《私たち、殿下との婚約をお斷りさせていただきます!というかそもそも婚約は立していません! ~二人の令嬢から捨てられた王子の斷罪劇》2
「ハリル! お黙りなさい」
その聲に、ハリルはびくりと大きく肩を震わせ振り返った。
「は、母上! これは一どういうことなのですっ。私の婚約屆が理されていないなどそんなことがあるわけ……!」
王子の口を、側妃であるハリルの母アルビアが扇でびしりと制する。そしてじろり、と目の前に立つフローラとミルドレッドに視線を向けた。その視線は針のような鋭さで二人を貫く。
「あなたたち、それが我が國の側妃である私と次期國王に対する態度? たかが伯爵風の小娘がなんと無禮なっ! 控えなさいっ」
キンキンとした耳障りな甲高い怒聲に、フローラとミルドレッドは無言ですっと片足を引き優雅に禮の姿勢をとった。
仮にも目の前にいるのは、この國の側妃なのだ。そしてこの國に他に王位継承の可能がある者がいない今、ハリルが次期國王と目されていることも確かだった。
なくとも、今はまだ――。
「これは何の騒ぎです。まさか陛下、あなたが裏で何か……」
アルビアは険しい表でつかつかと國王のもとに歩み寄ると、玉座に座ったまま冷靜な表を浮かべ事のり行きを見つめていた夫を鋭く見つめた。
「……まさかあなたは、この期に及んでまだあの子を次期國王にすえようなどと……? 國を背負う責務から簡単に逃げ出すようなあんなけない子に、次期國王が務まるものですか! この國を背負うのは私の息子、ハリル以外にはあり得ませんわっ。一何度言えば分かるのです!」
その鬼のような形相にも、國王は顔をまったく変えることなくただ靜かに見つめ返す。
「それを決めるのは、國王である私だ。そなたにその権利はない。それにリカルドがこの國を出たそもそもの原因は、そなたが作ったのではなかったか? 私が何も知らぬとでも思っていたのか、アルビア」
國王の聲は低く淡々としていたが、耳にした皆の腹の底が一瞬にして凍り付くような冷たさと、それとは真逆の怒りの熱を帯びていた。
アルビアはその靜かな迫力に一瞬ひるんだようにきを止めたが、手にしていた扇をぎり、と握りしめ顔を上げると國王をにらみつけた。
「一何をおっしゃっているのか分かりませんわ。あの子は國を擔う重責から逃れようと、無様にもこの國を捨てて自ら逃げ出したのではありませんか。私もハリルも何もしておりませんわ。ただあの子が弱く、次期國王になるなどなかっただけのことでしょう」
吐き捨てるように言い切り、鼻で笑った。
アルビアの言うところのあんな子というのは、すでに儚くなった前王妃の殘した息子リカルドのことである。すでに二十を超える年であり、現在はこの國を遠く離れこの國の土を二度と踏むことはないだろうと目されていた。本來であれば、リカルドが王位継承権第一位であるにもかかわらず。
そのため、この國の次代を擔うのは他にないと、ハリルが事実上の次期王位継承者として位置づけられていたのである。
となれば、次期國王の母である側妃アルビアの権力は絶大なものとなる。ハリルとアルビアはそれを振りかざし、この國を好きなように牛耳ろうと一部の貴族たちを抱き込んで我が顔で振舞っていた。
しかも最近では隣國の有力貴族と裏でつながり、ある意味將來的に國を売り渡しかねないやり方で私腹をやす計畫まで立てていたのである。
が、そんな企みを國王が見逃すはずもなかった。
そして今日がまさに、その斷罪の日だった。
「アルビア、ハリル。そなたたちに會わせたい者がいる」
國王がすっと小さく手を上げ合図すると、一人の男が會場に姿を現した。
引き締まった筋質なすらりとした軀を王族のみに許されたの正裝にを包んだその男は、艷やかな黒髪と深碧の目をしていた。その堂々とした立ち居振る舞いと姿とは、まるで若い獅子のようなしなやかさと豪膽さをじさせた。
その姿を目にした聴衆から、大きなどよめきが起こった。
男はゆったりとした余裕のある仕草で場をぐるりと見渡すと、一瞬フローラに視線を止めその目元を優しげにやわらげた。そしてフローラもまた、その視線を微笑みを持ってけ止めしばし二人は見つめ合う。
それから男は顔に余裕のある笑みを浮かべつつもどこか冷たさを滲ませて、アルビアに視線を向けた。
「隨分とお久しぶりですね。お変わりなさそうで何よりです。いや、し以前よりふっくら満になられましたか? さぞ良い暮らしぶりをなさっておいでのようだ。……そして」
次にハリルへとその視線を移す。
「お前も相変わらず、といっていいのか。背はびたようだが剣の鍛錬は……あまり進んでいないようだな」
ハリルのゆるんだ腹と筋など微塵もついてなさそうな細い腕とに目をやり、男は口元に小さく笑いを浮かべた。ハリルの表に、一瞬にして朱が走る。
「お……お前がなぜここにっ、リカルドッ! もうこの國には二度と戻らないのではなかったのかっ」
口から唾を飛ばしそうんだハリルを、リカルドと呼ばれたその男は眉をひそめて見やった。
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