《(本編完結・番外編更新中です) 私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!》1年後 (完結)
読んでくださっている方、ありがとうございます!
1年後。
私の庭に、オレンジの花びらに黒い線がうごめく花が咲きほこった。
「うわあ! すごいね! 素晴らしいよねっ!!」
興気味に言う私のそばには、首をかしげるアルがいる。
「素晴らしい…のか? まあ、數が多い分、不気味さは圧巻だ…。しかし、ライラは、あの時の花をよく育てようと思ったな…」
そう、このオレンジに黒い線がっているこの花は、パトリックとアンナさんの黒い煙をすい取った時の種から咲いた花だ。
こぼれ落ちた種を、全部回収して保管してくれていたアル。
私が喜んで植えると言った時、アルは驚いた顔をしてたっけ…。
「誰からの邪気であっても、自分の手のひらからでてきた種なんだよ? やっぱり、植えたいよ!」
「ライラは死にかけたんだぞ?!」
と、アルが納得のいかない様子で言った。
でも、どんなことが起ころうと、やっぱり、どんな花に育つのか興味のほうが勝ってしまう。
パトリックとアンナさんのあの出來事から取れた種だが、數が多かったので、裏庭を全て私の庭にしてもらって、ひとつ殘らず植えた。
そして、1年かかって、今日、一斉に花が咲いたのだ。
そう言えば、昨日、やっと魔力治療院から退院したパトリックから謝罪の手紙が屆いたのも偶然とは思えない。
パトリックは、お兄様のルドルフ様の監視の元、厳しいと評判の他國の學園に留學するそうだ。
手紙には、「いつかライラに直接會って謝りたい。そうなれる人間に生まれ変わりたい」と書いてあった。
が、正直、私としては、もうパトリックに謝ってもらいたいとは思ってない。
パトリックへの複雑な気持ちは、彼からすい取って生れでた種を植え、世話をしている間に、とっくに、消え失せたから。
殺されかけたけれど、アンナさんに対しても同じだ。
私の近な人たちは、この1年、私に二人のことを耳にれないよう気を使ってくれていた。
なので、アンナさんのことも、私がしつこく聞いて、やっと、お父様が言葉を濁しながら教えてくれた。
それによると、アンナさんは、未だ不安定な神狀態のままで、拘束されて治療をけているらしい。
自分の魔力の限界を超えて魅了をしたため、魔力のコントロールがきかない狀態だったアンナさん。
そんな狀態で魅了の対象者が離れてしまったことで、魔力が逆流して自分に魅了をかけ続けている狀態になっているそう。そのため、他者が認識できなくなるという深刻な狀況に陥っているみたい。
お父様は、裁きがけられないことを悔しそうにしていたけれど、私としたら、その狀態がまさに罰せられているように思える。
「長かったな…」
アルがつぶやいた。
「ほんとだね。一年もかかったもんね。アルも気持ち悪そうにしながらも、よく手伝ってくれたよね。ここの花たちに著がわいてきた?」
「…いや、まったく。…でも、花として咲いて喜んでいるような気がするな」
「やっぱり?! アルもそう思う? 私も毎回思うんだよね。…それにしても、ちょうど、アルがいる時に咲いてくれて良かった」
「花も気を使ったんだろ」
「そりゃあ、1年も世話してもらったんだもん。花たちも謝してるよ」
アルは、學園が休みの日には、王都から辺境まで通って、この花たちの世話を手伝ってくれた。
私の変わった能力は限られた人にしか言ってないから、庭が広くなっても私が一人で世話をしている。
だから、アルが手伝ってくれて、本當に助かった。
「いや…そうじゃなくて、この花が咲いたら、ライラに言おうと思ってたことがあって…」
そう言うと、アルは手に持っていたバケツをおろし、私の方にむきなおった。
「俺はライラが好きだ。俺と結婚してくれ」
「え? …えええええっ?!」
「これからもライラと一緒にいたい。どんな不気味な花でも、育てるのを手伝う。どうだ?」
「…どうだって言われても。…アルは王子でしょ!」
「辺境伯に婿りできるよう、とっくに外堀は埋めている。俺が、1年も、ただただ、のんきにここへ通ってたと思うか?」
そう言うと、切れ長の目を細めて、意味ありげに微笑んだ。
「だから、他のことは何も気にするな。すべてはライラの気持ち次第だ。これから先も俺と一緒にいてくれないか?」
アルの紫の瞳が、まっすぐに私を見つめてきた。
突然の告白に驚いたけれど、すぐに心は決まった。
私は、いつの間にか、アルが來てくれる日を心待ちにするようになっていたから。
「…アルといると楽しい。アルと一緒にいたい」
そう答えたとたん、アルにやさしく抱きしめられた。
その時、いっせいにオレンジの花がちりはじめ、ちった先から、の粒にかわっていく。
そして、心地のよい風にのって、の粒はの帯となり、空へとのぼっていった。
土に戻った自分の庭を見ながら、アルに聲をかける。
「これからもどんどん不気味な種を植えていくけど、手伝ってくれる?」
「もちろんだ! 任せとけ」
「じゃあ、手始めに、王都でしか手にらないような黒い煙をつけてきてねー。珍しい種ができたらいいなあ!」
「おい! ライラは花の種さえもらえればいいのか?!」
「そう、私は、花の種さえもらえれば満足なんだよ…。なーんて、そんなことを思ってた時もあったな」
でも、今は、アルと一緒にいられたら、それだけで大満足だ。
(完)
これにて、完結となります。
読みづらい點も多かったことと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございました!
そして、ブックマークしてくださった方、評価、いいねをくださった方、勵みにさせていただきました。ありがとうございました!
本編は完結しますが、ライラ視點では語れなかったことなど、また改めて書ければと思っております。
夜明けを何度でもきみと 〜整形外科醫の甘やかな情愛〜
菜胡(なこ)は、整形外科外來のナース。 ある日職場でもある整形外科外來室に見知らぬ男性がおり、追い払おうとした時、転びそうになって男性に助けられる。 お禮を言おうとしたら、抱きしめられて、いきなりの口づけが落ちてきた。 ファーストキスを奪われた上、この男性は新しく赴任してきた整形外科醫だと知って驚く。 初対面でいきなりキスをされたのに、その日から男性のことが気になり始めて……。 過去の戀愛に良い思い出のない二人が、最悪の出會いを果たした。運命の糸が緩やかに絡んでいく。
8 166婚約破棄されたら高嶺の皇子様に囲い込まれています!?
男爵令嬢シャリーアンナは、婚約者の侯爵令息に長い間虐げられていた。 「格下だから仕方ない」と耐え続けていたが、ついには殺されかけ、さすがに一言もの申すことにする。 だが婚約者は格下相手に注意されたことで逆ギレし、婚約破棄を言い放ってくる。 するとなぜか、その場に居合わせた隣國の皇子殿下がシャリーアンナに急接近し、自分の世話係に任命してしまう。 (きっとこれは何かの間違いね。わたくしみたいな凡人、すぐに飽きられるだろうし……) しかし、抑圧的な環境から解放されたシャリーアンナは、本來の能力を発揮し始める。 すると皇子殿下には、ますます興味を持たれてしまい……!? 地味で平凡な令嬢(※ただし秘密あり)が、隣國からやってきた皇子殿下に才能と魅力を見抜かれて幸せになる話。
8 172男女比1:599
頭が悪く進路がなかなか決まらない中學3年生の小坂 光。最後の最後に滑り込みで入學できた高校は今年度から男女共學になる元女子高。不安になりながら迎えた入學式當日。なんと今年度の男子合格者は光1人だった! 笑えて感動するちょっとありえない戀愛ストーリー。
8 57非リア充の俺がまともに戀なんてできるはずがないと思った
高2の吉井成彌 (なるみ)は、コミ障だ。 オタクで、休日になると家からほぼ出ない。 そんななるみは、早川千遙に告白される。 しかし……。
8 78擔任がやたらくっついてくるんだが……
冴えない男子高校生と擔任教師のほんわかラブコメです。 『小説家になろう』等の別サイトでも掲載しています。
8 103【連載版】落ちこぼれ令嬢は、公爵閣下からの溺愛に気付かない〜婚約者に指名されたのは才色兼備の姉ではなく、私でした〜
アイルノーツ侯爵家の落ちこぼれ。 才色兼備の姉と異なり、平凡な才能しか持ち得なかったノアは、屋敷の內外でそう呼ばれていた。だが、彼女には唯一とも言える特別な能力があり、それ故に屋敷の中で孤立していても何とか逞しく生きていた。 そんなノアはある日、父からの命で姉と共にエスターク公爵家が主催するパーティーに參加する事となる。 自分は姉の引き立て役として同行させられるのだと理解しながらも斷れる筈もなく渋々ノアは參加する事に。 最初から最後まで出來る限り目立たないように過ごそうとするノアであったが、パーティーの最中に彼女の特別な能力が一人の男性に露見してしまう事となってしまう。 これは、姉の引き立て役でしかなかった落ちこぼれのノアが、紆余曲折あって公爵閣下の婚約者にと指名され、時に溺愛をされつつ幸せになる物語。
8 104