきれいな姿勢で私に頭を垂れている。
これまでは、私をまるで幽霊かなにかのように、何も反応しないですれ違っていたくせにね。
私が本當の力を発揮すると、皆怯えて豹変してしまった。
ほんと馬鹿みたい。
屋裏部屋の扉を空けると……そこには先客がいた。
海辺の祠で會った男だ。
彼は當たり前のように窓臺に腰掛け、足を組み、面白そうに私を眺めている。
「私の部屋で何をしているの?」
(続く)
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