《した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》9 魔翔
「う……ん。みんなは、元気?」
「元気だよ。弘人も薫も。町子と類(るい)が死んで、一時はみんな大分落ち込んでたけど」
芙(ふみ)は「えっ」と顔を起こす。
「類はやっぱり死んだの?」
「やっぱり、って。知らなかったのかい? っていうか、一緒だったんじゃないのか」
「一緒だったけど……彼の最後を見た訳じゃなかったから」
もしかしたら生きているかもしれないと期待してしまったのに。
「確かに……そうだね。二人のが発見された場所はし離れてたんだ。町子は當日に見つかったんだけど、類はダムのもっと奧に居たから三日後まで気付かれなかったんだよ」
「そんな」
傷を負った姿は覚えている。そので移して、類は大魔に會ったのだろうか。
「町子の事はニュースになったけど、類の死は両親の希で報道されなかったしね。私たち生き殘り組はちゃんとした真相を知らないんだ。あの頃の類は「魔法使いを辭めたい」とか言って、しおかしかっただろう? 何があったんだい?」
「類は力を放棄するために大魔を殺すんだって祠を目指していたの」
ダムへ行く前日。大魔を倒すと言った彼を説得すると、逆に一緒に行こうとわれた。
――「力なんて、持ってること自が災いなんだ」
彼の言葉に、町子は同意する事ができなかった。自分の力を誇らしく思っていたから。だから、はっきりといを斷った。でも彼が気になって、翌日後をつけたのだ。
「本當かい? でも、大魔を倒すと――」
大魔を殺すと、この世界に災いが起きると言う。力を與えられた時、最初にその事を教えられた。
だから、それはあってはならないことだと意識していたのに、あの日類は町子の説得も空しく大魔を殺す為にダムを目指した。
彼を止めようとして、戦いになった。そして――。
「類が本気で攻撃してきて、それで。殺しあうつもりなんてなかったのに……」
ボタボタと涙がカップに落ちる。咲は水玉のタオルを芙に差し出した。
「力を放棄したいとか、大魔を殺すとか、アイツは何をしたかったのかな。どこで仕れた報か知らないけど、大魔を殺そうだなんて。私は考えたこともなかったけど、災いって何が起きるんだろうね。それに、私達の前の五人は、何で力を放棄したんだろう」
大魔が最初に力を與えたと言う五人の魔法使い。彼らが放棄した力を町子たちがけ継いだのだ。
「大魔に會って話ができればいいんだけど。いまだに會えてないんだよね」
「ずっと……なの?」
「あぁ。町子たちが死んでも現れなかったし。弘人が何度かダムへ行って、祠(ほこら)らしき場所には行けたらしいんだけど、毎回空(から)なんだってさ」
「そうなんだ……じゃあ、それこそ町子も類も無駄死にだったね」
「過去を悔やんだって仕方ないよ。町子が止めてくれなかったら、本當に災いが起きたかもしれないし。この十六年は、魔翔は出るけど平和だった。実際力があっても、何かに活用できるものじゃないからね。でも、力があるってことは自信に繋がる。心の強さにね」
それはよく分かる。
だから、いまだに類や前の五人が力を放棄しようとした理由が分からない。芙に生まれ変わって、小さい頃は良く魔法を出そうと、失ってしまった杖の変わりにその辺にある棒を振っていたものだ。
今でも力が蘇ればと思ってしまう。
「類も、生まれ変わってるかな?」
「もしかしたら、そうかもしれない。芙と同じように力がないなら、彼のみがしだけ……葉ったことになるのかな」
「うん。でも――魔法を嫌がってたから、記憶があっても名乗り出てはくれないのかな」
「そうだねぇ。元からいヤツだったしね」
リーダー格で明るい弘人とは違い、類はみんなの脇で相槌を打っているような大人しい男の子だった。だから、突然「力を放棄したい」と言い出した時には皆が驚いた。
「でも、それならそれで自由に生きていてくれたら、嬉しいな」
「案外、の子に生まれ変わってたりしてね」
ニヤリと笑った咲の表がサッとった。
頭上を睨む視線を追って、芙は「まさか」と聲をらす。
魔翔(ましょう)は気配が先に來る。芙にそれをじることはできないが、咲は「うん」と立ち上がり、ズボンのポケットから見覚えのある木の杖を取り出した。
「じない? あそこだよ」
咲が目で示すのは、調理や食の並ぶカウンターの向こうだ。
「ごめん、わからない」
何もじ取る事はできなかったが、芙も目を見張りながら立ち上がり、警戒する咲の後ろに避難する。
「もし、ここで私だけがあっちに行ったら、心配しないで待ってて。で、一緒にり込んじゃったら、やられないように」
「う、うん」と答えて構える。魔翔は魔法使いのよりも、力そのものを餌とする。だから、力のない芙の前には一度も現れた事がなかった。
地の魔法使いである咲は別の次元を作り出し、そこへ魔翔をって戦う事ができた。異次元にり込めるのは、魔法使いと魔翔のみだ。だから多分、ここに一人殘されてしまうだろうと予測するが、芙はその聲を耳にしてしまう。
キーン、と。
空気を切り裂く耳障りな高音に、両手で耳を塞いだ。
魔翔の放つ、獨特の聲。
「聞こえるのかい? じゃあ、もしかして――」
言い掛けて、ボンと含みのある重い空気音が弾けた。カウンターの奧へとばした右手と反対、橫にびた咲の左腕が後ろの芙を護ろうとする。
「お出ましだよ」
頭ほどの高さで現れた魔翔は、アクロバットでも決めるように、くるりと宙返りして床に下りた。その姿が、芙の目にはっきりと見えた。
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